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事故から学ぶ

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事故から学ぶ


(2013年3月以降はMedical newsに移動して続きます。こちらをご覧ください。 )


インプラント事故で有罪 「医療水準への対応怠る」 歯科医師に東京地裁 13.3.5

(共同通信社 2013.3.5)

 東京都中央区の歯科医院で2007年、インプラント手術中に女性=当時(70)=の動脈を傷つけ死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた歯科医師飯野久之(いいの・ひさし)被告(68)に東京地裁は4日、「危険性の高い手術をしながら、医療水準に対応する努力を怠った」として禁錮1年6月、執行猶予3年(求刑禁錮2年)の判決を言い渡した。

 インプラント手術では、術後に痛みや出血などを訴えるトラブルが多発。民事訴訟に発展する事例は多いが、刑事事件は初めてとみられる。被告側は控訴する方針。

 動脈を傷つける予見可能性があったかが主な争点となり、弁護側は「歯科医師の間で当時、損傷の可能性は知識として共有されていなかった」と主張していた。

 吉村典晃(よしむら・のりあき)裁判長は、専門家の証言や文献の記述などから「口の底部の血管は人により多様な形状があり、底部を傷つけると出血などの事故につながる危険性は以前から指摘されていた」と判断。

 下顎の骨に意図的に穴を開ける被告のやり方について「安全性や有用性に問題があると言われていたのに、血管損傷の危険性はないと軽信した」と過失責任を認めた。

 一方、遺族との間で和解が成立したことや、これまで長年診療を続けてきた事情を考慮し、刑の執行を猶予した。

 判決によると、被告は07年5月22日、女性の下顎の骨を削った際、誤って動脈を傷つけて出血させ、血腫が原因の窒息による低酸素脳症などで翌日に死亡させた。

※インプラント手術

 穴を開けた顎の骨に支えとなる人工の歯根を埋め込み、上部に人工の歯を取り付ける。欧州で開発された。費用を全額自己負担する自由診療だが、隣の歯を削って橋を架けるように人工の歯を装着するブリッジと違い、健康な歯を傷つけずに済む。歯科医師の技術水準には差があると指摘されており、治療のガイドライン作成を求める声もある。


輸液ポンプの入力間違いによる薬剤過剰投与で注意喚起--医療機能評価機構 13.2.28

(薬事ニュース 2013.2.28)

 日本医療機能評価機構は2月15日、医療安全情報№75を発表。輸液ポンプ等の流量と予定量の入力間違いによる薬剤過剰投与事例が3件報告されたとして注意喚起した。このうちの1事例では、高カロリー輸液を更新した際、流量を入力するところを予定量を入力。輸液ポンプは医療事故防止対策適合品マークが付いていない機種で、流量と予定量の設定を同じスイッチで切り替えて入力する構造だった。1時間後、患者の呼吸状態が悪化し、高カロリー輸液が全量投与されているのを発見。確認すると輸液ポンプの流量設定が30mL/hのところ900mL/hとなっていた。患者にはけいれん発作、呼吸停止があり、血糖値は976㎎/dLだった。


チューブ切断事故調査報告 「危険予知、不十分」 死亡と因果関係否定 /兵庫・宝塚 13.2.28

(毎日新聞社 2013.2.28)
 宝塚市立病院で昨年8月、50代の女性患者の人工呼吸器のチューブの一部を看護師が誤って切断した事故で、同病院は27日、医療事故調査報告書を発表した。事故の背景として、看護師に経験がなく、フォロー体制も不十分だったことを挙げた。

 女性は事故の12日後に死亡した。同病院は昨年10月、医療事故調査委員会(委員長、杉野達也・県立西宮病院副院長)を設置。同病院として初めて外部の委員を選んだ。報告書は昨年12月にまとめられ、女性の遺族への説明を終えたため、公表した。

 報告書は、チューブを固定するテープを手で切るべきだったのにはさみを使用したことが事故の原因だったとし、「指導・教育が明確に行われず、はさみ使用による危険予知が十分できなかった」と指摘。気道を管理する専門家が応援に駆けつける体制の構築を提言した。同病院は既に看護手順を改訂するなどの対策を取っている。

 同病院は「指摘を真摯(しんし)に受け止め、再発防止に向けて懸命に取り組む」としている。一方で「当時患者は救命が不可能な状況にあり、事故が患者の生命予後に影響を与えたとは考えていない」と事故と死亡の因果関係を否定した。

「リレンザ」で3人がショック、1人死亡 13.2.27

(読売新聞 2013.2.27)

 抗インフルエンザ薬の一つ「リレンザ」を2009-12年に使った患者3人がアレルギー性ショックを起こし、このうち1人が死亡したと、厚生労働省が27日発表した。

 薬の添付文書の副作用欄に「ショック」を書き加え、患者を十分に観察するよう医師に求めた。

 厚労省によると、死亡したのは30歳代の女性。12年、家族がインフルエンザに感染したため、医療機関で予防のために吸入したが、数分後に呼吸困難となり、間もなく死亡した。気管支ぜんそくの発症歴があり、当日は発熱や感染性胃腸炎の症状があった。

 09年には、インフルエンザと診断された10歳代の女性が、リレンザを吸入した6時間半後、一時的に意識を失った。もう1人は10歳代の男性で、同年、一時的に呼吸困難となった。


インプラント治療に過失 660万円賠償命じる 13.2.25

(共同通信社  2013.2.25)

 愛知県豊橋市の「関歯科クリニック」(解散)でインプラント(人口歯根)治療後に後遺症に悩まされたとして、患者4人が院長らに計約3600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は22日、院長の過失を認め、計約660万円の支払いを命じた。

 堀内照美(ほりうち・てるみ)裁判長は判決理由で「手術を行う前に、CT撮影などで十分な検査をするべきだったのにしていなかった。患者の神経を損傷させるなどした」と過失を認定した。

 判決によると、愛知県内の30~70代の男女4人は2007~10年、クリニックでインプラント治療を受けたが、知覚のまひやしびれが残った。

 クリニックをめぐっては、10年に週刊誌や新聞などでインプラントの使い回しをした疑いが報じられ、11年に解散した。


医療ミスで腕切断と提訴 青森の女児、県に賠償請求 13.2.13

(共同通信社 2013.2.13)

 青森市の女児(5)が右腕を切断することになったのは青森県立中央病院(同市)の医療ミスのためとして、女児と両親が同病院を管理する青森県に約9400万円の損害賠償を求めて、青森地裁に提訴したことが12日、分かった。提訴は1月11日付。

 訴状によると、2008年1月に未熟児として生まれた女児は、中央病院の新生児特定集中治療室に入院していた同2月、右腕にカテーテルを挿入する処置を受けた際、誤って動脈を傷つけられたのが原因で動脈閉塞(へいそく)を発症。その後の処置も不十分で右腕が壊死(えし)し、切断されたとしている。

 病院側は動脈閉塞発症後の対応が不十分だったと認め、約4800万円の賠償を提示したが、女児側と折り合わなかったという。中央病院は「訴状をよく確認し、対応を検討したい」としている。


乳房除去手術で女性死亡 性同一性障害の診療所 13.2.12

(共同通信社 2013.2.12)

 東京・新宿の歌舞伎町で性同一性障害の治療をしていた診療所「湊川クリニック」=廃止=で昨年5月、乳房の除去手術を受けた20代の女性が死亡していたことが8日、捜査関係者への取材で分かった。

 警視庁捜査1課は業務上過失致死の疑いで、執刀医の元院長(36)らを事情聴取し、女性が死亡した経緯や手術ミスがなかったか調べている。

 捜査関係者によると、手術は昨年5月30日に行われ、院長以外、看護師などの医療資格を持っている人はいなかった。女性は手術中に意識不明となって病院に救急搬送され、同日死亡が確認された。司法解剖の結果、死因は不詳とされた。

 診療所は内科や外科、皮膚科、精神科などの診療科を掲げ、性同一性障害の患者らに性別適合手術などをしていたという。

 新宿区保健所は7月、診療所を立ち入り検査。衛生管理に問題があるとして改善を指導した。同保健所に10月、診療所の廃止届が提出された。

新潟・県立十日町病院 誤診で県が1000万円賠償へ 女性死亡で 13.2.9

(毎日新聞社 2013.2.9)

県立十日町病院:誤診で県が1000万円賠償へ--女性死亡で /新潟

 県は8日、04年に県立十日町病院(十日町市)で誤診されて治療が遅れた女性(当時10代)の遺族に、1000万円を支払うことを決めた。

 女性は04年4月、同病院で骨髄炎と診断された。その後治療を続けたが改善せず、同8月、他の病院で比較的まれな悪性腫瘍と診断され、07年2月に死亡した。

 遺族は、「早期に専門病院に転院させ化学治療が行われていれば、死なずに済んだ」として、09年7月から県に賠償を求めて交渉していた。県は症状が改善しない場合、別の病気の可能性を考えたり、より専門的な医師の助言を仰ぐ必要があったとして、判断の遅れを認めた。


医療過誤 静岡・沼津市立病院が遺族らに和解金 計4300万円

13.2.9 

(毎日新聞社 2013.2.9)
 沼津市立病院で92年と12年に医療過誤があり、同市は8日、それぞれの患者や遺族に計約4300万円の和解金を支払うことで合意したと発表した。

 同市立病院によると、92年11月4日、胆石症の手術で誤って総胆管を摘出したため、後遺症が残った当時26歳の女性患者に1500万円。昨年2月13日、医師が手術中誤って胸の動脈を損傷し、翌日に死なせた男性患者(当時79歳)の遺族に約2800万円。

 いずれも患者や遺族の意向で発表せず、和解交渉を行っていた。

手術ミスで低酸素脳症に 岐阜、病院が4千万円賠償 13.2.7

(共同通信社 2013.2.7)

 2008年に岐阜県の中津川市民病院で甲状腺がんの手術を受けた中津川市の女性(69)が術後に低酸素脳症に陥り、寝たきり状態になった事故をめぐり、病院側は6日までに、手術の際のミスを認め、損害賠償金4千万円を支払う内容で女性側と和解した。

 病院によると、女性は08年3月24日に同病院で甲状腺がんと診断され、4月7日に甲状腺の全摘手術を受けた。麻酔をかけ、気道を確保する管を鼻や口に挿入しようとしたが、鼻からの出血などで通すことができず、気管を切開して気道を確保するまで13分かかった。その結果、低酸素脳症に陥ったという。

 病院は「出血した際に、すぐに気管切開による気道確保の措置を取るべきだった」と注意義務違反を認め、女性側に謝罪。浅野良夫(あさの・よしお)院長は「不幸な結果になってしまい、本人、家族におわび申し上げる」としている。

 病院は06年以降、薬剤を過剰に投与された男性患者が亡くなるなど計7件の医療ミスがあったと明らかにした。


「胃がん手術死亡は医療ミス」遺族が提訴 13.2.6

(読売新聞 2013.2.6)

 胃がん手術を受けて死亡したのは、担当医師らの医療ミスが原因だとして、長野市の男性(当時57歳)の遺族が、がん研究会(東京都江東区)を相手取り、慰謝料など計約1億6000万円を求める訴訟を長野地裁に起こしたことが5日、わかった。

 男性は昨年1月5日、がん研究会が設ける「がん研究会有明病院」で胃の全摘出手術を受けた。術後、腹膜炎や敗血症などの症状に見舞われ、細菌感染による播種性血管内凝固症候群を併発し同18日に死亡した。

 訴えによると、胃を全摘した後に腸と腸をつなぐ縫合にミスがあり、膵液(すいえき)が多量に漏れる症状が出たため男性は翌6日に緊急手術を受けた。この際は、担当医師らは縫合ミスに気づく機会があったのに、処置を怠った、と指摘。遺族側は、医師らの過失によって死亡したのは明らかとし、診療契約上の注意義務違反による債務不履行や不法行為に基づく損害賠償義務がある、と主張している。

 がん研究会広報部は「訴状の内容を検討のうえ、今後の対応を考えたい。まずは患者の冥福を祈りたい」としている。

酸素送り忘れ19分、救急搬送の男性CO中毒死 13.2.3

(読売新聞 2013.2.3)

 札幌市消防局は2日、50歳代の男性を搬送する際、人工呼吸器の酸素ボンベのバルブが19分間にわたって閉められたままだったと発表した。

 男性は搬送先の病院で死亡しており、同局は遺族に謝罪するとともに、死亡との因果関係を調べている。

 同局や北海道警札幌南署によると、2日午前1時50分頃、札幌市南区のマンション1室から出火し、この部屋に住む無職栗栖勉さん(58)が心肺停止状態で発見された。救急隊員が心肺蘇生措置を施しながら救急車に乗せたが、酸素ボンベの流量を調整するバルブが開いておらず、通常の空気だけが送られていた。ドクターカーで合流した医師が酸素が送られていないことに気づきバルブを開けたが、栗栖さんは搬送先の病院で死亡した。死因は一酸化炭素(CO)中毒だった。

 同局によると、救急隊長は「バルブを回したと思いこんだ」と話しており、同乗の救急隊員2人も酸素の流入量を示すメーターを確認していなかった。

針抜き忘れ死亡、2医師が不起訴に…石巻の病院 13.1.26

(読売新聞 2013.1.26)

 宮城県石巻市の石巻赤十字病院で2011年8月、心臓を包む心嚢(しんのう)に刺した針を抜き忘れたことが原因で、同県美里町の女性(当時53歳)が死亡した医療事故で、業務上過失致死容疑と医師法違反(異状死の届け出義務違反)容疑で、それぞれ書類送検された当時の勤務医2人を仙台地検が不起訴としていたことが26日、わかった。

 同地検は不起訴の理由について「明らかにしない」としている。

 2人が書類送検されたのは昨年9月。1人は11年8月13日、救急搬送された末期がんの女性を救命措置後、心嚢にたまった液を抜き取った際、針を抜き忘れ、翌14日早朝に針が心臓に刺さって女性を死亡させた疑いがもたれた。別の1人は、女性の死亡に不審な点があることを認識しながら、医師法で定める24時間以内の警察への届け出を怠った疑いだった。

カンガルーケア損賠訴訟 脳障害「息子のケース学んで」 両親が対策訴え あす第1回弁論 /埼玉 13.1.23

(毎日新聞社 2013.1.23)

 長男(1)が重度の脳障害(低酸素性虚血性脳症)になったのは、病院が十分な事前説明や見守りをせずにカンガルーケアを行ったためだとして、桶川市に住む夫婦が、自治医科大学と国を相手取り、約2億6384万円の損害賠償を求めている裁判の第1回口頭弁論が24日、さいたま地裁で開かれる。弁論を前に、両親は、「息子のケースを学んで対応してほしい」と、カンガルーケアの慎重な実施と事故対策を訴えた。

 訴状などによると、母親(28)は11年5月、さいたま市大宮区の同大学付属さいたま医療センターで長男を出産したが、助産師がカンガルーケアをさせたままそばを離れたため、長男は低酸素性虚血性脳症を発症、脳障害が残ったという。両親は▽家族にカンガルーケアについて事前に説明がなかった▽羊水混濁があったにもかかわらず、低酸素性虚血脳症が起こるとの注意を払わなかった▽ケア中に経過観察を怠った――と訴えている。

 母親によると、出産直後、長男は元気だったが、助産師に「おっぱいをあげてみましょう」と促され、あおむけの体勢で、長男を胸に抱きかかえたカンガルーケアの状態で授乳していたところ、長男がけいれんした後で動かなくなった。助産師が迎えに来た時には顔が土気色になっていたという。母親は「あんなに元気だったのに、とても信じられなかった」と振り返った。

 羊水混濁が起こっている場合には、赤ちゃんの気管などに便が詰まり、胎便吸引症候群を引き起こし、酸素不足を起こす場合がある。そのため、呼吸がしづらくなる体勢のカンガルーケアは、より慎重に実施する必要があるとされている。

 母親は「当時、カンガルーケアという言葉すら、聞いたことがなかった」といい、病院側からケアの希望確認はなかったとしている。

 長男は、昨年7月に退院したものの、現在も容体が急変する恐れや、1日5回の栄養注入のため、24時間目が離せない状態で、両親が付きっきりで看護している。「子どもとアウトドアに出かけるのが夢だった」という父親は「また病院でこういうことが起きるかもしれない。息子のケースを学んで対応してほしい」と、裁判を通じて、病院側に十分なケア中の安全確保を求めたい考えだ。同センター総務課は毎日新聞の取材に「現時点でコメントはない。裁判で主張したい」としている。

手術中の脳内出血で後遺症、東北大に賠償命令 13.01.09

(読売新聞 2013.1.9)

 脳動脈瘤の手術で脳内出血を起こし、後遺症が残ったとして、東京都文京区の女性(62)が東北大(仙台市青葉区)を相手に損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、仙台地裁であった。

 関口剛弘裁判長は、同大に説明義務違反があったとして、慰謝料など440万円の支払いを命じた。

 判決によると、女性は2003年2月、米国で交通事故に遭い、その後、体調不良を訴えて東北大病院を受診したところ、脳動脈瘤が見つかった。同年8月に同病院で手術を受けたが、その際に動脈瘤が破裂し、左半身がまひするなどの後遺症が残り、身体障害者2級となった。関口裁判長は「経過観察しつつ、手術するか否かを判断していくことも選択肢の一つであったのに、説明しなかった」とし、同大の過失を認めた。


甲府病院の放射性医薬過剰投与:市長、独立調査委も検討/山梨13.1.12

(毎日新聞社 2013.1.12)

 甲府市立甲府病院が放射性検査薬を子供に過剰投与した問題で、宮島雅展市長は11日の定例記者会見で、患者家族らが求めている独立調査委員会の設置について「検討を始めている」とした。

 甲府地検は先月、投与に関わり、医師法違反(非医師の医業禁止)容疑で書類送検された放射線技師2人を不起訴処分とし、捜査を終結。これを受け、捜査当局から押収資料が返還されることから、患者家族でつくる「過剰投与内部被曝(ひばく)被害者の会」と専門医らの「日本核医学会」が市に対し、市や病院から独立した調査委員会の設置を改めて要望していた。

 また、宮島市長は2月以降に関係者の処分を決める諮問会を開く方針を示した。

[モルヒネ副作用で意識不明 前立腺手術の男性、宮崎 13.1.11

(共同通信社 2013.1.11)

 宮崎県日南市の県立日南病院は10日、70代の男性患者=同県串間市=が前立腺切除手術後に心肺が停止し、低酸素脳症になる医療事故があったと発表した。男性は意識不明の状態が続いており、病院は手術中に痛み止めとして使ったモルヒネの副作用管理が適切でなかったのが原因として、家族に謝罪した。

 病院によると、男性は前立腺肥大症で昨年9月28日に入院。手術は10月1日に実施、成功した。しかし手術の4時間後に看護師が心肺停止状態となった男性を発見。強心剤の投与で呼吸や心拍は戻ったが、低酸素脳症になった。

 病院外の医師らで構成する事故調査委員会は、計測した心電図などを常時表示する装置を着けていなかったため心肺停止の発見が遅れ、低酸素脳症になったと判断。病院に過失があると結論付けた。

 病院によると、モルヒネは副作用として呼吸が浅くなる「呼吸抑制」になる可能性がある。

 記者会見した鬼塚敏男(おにつか・としお)院長は「呼吸停止を予測するのは難しいが、装置を着用しておけば事故を防げる可能性があった」と述べ、頭を下げた。

 病院は昨年12月28日に家族に経緯を説明し、医療費の全額負担と損害補償を申し出た。


鼻の手術後に男性死亡 宮崎、業過致死の疑いも 13.01.09

(共同通信社 2013.01.09)

 宮崎市の病院で昨年12月、同市の70代の男性が鼻の手術を受けた後に意識不明の重体となり、死亡していたことが9日、宮崎北署への取材で分かった。同署は医療ミスによる業務上過失致死の疑いもあるとみて、関係者から事情を聴くなどして捜査している。

 宮崎北署によると、男性は昨年11月末、蓄膿(ちくのう)症を訴え、同病院で麻酔の後に手術を受けた。手術は成功したが、術後に容体が急変。意識不明となり、宮崎市内の別の病院に搬送されたが12月12日に死亡した。

 同署は、男性の遺族からの死亡届を受け、遺体を司法解剖。死因は麻酔後に舌が気道をふさいだことによる低酸素脳症と判明した。

 宮崎北署は麻酔と男性の死亡に因果関係があるかどうか詳しい経緯を調べている。同病院では2011年6月にも、20代の女性が鼻の手術後に死亡している。

甲府病院の2技師を不起訴、放射性医薬過剰投与  12.12.28

(毎日新聞社 2012.12.28)

甲府病院の放射性医薬過剰投与:2技師を不起訴

 甲府市立甲府病院(同市増坪町)が放射性検査薬を子供84人に過剰投与していた問題で、甲府地検は27日、医師法(非医師の医業禁止)違反容疑で書類送検されていた放射線技師長補佐の男性(当時54歳、今年3月自殺)を容疑者死亡で不起訴とした。併せて送検されていた部下の男性技師も容疑不十分で不起訴とした。

 同地検は、医師から指示を受けて検査薬を調合した▽医師から具体的な投与量の指示がなかった――ことから「明確に法に反しているとする証拠がなかった」としている。

 昨年9月、同病院が99~11年、日本核医学会などが推奨する基準の2~40倍の放射性物質「テクネチウム」を含む検査薬を15歳以下の子供84人に投与していたことが発覚。山梨県警は今年5月に書類送検していた。

抗がん剤でB型肝炎悪化、遺族が1億円賠償提訴 12.11.19

(読売新聞 2012.11.19)

 大阪大学付属病院(大阪府吹田市)で悪性リンパ腫の治療を受けていた男性(当時70歳)が死亡したのは、抗がん剤「リツキシマブ」の副作用でB型肝炎ウイルスが増えたのに、病院が必要な措置を怠ったためだとして、男性の遺族が19日、同大学に約1億円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。

 訴状によると、男性は悪性リンパ腫と診断されて2009年11月に入院し、リツキシマブの投与を受け、5度目の入院中だった11年11月、肝不全で死亡した。入院直後の血液検査で男性がB型肝炎ウイルスの持続感染者と判明していた。

 遺族側は、10年6月の血液検査でウイルスが増えていたのに、病院はリツキシマブの投与中止や抗ウイルス剤の併用などをせず、注意義務を怠った、と主張。月1回のウイルス検査を求めた厚生労働省の指針も守らなかった、としている。

 リツキシマブについては、同省が06年、投与後にB型肝炎が悪化して死亡した例があると発表し、医療機関などに注意喚起するよう製薬会社を指導していた。

 提訴後、記者会見した男性の長女(42)は「悪性リンパ腫は快方に向かっていた。病院の怠慢で命が失われたようなものだ」と話した。

 同病院は「訴状の確認ができておらず、コメントを差し控える」としている。


病院元院長、二審も実刑 奈良の患者死亡事件 12.11.16

(共同通信社  2012.11.16 )

 奈良県大和郡山市の「山本病院」(廃院)で2006年、肝臓の手術ミスで男性患者=当時(51)=を死亡させたとして 業務上過失致死罪に問われた元院長の山本文夫(やまもと・ふみお)被告(55)の控訴審判決で、大阪高裁は15日、禁錮2年4月の実刑を言い渡した一審奈 良地裁判決を支持、被告の控訴を棄却した。

 山本被告は「手術が原因ではない」などと主張したが、的場純男(まとば・すみお)裁判長は判決理由で、手術と患者の死亡の因果関係を認定。「必要のない手術で患者を死亡させ、医療に対する信頼を揺るがした。実刑はやむを得ない」と指摘した。

 判決によると、山本被告は入院中の男性患者の良性腫瘍を肝臓がんと誤診。06年6月、別の男性医師と看護師2人による不十分な態勢で腫瘍の摘出手術を実施し、肝静脈を傷つけ失血死させた。

医療事故 病院3割で重大事故 原因究明、外部参加は半数以下 厚労省調査 12.11.11

(毎日新聞社 2012.11.11)

 全国の病院の約3割が、患者が死亡したり、重い後遺症が残ったりする重大な医療事故を3年以内に経験したことが、厚生労働省研究班の調査で分かった。しかし、原因を究明する組織に外部の人材が参加したのは半数以下だった。研究班は「原因究明には、中立性の確保が欠かせない。調査に必要な人材を病院側に紹介する支援体制づくりが求められる」と指摘する。

 アンケートは昨年9月に、3890病院を対象に実施、1261病院(32・4%)から回答があった。

 3年以内に重大事故を経験した病院は32・9%。規模別にみると、300床以上で63・6%▽100~299床29・4%▽99床以下で11・9%だった。規模が大きいほど割合が高いのは、患者が多く、高度な医療を行う機会が多いためとみられる。

 ほぼすべての病院が原因究明に取り組んだが、うち、法律家など外部の専門家の支援を受けたのは47・7%だった。原因究明で困ったことでは▽院内に事故調査の専門家がいない▽当事者以外に、事故に関連した医療分野の専門家がいない▽院外の専門家の支援を得ることが困難――の順に多かった。

 医療の安全管理を行う担当者(兼務を含む)を置く病院の割合は約9割に達した。専従の担当者を配置すると加点される診療報酬改定(06年度)の影響が考えられるという。

 研究班の飯田修平・練馬総合病院長は「医療現場でも安全確保には品質管理の観点が重要で、専門家の育成、研修を充実させる必要がある」と話す。

北海道・重い医療過誤が道立病院で2件 患者は既に退院 12.11.7

(毎日新聞社  2012.11.7 )

 道は6日、道立病院で4~9月、入院治療などが必要になる重い医療過誤が2件あったと発表した。患者2人は既に退院しており、追加治療にかかった医療費などは道が加入する保険で支払う。

  1件は、医師が総胆管結石患者の食道の特殊な形状に気づかず、無理に内視鏡を挿入し、食道に穴を開けた。もう1件は、痛みを和らげる薬剤を持続的に注入す る装置を使う患者に対し、医師が外来での診察時に注入栓を止め、帰宅させた。患者は痛みが悪化し、入院が必要になった。病院や医師名、患者の年齢などにつ いては、いずれも道の公表基準により、公表していない。


京大病院 透析死亡事故 医師ら書類送検 器具誤装着、業過致死容疑 12.11.6

(毎日新聞社  2012.11.6 )

 京都大病院(京都市左京区)で昨年11月、脳死肝移植手術を受けた富山県の男性患者(当時51歳)が透析治 療中に死亡した医療事故で、京都府警は6日、透析回路の交換を担当した当直医2人と看護師1人を業務上過失致死容疑で書類送検した。府警は、3人が回路を 交換する際に器具の確認を怠り、形状の似た別の器具を誤って取り付けたのが原因と判断した。

 書類送検したのは、男性医師(37)▽女性医師(37)=退職▽女性看護師(35)――の3人。

 容疑は、昨年11月12日午後8時ごろ、男性患者の透析回路を交換する際、本来取り付けるべき血液ろ過器ではなく、血漿(しょう)分離器を装着して透析を続けた結果、体内から血漿成分などを失わせ、約15時間後にショック死させた、としている。

 府警によると、看護師が器具の箱に記載された品名を確認せずに間違えて用意し、医師2人も器具を確認せず装着しており、3人の「過失の競合」によって事故が起きたと判断した 。


インスリン注射後に意識障害で事故…禁錮6年 12.11.6

(読売新聞  2012.11.6 )

 水戸市で昨年8月、7人が死傷した玉突き事故で、自動車運転過失致死傷罪に問われた同市黒磯町、無職大図正勝被告(68)に対し、水戸地裁は6日、禁錮6年(求刑・禁錮7年)の判決を言い渡した。

 大図被告が医師の指導を守らず、糖尿病治療のインスリン注射を打った後、食事をせずに車を運転したため、意識障害を起こしたと認定した。

 判決によると、大図被告は乗用車を運転中に意識障害を起こして信号待ちの車列に突っ込んだ。この事故で男性3人が死亡し、男女4人が軽傷を負った。

 大図被告は「インスリン注射を打っていない」などと主張していたが、大畠崇史裁判官は「事故後に測った血糖値などから注射を打ったと推認される。食事をとれば事故を回避できる可能性があった」と述べた。


医師ら3人書類送検 京大の患者死亡事故 12.11.6

(共同通信社  2012.11.6 )

 京都大病院で昨年11月、脳死肝移植を受けた富山県の男性患者=当時(51)=が医療器具の装着ミスで死亡した事故で、京都府警捜査1課と川端署は6日、業務上過失致死の疑いで、医師ら3人を書類送検した。

 同課などによると、書類送検されたのは、装着に関与した当時の肝胆膵(かんたんすい)・移植外科の男性医師(37)と小児外科の女性医師(37)=退職、女性看護師(35)の3人。

 送検容疑は、昨年11月12日夜、患者に透析治療をした際、看護師は本来取り付ける血液ろ過器ではなく、血漿(けっしょう)分離器を確認せずに誤って準備し、医師2人も確認せずに装着、患者をショック状態に陥らせ、翌13日午前10時50分ごろに、死亡させた疑い。

 府警は3人が誤装着を未然に防止する注意義務を怠ったと判断した。医師2人については起訴を求める意見を付けたとみられる。遺族は刑事告訴をしてないが、医師らへの処罰意識は強いという。

 京大病院によると、患者は昨年11月5日、脳死肝移植を受け成功。一般病棟に移り、腎不全の治療を受けていた。患者の死亡後に病院は装着ミスに気付いた。

 京大病院は今年9月、装着ミスと死亡との因果や病院の医療体制の不備を認める報告書をまとめていた。


移植にかけた望み断たれ 「本当に悔しい」と妻 12.11.6

(共同通信社  2012.11.6 )

 脳死肝移植に望みをかけた夫は、約17時間に及ぶ手術を乗り越えた8日後、帰らぬ人となった。医師ら3人が書類送検さ れた京都大病院の医療ミス。「大病院がこんな間違いをしていいのか。本当に悔しい」。亡くなった富山県の男性=当時(51)=の妻が6日までに、胸の内を 語った。

 男性が移植希望の患者リストに登録したのは2008年。肝硬変と腎臓病を併発。週3回の人工透析が欠かせないようになった。体のかゆみに悩まされ、体重が徐々に落ちていく。「移植は最後の望み」。電話が鳴る度に胸が高鳴った。

 約3年がたち「もうだめかな」と諦めかけたころ、ドナーが出たと連絡がきた。「これでよくなる」。移植手術は成功した。

 ただその後の治療で、信じられないミスが起きた。病院の調査報告書から医師らは「誰かが確認したはず」と互いに思い込んだ結果、器具を間違えたことが分かった。「あまりにずさんで無責任。許せない」。怒りが込み上げた。

 背が高く、おしゃれだった夫。通院時でもスーツにお気に入りの海外ブランドのネクタイを締めた。口が悪くけんかもしたが世話好きで「頼りっきりだった」という。一周忌を前に、手元に残していたのど仏の骨を、ようやく墓に納めることができた。

 「移植する肝臓は国の宝。大事にしてください」。医師から言われ「一人の人の大事な体の一部をもらって生きていく」と夫婦で覚悟を決め手術に臨んだ。だからこそ、医師のミスによって夫の命を奪われたことに、今も心の整理がつかないでいる。


「メリットあると考えた」 予防接種でかかりつけ医 12.11.2

(共同通信社 2012.11.2)

 日本脳炎の予防接種後に急死した岐阜県美濃市の男児(10)に、併用が禁じられていた薬を処方していた岐阜市のかかりつけ医(52)が1日、取材に応じ、「薬の添付文書で併用禁止は知っていた。体への影響が多少あるという理解はあったが、メリットの方があると考えた」と話した。

 かかりつけ医は予防接種をした医師とは別。かかりつけ医によると、男児は2010年5月中旬ごろに初めて来院。広汎性発達障害があり、興奮を鎮める2種類の薬を処方していた。

 男児は夜尿症の症状があり、今年8月から抑える薬も処方していたが、効果が見られなかったため9月中旬ごろ薬を変更。この薬と、興奮を抑える1種類を一緒に飲むと不整脈から死亡するリスクがあるとされ、併用が禁止されていた。

 かかりつけ医は、処方量は最低限だったといい「体調の変化があれば中断してほしいと家族に伝えているが、併用禁止は伝えていないと思う」と説明。突然死のリスクまでは「認識がなかった」とした。

 3種類の薬を夕食後1錠ずつ飲むよう指示し、男児は予防接種前日は服用したが、当日は飲んでいなかったという。

 男児の父親(51)は「こちらも納得して使っていたと思う」とし、母親(36)は「先生を信頼している」と話している。

 厚生労働省によると、併用禁止は医薬品の添付文書に示されており、薬事法などによる禁止や罰則の規定はない。厚労省の担当者は「医師が文書の内容を承知の上で、医療上必要と判断した場合、処方を禁止するものではない」と話している。

「併用禁止知らなかった」と死亡男児の母 12.11.1

(毎日新聞社 2012.11.1)

日本脳炎:予防接種死亡 かかりつけ医、死亡男児に併用禁止薬 接種前日にも服用

 岐阜県美濃市の男児(10)が日本脳炎の予防接種直後に急死した問題で、男児がかかりつけの医師から併用が禁じられている薬を処方されていたことが、厚生労働省への取材で分かった。一緒に服用すると不整脈により死亡する危険性があるとされ、同省は薬の併用と死亡との関連について調べている。

 男児の母親によると、男児は広汎(こうはん)性発達障害による興奮を抑えるため2種類の薬を服用。今年9月から夜尿症を抑える薬も処方され、3種類を毎日飲むよう指示されていた。予防接種の前日夕にも服用し、当日は飲んでいなかったという。

 厚労省によると、興奮を抑える薬1種と夜尿症を抑える薬を併用すると脈が乱れて意識を失うことがあり、死亡する危険性もあるとされている。母親は「かかりつけ医を信頼しており、指示通りに飲ませていた。併用禁止とは知らなかった」と話している。

 男児は10月17日、美濃市内の小児科医院でワクチン接種を受け、約5分後に心肺停止となって約2時間後に死亡が確認された。かかりつけ医とこの小児科医院は別。岐阜県警も併用の危険性について把握しており、「関係先から事情を聴きたい」としている。

静岡・市立清水病院の入院患者死亡 業過致死容疑、医師を書類送検 12.10.12

(毎日新聞社 2012.10.12)

 静岡市清水区の市立清水病院で08年11月、当時76歳の男性患者が入院中に死亡した問題で、清水署が今年2月に、治療を担当した男性医師を業務上過失致死容疑で静岡地検に書類送検していたことが11日、同署などへの取材でわかった。

 同署や病院などによると、患者は入院中の08年11月12日、急性心筋梗塞(こうそく)になり、男性医師が心臓カテーテル治療をした。その際心臓の血管(冠動脈)を傷つけるなどして、病状が悪化し患者は同日死亡した。

 患者の妻ら遺族は10年8月、病院を相手取り約3850万円の損害賠償請求訴訟を静岡地裁に起こした。病院側は、「医師の対応は常識の範囲内で、問題はなかった」と請求棄却を求め、現在係争中となっている。

(長野)麻酔と誤って止血剤注射…信大付属病院 12.10.11

(読売新聞 2012.10.11)

 信州大医学部付属病院(松本市)は10日、80歳代の男性患者に皮膚の移植手術をする際、局所麻酔で別の止血用薬剤を誤って注射する医療事故があったと発表した。患者は手術中に心拍数や血圧が上昇し、一時意識不明となったが、集中治療室で治療を受け、回復に向かっているという。

 同病院によると、患者は動脈が詰まり、足がただれる重症下肢虚血で今月3日、左足に脇腹の皮膚を移植する手術を受けた。手術前、担当医師が局所麻酔用の薬剤リドカインEを注射するはずが、看護師は生理食塩水で希釈した止血用のアドレナリン注射薬が入った注射器3本(計30ミリ・リットル分)を渡し、医師がそのまま注射した。

 看護師はアドレナリン注射薬を希釈中に医師から「局麻(局所麻酔薬)下さい」と言われ、手元の注射薬を求められたと思って手渡した。お互いに声に出して薬剤名は確認しなかった。別の看護師がアドレナリン注射薬の量が少ないことに気付き、ミスが分かった。

 男性患者は手術後半に心拍数や血圧が上がり、終了後に検査した結果、ストレスなどで心臓の筋肉が動かなくなるたこつぼ型心筋症と診断された。止血剤を注射したことが原因とみられるという。患者は快方に向かっているが、現在も集中治療室で治療を受けている。

 記者会見した天野直二病院長は「二度と繰り返さないよう、速やかな再発防止策を講じたい」と陳謝した。


管理不備で死亡と提訴 医療法人に2千万円請求 12.10.3

(共同通信社 2012.10.3)

 大阪府和泉市にある精神障害者の社会復帰を支援する施設で、入所中の女性=当時(32)=が近くの池に落ちて死亡したのは施設の管理不備が原因として、女性の両親が施設を運営する医療法人「貴生会」(同市)に2千万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁岸和田支部に起こしたことが2日、分かった。

 訴状によると、女性は2010年6月2日夜、施設から抜け出し、2日後に近くの池で、遺体で見つかった。女性は事前に幻聴などを訴えており、症状の悪化を認識していた施設は、夜間は危険な池に近づかないよう通用門に鍵を掛けるなど安全に配慮すべきだった、としている。

 父親(60)は取材に「投薬量についても副作用が心配で改善を求めていたが聞き入れてくれなかった。経緯の説明もなく、管理態勢に問題があると思う」と話した。

 貴生会は代理人を通じ「現時点で何も申し上げられない」としている。


腎臓取り違えで略式起訴 手術執刀医ら2人 12.10.3

(共同通信社 2012.10.3)

 栃木県小山市の小山市民病院で2010年2月、左右の腎臓を手術で取り違えて摘出したとして、小山区検は3日までに、業務上過失傷害罪で執刀医を務めた同県下野市の男性医師(50)と補助した下野市の男性医師(42)を略式起訴した。9月28日付。

 起訴状によると、10年2月10日、右腎臓がんで入院していた当時69歳の男性患者の手術で、腎臓が撮影されたエックス線フィルム写真の裏表を逆に見たことで、誤って正常な左の腎臓を摘出したとしている。

 病院によると、約3時間半後に体内に戻したが、機能しなかったため3月18日に再度摘出した。

 病院は男性に賠償金4200万円を支払うことで和解。男性は別の病院で右腎臓のがんの治療を続けている。

 小山市民病院は「大変申し訳なく深くおわびする。再発防止に努めたい」としている。

手術中、腸と間違え膀胱を切断…和解金支払いへ 12.10.3

(読売新聞 2012.10.3)

 静岡県富士宮市は2日、同市立病院(錦町)で2009年に起きた医療事故を巡る損害賠償請求訴訟で同病院のミスを認め、患者側に和解金2500万円を支払う方針を明らかにした。

 開会中の市議会9月定例会に関連議案を提出し、最終日の9日に審議と採決を行う。患者側との和解は24日に成立する見通し。

 市によると、09年8月、市内の男児(当時1歳)が腸の一部がはみ出した「鼠径(そけい)ヘルニア」の治療のため、同病院で手術を受けた際、執刀医がはみ出した腸と膀胱(ぼうこう)を見間違え、膀胱の一部を切除した。

 男児の母親は昨年11月、病院を運営する市に4755万円の損害賠償を求める訴訟を静岡地裁富士支部に起こした。

 審理は地裁沼津支部で行われ、今年に入ってから和解協議が進められていた。


手術中、腸と間違え膀胱を切断…和解金支払いへ 12.10.3

(読売新聞 2012.10.3)

 静岡県富士宮市は2日、同市立病院(錦町)で2009年に起きた医療事故を巡る損害賠償請求訴訟で同病院のミスを認め、患者側に和解金2500万円を支払う方針を明らかにした。

 開会中の市議会9月定例会に関連議案を提出し、最終日の9日に審議と採決を行う。患者側との和解は24日に成立する見通し。

 市によると、09年8月、市内の男児(当時1歳)が腸の一部がはみ出した「鼠径(そけい)ヘルニア」の治療のため、同病院で手術を受けた際、執刀医がはみ出した腸と膀胱(ぼうこう)を見間違え、膀胱の一部を切除した。

 男児の母親は昨年11月、病院を運営する市に4755万円の損害賠償を求める訴訟を静岡地裁富士支部に起こした。

 審理は地裁沼津支部で行われ、今年に入ってから和解協議が進められていた。


「早期出産に無理あった」 日本赤十字社を提訴 12.10.3

(共同通信社 2012.10.3)

 不必要な帝王切開による早期の出産で、男児(9)の脳に重度の障害が残ったとして、高松市の両親らが出産を担当した高松赤十字病院を運営する日本赤十字社に、介護費など約2億1100万円の支払いを求める訴訟を3日までに、高松地裁に起こした。

 訴状によると、母親が三つ子を妊娠して30週目だった2003年2月、受診していた同病院で胎児1人の死亡が判明。直後に緊急帝王切開で男児と女児を産んだが、男児の脳に重度の障害が残り、「(障害の)発症可能性が高いことは容易に推測でき、慌てて早期に出産させる必要はなかった」と主張している。

 高松赤十字病院は「訴状の内容を確認し、適切に対応したい」としている。

市民病院、元患者の術後措置遅れで賠償金 愛知・岡崎市 12.10.2

(毎日新聞社 2012.10.2)

 岡崎市は1日、岡崎市民病院で手術を受けた名古屋市の60代の男性患者に術後措置に遅れがあったとして、88万5050円の損害賠償金を支払う議案を市議会9月定例会に提案する、と発表した。

 市民病院によると、男性は11年6月に心筋梗塞(こうそく)で入院、手術を受けた。術後、左手首に採血などに使用するカテーテルを注入した際、血管に傷をつけ左腕が腫れた。男性は痛みを訴えたが、医師は適切な措置をとらず対応が遅れ、職場復帰が遅れるなどしたとして、市に休業補償などを要求した。市は過失を認め賠償金を支払うことにした。

針抜き忘れ死亡、元医師を書類送検 容疑認める 宮城・石巻の医療過誤 12.9.21

(毎日新聞社 2012.9.21)

 宮城県石巻市の石巻赤十字病院で昨年8月、女性(当時53歳)の救命治療の際に針を抜き忘れて死亡させたとされる医療過誤事件で、県警は20日、元医師の男(30)=依願退職=を業務上過失致死容疑で仙台地検に書類送検した。県警によると、容疑を認めている。送検容疑は昨年8月13日、救急搬送された女性の心臓を覆う心嚢(しんのう)にたまった液体を抜き取ろうと刺した針を抜き忘れ、針が心臓に刺さり14日に死亡させた、としている。

患者死亡で看護師書類送検 人工呼吸器の電源入れ忘れ 12.9.18

(共同通信社 2012.9.18)

 東京都小平市の国立精神・神経医療研究センターで6月、筋ジストロフィーのため入院していた女性(38)の人工呼吸器が止まって死亡する事故があり、警視庁は18日までに、業務上過失致死容疑で同センターの男性看護師(37)を書類送検した。

 警視庁によると、看護師がたんの除去作業のため人工呼吸器を止めた後、電源を入れ忘れたとみられる。女性は6月12日に死亡し、同センターが警視庁に届けた。 同センターは「患者の命を預かる病院であってはならないことで、誠に申し訳ない」としている。

投薬管理に問題、患者遺族と示談協議 愛知・瀬戸・陶生病院 12.9.15

(毎日新聞社 2012.9.15)

 公立陶生病院(瀬戸市)は14日、入院中に脳出血で死亡した80代の男性患者の遺族と示談に向けた協議を進めていることを明らかにした。薬剤の調整に問題があり、「医療事故に準じる」と判断したという。

 病院によると、男性は下肢のしびれなどを訴えて5月2日に入院した。多発性脳梗塞(こうそく)を過去に発症した痕跡があったことから、血栓予防のため、血液を固まりにくくする薬剤(抗凝固薬)の投与を始めた。同20日に血液が凝固する能力が著しく低下したため、抗凝固薬の投与量を半分にしたが、同24日未明に脳出血を起こし、同日夕方に死亡した。

 遺族が証拠保全を申し立てたため、病院側が当時の治療を検証した。脳出血自体は防げなかったが、高齢でリスクが高い患者であることを考慮し、抗凝固薬の投与量と血液凝固能の調整を通常よりも慎重に行っていれば、死亡するほど重篤にはならなかった可能性があると結論付けたという。


男性患者、投薬後に死亡 愛知県瀬戸市の病院 12.9.14

(共同通信社 2012.9.14)

 愛知県瀬戸市の公立陶生病院で昨年5月、入院していた男性患者=当時(84)=が投薬を受けて脳内出血を起こし死亡していたことが14日、分かった。

 同病院によると、担当医は定められた適切な量の薬を投与していたが、男性は体調不良だったといい、投薬の何らかの影響があったとみられる。

 男性は昨年4月下旬から、手足のしびれを訴えて入院していた。

 病院側は医療ミスだったとして、男性の家族に謝罪。賠償金を支払う方針で、示談交渉を進めているという。

医療ミス:鹿児島・肝属郡医師会に3870万円支払い命令 地裁判決 12.9.12

(毎日新聞社 2012.9.12)


「60年、人生狂わされた」 産院の取り違えで提訴 12.9.12

(共同通信社 2012.9.12)

 出生直後に別の新生児と取り違えられた男性(59)と実の弟3人が「約60年にわたり人生を狂わされた」として、産院を設置する東京都墨田区の社会福祉法人に計約1億5500万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴していたことが分かった。11日に第1回口頭弁論があり、社会福祉法人側は争う姿勢を示した。

 訴状によると、男性は1953年、産湯の後、別の母親の元に戻された。2歳で戸籍上の父を亡くし、工場で働きながら定時制高校に通った。その後は運送会社に勤務した。一方、男性の生みの母親に渡された新生児は大学まで進学した。

 男性の実の弟が2009年に、兄の容姿が家族と似ていないことなどに違和感を覚え、DNA鑑定をして血縁関係がないことを確認。産院の台帳を証拠保全するなどして、実の兄を捜し出したという。

 しかし、その時には両親は既に死亡。男性は「真実の親と家庭生活を過ごすことも、失われた時間を取り戻すことも不可能だ」と訴えている。

 肝属郡医師会立病院(錦江町)で手術を受けた男性(当時53歳)が死亡したのは、医師が適切な処置を怠ったのが原因として、遺族が同医師会などを相手に損害賠償を求めた訴訟で、鹿児島地裁は11日、医師会側の過失を認め計約3870万円と年5%の遅延損害金の支払いを命じた。

 判決によると、同病院の医師(54)は03年8月27日、男性の直腸がん手術をした際、手術器具で腸管を傷付けて穴を開けたにもかかわらず、穴を縫合するなど適切な処置を行わなかったため、腹膜炎を発症させ死亡させた。

 久保田浩史裁判長は「合併症を起こす可能性は予見できた」と判断。病院側の「腸管の穴は手術中にできたものではない」との主張を退けた。

“あわや事故”、勤務医の77%が経験。労働政策研究・研修機構、3500人の就労実態を調査 12.9.6

(m3.com 2012.9.6)

 労働政策研究・研修機構(JILPT)は9月4日、「勤務医の就労実態と意識に関する調査」の調査結果を発表した(資料は、JILPTのホームページに掲載)。3467人の勤務医が調査に答え、そのうち76.9%が「何らかのヒヤリ・ハット体験がある」と回答。背景として、宿直がある人の半数弱が平均睡眠時間4時間未満など、厳しい勤務実態があることが明らかになった。

 調査では、「ヒヤリ・ハット体験があるか」の質問に対し、「ほとんどそうである」が8.9%、「ときどきそうである」が68.0%、「ほとんどない」が23.0%。これを疲労感に対する認識別に見ると、睡眠不足を感じている人のうち、ヒヤリ・ハット体験について「ほとんどそうである」とした人は15.2%だった。

 主たる勤務先で「宿直あり」とした67.4%の勤務医に宿直1回当たりの平均睡眠時間を聞いたところ、「4時間以上」が52.7%、次いで「3―4時間未満」27.7%、「2―3時間未満」10.4%、「2時間未満」5.8%、「ほとんど睡眠できない」3.5%の順だった。宿直1回当たりの平均患者数別では、患者数が増えるほど「ほとんど睡眠できない」とする割合が高かった。また、宿直翌日の勤務体制については、「通常通り勤務する」が86.2%だった。

 勤務先が複数の場合、すべてを含めた1週間当たりの実際の労働時間は、「50―60時間未満」が24.4%、次いで「40―50時間未満」21.8%、「60―70時間未満」20.0%などで、「60時間以上」の割合は40.0%だった。

 勤務医の勤務環境を改善できない理由を複数回答で聞いたところ、「地域・診療科による医師数の偏在」が53.8%で、次いで「医療行為以外の業務量の多さ」51.1%、「絶対的な医師不足」46.5%、「時間外診療、救急診療の増加」38.9%などと続いた。勤務環境改善策については、「医師数の増加(非常勤・研修医を含む)」が55.4%で、次いで「当直明けの休み・休憩時間の確保」53.4%、「他職種(看護師、薬剤師など)との役割分担の促進」50.8%、「診療以外の業務の負担軽減」45.9%などだった(複数回答)。

 調査は2011年12月1日から9日までの9日間に実施。民間の医療専門調査会社が、全国の20床以上の病院に勤めている24歳以上の医師(院長は除外)1万1145人を対象に、インターネットを用いてアンケートを実施した。有効回答数3467人(有効回答率31.0%)だった。


「娘殺された」と告訴 大阪・西成の女医死亡で 12.8.23

(共同通信社 2012.8.23)

 大阪市西成区の木津川で2009年11月、遺体で見つかった医師矢島祥子(やじま・さちこ)さん=当時(34)=の遺族は22日、「何者かに殺害された可能性が高い」として、容疑者不詳の殺人と死体遺棄の疑いで西成署に告訴した。

 告訴状によると、矢島さんは09年11月13日夜、勤務していた西成区の診療所で患者を診察した。同14日未明には診療所の出入りに使うIDカードが使われた記録が残っており、その後行方が分からなくなった。同16日未明に木津川で死亡しているのを釣り人が発見した。

 西成署は、遺体を司法解剖。自殺と事故の両面で捜査を続けている。

 群馬県高崎市に住む父祥吉(しょうきち)さん(68)は「遺体の状況に不審な点があり、自殺とは考えられない。死体遺棄罪の公訴時効が近く、捜査で真相を解明してもらいたい」と話している。

 遺族は10年に「納得できる説明がない」として、警察法に基づき、大阪府公安委員会に苦情を申し立てたが、その後取り下げていた。


甲府病院の放射性医薬過剰投与:安全検証委が初会合 委員長「チェック体制充実を」 /山梨 12.7.18

(毎日新聞社 2012.7.18)

 甲府市立甲府病院(同市増坪町)が検査用の放射性医薬品を子供に過剰投与していた問題で、市は、外部の専門家を入れた医療安全体制等検証委員会を設置。17日に同病院で初会合を開いた。次回は9月末予定。

 会合に先立ち、宮島雅展市長が、武田正之・山梨大大学院医学工学総合研究部教授▽松下由美子・県立大看護学部教授▽堀越芳昭・山梨学院大経営情報学部非常勤講師▽田辺護(まもる)弁護士の委員4人に委嘱状を手渡した。委員長に武田氏、副委員長に松下氏が選ばれた。

 武田氏は会合後に取材に応じ、「人は必ずエラーを犯す。間違いを減らし、相互チェックする体制を充実させていくのが最も大切」と述べた。

 委員会は9月以降は11月と来年2月に開催。協議の内容は、同病院のホームページで公開される。


診察ミスで後遺症と提訴 鳥取の男性、赤十字に 12.7.10

(共同通信社 2012.7.10)

 鳥取赤十字病院(鳥取市)で、担当医の診察ミスが原因で後遺症を患ったとして、鳥取市の男性が9日までに、日本赤十字社と担当医に慰謝料など計約1億1570万円の損害賠償を求める訴訟を鳥取地裁に起こした。

 訴状によると、男性は2010年4月11日に手のしびれなど体の異常を訴え、赤十字病院で診察を受けた。しかし、担当医は「異常はない」と診断し、適切な医療措置をとらなかった。男性は、同月12日に倒れて入院し、13日に脳梗塞と診断された。男性は理解したことを言葉で表すことが、ほとんどできなくなるなどの後遺症を患うようになったという。

 その上で、適切な医療措置を初めからしていれば、脳梗塞の発症や後遺症を防ぐことができたと主張している。

 鳥取赤十字病院は「顧問弁護士を通じて、裁判の中で対応していく」とコメントした。

放射性医薬品過剰投与 (山梨)市側、再発防止策を説明 12.7.10

(読売新聞  2012.7.10)

 市立甲府病院(甲府市)で、腎臓疾患などの子どもに放射性物質を含む薬剤が過剰投与された問題で、甲府市と同病院は8日、被害者家族を対象にした合同説明会を市内で開き、出席した約50家族80人に対し、宮島雅展市長らが改めて謝罪した。

 合同説明会は、昨年10月に続き2回目。今回の説明会での市側の説明によると、同病院では医師が放射性医薬品の投与量を指示せず、3月に自殺した 男性技師(当時54歳)が独自に投与量などに関するマニュアルを作成していた。投与の正式な記録やチェックも行っていなかった。

 宮島市長は「心からおわび申し上げる。ご意見や要望は誠意を持って検討し、少しでも心配が取り除けるようにする」と述べた。市側は、再発防止策などを検討する第三者調査委員会を設置し、7月17日に初会合を開くことを明らかにした。

 一方、過剰投与を受けた子どもの家族らがつくった「被害者の会」は、説明会後に記者会見。独立した事故調査委員会で真相究明が行われるよう求めるため、署名集めを始めたことを明かした。


「誠心誠意、家族に約束」 院長会見で哀悼の意、表明 奈良・土庫病院の胃がん告知ミス 12.7.5

(毎日新聞社 2012.7.5)

 「ご家族や親戚の苦痛を考えると断腸の思い」――。特定医療法人健生会「土庫(どんご)病院」(大和高田市日之出町)による胃がん告知ミス問題で4日、記者会見した山西行造院長。渡辺則之・健生会事務局長と佐渡英一・同病院事務長とともに、告知ミスにより早期治療の機会が遅れ、末期がんとなり、今月3日に亡くなった橿原市の建設業、石田政裕さん(53)に対し、冒頭、哀悼の意を表明した。【千脇康平、村本聡】

 山西院長は「今後も誠心誠意、ご家族に対応していくことをここでお約束する」と述べ、事故原因については、「検査結果と結果説明の多重チェックシステムの不備」と説明。さらに告知ミス後に実施している改善策について報告した。

 一方で、治療の遅れと亡くなったこととの因果関係については、「客観的に評価してもらう必要がある」(佐渡事務長)と述べ、外部の専門医の意見を聞くなどの立場を改めて強調した。

 石田さんは2010年9月、同病院での胃カメラ検査などで胃がんとの結果が出た。しかし、病院側は、石田さんが同2月に県内の別の病院で胃カメラ検査を受けた際の「胃潰瘍」という検査結果だけを見て、胃潰瘍と誤診。胃潰瘍と告げ、胃薬を処方した。

 1年後の人間ドックで告知ミスが判明し、病院は謝罪したが、石田さんは末期がんになっていた。治療を続けていたが今月3日朝、息を引き取った。


「下垂体手術で失明」 腫瘍摘出女性、7980万円求め滋賀・高島市を提訴 12.7.5

(毎日新聞社 2012.7.5)

 公立高島総合病院(現高島市民病院、高山博志病院長)で下垂体腫瘍(しゅよう)の摘出手術を受けた高島市内の女性(68)が、手術で視神経を傷つけられ両目を失明したとして、同病院の設置者の高島市を相手取り約7980万円の損害賠償を求める訴訟を大津地裁に起こしていたことが4日、分かった。

 訴状によると、女性は09年10月20日、同病院で、全身のホルモンバランスをつかさどる下垂体の腫瘍と診断された。翌日腫瘍を取り除く手術を受けたが執刀医に視神経を傷つけられ、神経の再生を促す薬も処方されなかったとしている。手術前から女性は左目に視力障害があったが視力はある状態で、右目には何の不具合もなかった。手術前に主治医や執刀医から失明の危険性などの説明は一切なかったという。

 女性の夫によると、手術後に失明を訴えた女性に対し、主治医は「この手術にはよくあること。1~2カ月程度で治ります」などと説明。ところが回復のきざしはなく、翌年3月8日に女性は自主退院した。

 女性は現在、失明に加え目の痛みを訴え、夫が目を冷やすためホウ酸水を染み込ませたガーゼを頻繁に交換している。痛みで睡眠もままならないといい、夫は「病院関係者は一度も謝罪しておらず許せない。妻を元の体に戻してほしい」と訴えている。

 同病院総務課は毎日新聞の取材に「訴状の内容を精査中で公判までに病院としての対応を決めたい」としている。

山口赤十字病院を損賠提訴 手術ミスで重い障害、山口市の女性が2億円 12.7.3

(毎日新聞社 2012.7.3)

 骨化した靱帯(じんたい)を切除する手術のミスで脊髄(せきずい)が傷つき、両足麻痺(まひ)などの重い障害を負ったとして、山口市の女性(65)が山口赤十字病院=山口市八幡馬場=を相手取り、約2億1600万円の損害賠償を求める訴えを山口地裁に起こした。

 提訴は6月15日付。訴状によると、女性は04年ごろから両足にしびれや腰痛を感じ、立ち上がる際に転びそうになるなどの症状が現れ、05年3月に同病院を受診。MRI検査の結果、背骨周辺にある靱帯(じんたい)が骨化する黄色靱帯骨化症で脊柱(せきちゅう)管が狭まっていることなどが判明。手術で圧迫状態を除去することなどが必要と診断された。

 女性は診断に基づき、05年5月に同病院で手術を受けたが、その際、超音波メスの操作ミスで脊髄を損傷。このため、両足の麻痺や排便・排尿障害などが生じたとして、介護費用や慰謝料などを求めている。

 同病院は「訴状が届き次第、精査して弁護士と対応を検討する」と話した。

イレウスの緊急手術で患者が植物状態に 責任は担当医より麻酔科医に(連載:判例に学ぶ 医療トラブル回避術)

2012. 7. 1

判例解説《札幌地裁2002年6月14日判決》
イレウスの緊急手術で麻酔を受けた患者が心肺停止で植物状態になりました。裁判では直接の原因をつくった麻酔科医の過失が重くとらえられましたが、手術室の実情を知る医師からは同情の声が多く上がりました。
【執筆】石黒 敏洋=弁護士(札幌アライアンス法律事務所)

事件の概要

 患者は1991年2月、公立病院で胆石症と診断され、3月14日、出張医のA麻酔科医による麻酔の下、同病院の医師らによる施行で胆嚢摘出術などを受けた。術後の経過は順調だったが、29日の昼食後になり下腹部痛が起きてきた。

 下剤を使用したが効果はなく、夕食時には嘔吐感が出てきた。この時点で腹部X線検査により小腸内ガス像とニボー像が確認されている。30日から絶食となり、輸液を開始。症状は遷延し、4月1日にガストログラフィン追跡造影検査で小腸の通過障害が疑われ、イレウスと診断された。

 2日2時10分ころ上半身の発汗が著明となり、胸苦や動悸を訴えたが、吐き気は軽く、腹痛も自制内であった。6時10分ころになり茶色の水様物を大量に嘔吐し、15時30分ころイレウス管が挿入された。

 3日6時ころ、イレウス管から便臭の乳白色の液を排出。11時40分にイレウス管造影検査を実施したところ、10年以上前に行われた小腸の手術瘢痕部に閉塞が認められた。

 4日6時50分ころには自制できない腹部と咽頭部の疼痛を訴え、ジアゼパムが投与された。その後も激痛と全身倦怠感が著明に持続し、10時5分にはイレウス管から1100mLの排出液があったものの、造影検査で小腸の通過障害の改善は見られず、B担当医は直ちにイレウスの手術を行うことを決定した。

 麻酔は再度Aが行うことになり、C外科医から患者の状態について簡単な説明を受け、麻酔を行った。麻酔の方法は胆嚢摘出術のときとほぼ同じだが、前回と比べ2%キシロカインを12mLから10mLに、イソゾールを14mLから10mLに減量した。

 ところが、麻酔施行後10分ほどで血圧が測定不能になり、昇圧薬などを使用したものの心停止を来した。蘇生措置で心拍は再開したが、脳虚血による大脳皮質障害に至り、いわゆる植物状態となった。イレウスの手術自体については、別の病院に搬送後、穿孔部を含めて小腸40cmを切除し、無事に終えた。

 その後、患者の意識は回復せず、2006年10月時点で植物状態のまま存命しており、障害者認定により医療費が無料となっている。患者の家族は同病院を開設する地方公共団体を相手取り、総額1億8000万円余りの損害賠償を求めて提訴した。

判決

 裁判における1つ目の争点は、イレウス手術を遅延させた過失の有無である。判決では、小腸内ガス像およびニボー像が認められ、下腹部痛、腹満感、嘔吐などを訴えても、下腹部痛が自制内で鎮痛薬によって抑制可能であり、腹満感、嘔吐などもさほど激しくなければ絞扼性イレウスを疑うべきとはいえず、そのような場合の基本は保存的治療であり、1週間程度保存的治療を行ったBに手術を遅延させた過失があるとはいえないとした。

 2つ目の争点は、イレウス手術までの全身状態管理を怠った過失の有無である。判決は、イレウスの患者は脱水、血液濃縮、乏尿などが生じやすく、患者の体液バランスを連続的に記録し、血液や尿などの検査を行うことが望ましいとしたが、Bがイレウスの発症を疑った後、保存的治療として必要な措置を講じていたこと、4月3日までは絞扼性イレウスを疑うべき所見がなかったことなどから、上記のような検査を行うべき「法的義務」まで認めることは困難であるとした。

人工心肺停止が原因 脳死肺移植の女性意識不明 12.6.26

(共同通信社 2012.6.26)

 京都大病院(京都市)での脳死肺移植で昨年10月、移植を受けた40代女性が脳障害で意識不明になった問題で、外部専門家を含む同病院の調査委員会は25日、原因を発表。移植終了後、人工心肺装置装着の決定から開始までに30分かかったことと、この装置に空気が混入し4分間停止させたことが重なり脳障害になったと考えられるとした。

 女性は現在も意識不明。京大病院は明らかな医療ミスは指摘されなかったとした上で「空気混入の明らかな原因は特定できなかった。重大な結果になり大変申し訳ない」とコメント。再発防止策として、準備時間が短い人工心肺装置を導入するなどした。

 同病院によると、女性は肺リンパ脈管筋腫症で昨年10月、山梨県立中央病院(甲府市)で脳死判定された60代男性から両肺の移植を受けた。

 移植終了後、肺が機能不全となって血中の酸素濃度が低下し、補助の人工心肺装置をつけた。12分後に装置に空気が混入していることが判明し、空気を抜くため4分間止めた後に再開させたが、手術翌日に脳障害が起こっていた。

 調査委は空気混入について、装置の再開後から正常に作動し欠陥や不備がないほか、手術で血管を傷つけたことによる混入などは確認できず、原因解明には至らなかったとした。


「信頼揺るがした」元理事長に禁錮2年4月 奈良地裁判決 山本病院の業過致死 12.6.23

(毎日新聞社 2012.6.23)

山本病院の業過致死:「信頼揺るがした」元理事長に禁錮2年4月--地裁判決 /奈良

 「医療に対する信頼を大きく揺るがした」―。大和郡山市の医療法人雄山会「山本病院」(破産)で06年6月、肝臓手術を受けた男性患者が死亡した事件。約6年の年月を経た22日、奈良地裁は元理事長の山本文夫被告(54)に実刑判決を下した。橋本一裁判長は「医師になった当時は、このような手術をする判断はしなかったと思う。どこで変わってしまったのかをよく考えることが、同じような事件を繰り返さない参考になる」と説諭した。【岡奈津希】

 「禁錮2年4月に処する」。ポロシャツにスエット姿の山本被告は、量刑理由が読み上げられる間、足をさすったり、眼鏡に手をやったりと落ち着かない様子だった。

 橋本裁判長は「患者の生命を預かる医師として最も基本的な義務に反した」と厳しく指弾。さらに「被害者をおもんぱかる発言が一つもなかったことが残念」と反省を促した。

 警察庁によると、医師が業務上過失致死容疑で逮捕されたのは97年以降、今回を含め6件と少ない。

 主な争点は注意義務の有無と死因だった。判決は、良性の腫瘍(しゅよう)をがんと誤診したことについて「医学生が学ぶレベルの簡単な診断。良性だと容易に認識できた」と指摘。また、専門医でない医師らで専門性の高い手術を行ったことは「安全に実施できないことを認識し、手術を回避する義務があった」とした。

 弁護側は、執刀医でも主治医でもなく、注意義務はないと主張したが「中心的に執刀し、主導的な立場だった」と退けた。また、死因は手術ミスで出血し、止血が不十分だったことによる失血死と認定した。

 山本被告は、診療報酬詐欺事件で10年1月に言い渡された懲役2年6月の判決が確定している。代理人弁護人は「控訴するか本人と話し合って決める」と話し、県は「再発防止に努め、県民が安心して医療を受けられるよう取り組んでいきたい」とのコメントを出した。


(奈良)山本病院事件「被害者慮る発言なし」 12.6.23

(読売新聞 2012.6.23)

 ◆元理事長実刑 裁判長「非常に残念」

 男性を手術で死なせたとして、業務上過失致死罪に問われた大和郡山市の医療法人雄山会「山本病院」(廃院)元理事長の山本文夫被告(54)(詐欺罪で服役中)に、地裁は22日、禁錮2年4月(求刑・禁錮3年)の実刑判決を言い渡した。橋本一裁判長は「立ってください」と山本被告を促し、「あなたが被害者を慮(おもんぱか)る発言を一言もしなかったことが非常に残念」と述べた。(初田直樹、森安徹)

 山本被告は青のポロシャツにグレーのスエット姿。橋本裁判長が「禁錮2年4月の刑に処す」と読み上げた瞬間も表情を変えず、前を見すえた。

 弁護側は地裁の死因の認定に関して疑問を呈し、控訴について「来週にも山本被告と話し合って決める」としている。

 山本被告を県警に告発した県医療管理課は「不適切な医療行為が公然と行われていながら県として何ら対応できないということは、現在の医療制度の大きな課題」と、過去に行った立ち入り検査で不正を明らかにできなかったことに触れ、「診療内容も立ち入り検査の対象とするよう、制度の見直しを国に要望している。再発防止に努めたい」とするコメントを発表した。

[解説]専門外医療の法規制急務

判決は、山本被告の手術を「摘出する必要がないのに、軽率にもがんと誤診して行った」と指弾した。

 どの手術方法を選択するかについて、医師には高度な裁量権が認められている。この医療の専門性は医療事故が起きた際、過失の立証の高いハードルとなるが、検察側は立ち会った看護師らの証言を積み重ね、死亡と医療行為の因果関係を明らかにした。

 加藤良夫・南山大法科大学院教授(医事法)は「医師同士がかばい合い、チェック機能が働かない体質があるために、未然に防ぐことができなかった」と指摘し、「防止のためには、医師資格を持っていれば、どんな分野の手術でもできる現行制度の見直しが必要だ」と話す。

 医師は良心に従い、能力を発揮して医療行為に尽くしている。だが、ひとたびこうした事件が起こると、医療全体の信頼を揺るがしかねない。専門外で能力のない医師による手術を規制する方策を法改正を含め、早急に検討する必要がある。

(奈良)山本病院元理事長 あす判決 12.6.21

(読売新聞 2012.6.21)

 大和郡山市の医療法人雄山会「山本病院」(廃院)で2006年6月、肝腫瘍の摘出手術を受けた男性(当時51歳)が死亡した事件で、業務上過失致死罪に問われた元理事長山本文夫被告(54)の判決が22日、地裁で言い渡される。検察側は「肝臓手術の経験や能力がないのに執刀し、過失は重大で悪質」として禁錮3年を求刑。弁護側は「別の医師が執刀し、被告に注意義務違反はない」と無罪を主張している。(初田直樹、森安徹)

 過失の有無や手術と死亡の因果関係が主な争点。公判で、検察側は「被告は興味本位で無謀な手術を行い、大量の出血を引き起こし死亡させた」と主張。弁護側は「手術と死亡との因果関係が立証されておらず、心筋梗塞や心不全が死因の可能性がある」と反論した。

 公判は計16回開かれ、証人約20人が出廷。元副院長は法廷で、「被告は手術前、『(肝臓手術の)経験はないが、できる』と話していた」と証言した。

 起訴状では、山本被告は男性の腫瘍を肝臓がんと誤診し、高度な専門性が求められる腫瘍摘出の経験や技術もないのに不要な手術を行い、肝静脈などを傷つけ失血死させた、としている。

 同病院を巡っては、山本被告らが05-07年、生活保護受給者の患者8人の心臓カテーテル手術で血管を拡張させるステントを使ったとする虚偽の診療報酬明細書を作成、計830万円の報酬をだまし取った疑いが判明。この捜査過程で業務上過失致死事件が明らかになった。同被告は詐欺罪で懲役2年6月の判決が確定し、服役している。

◇公判のたび霊前報告 男性の父親

 「ここに死んだ長男もいたら、どんなによかったか」。死亡した男性の父親(86)は今月上旬、愛媛県愛南町の自宅で1枚の写真を見てつぶやいた。5月、帰省した次男の孫らと食卓を囲んだ時の写真だった。

 父親は朝夕に必ず、仏壇に手を合わせる。「自分にはどうにもできない」と傍聴はしていない。だが、公判のたびに地検から受ける説明を霊前に報告し、日記に記してきた。

 「二度と同じような被害者を出してほしくない。そのためにも、長男にいい報告ができるようになれば」と願い、判決を待つ。


熊本大病院で点滴液漏れ事故、乳児の指先壊死 12.6.21

(読売新聞 2012.6.21)

 熊本大付属病院(熊本市)は20日、熊本県内の男の乳児に対して今年2月に行った生体肝移植手術の際、点滴液が血管から体内に漏れ出し、右足の親指の先が壊死(えし)する事故があったと発表した。猪股裕紀洋(ゆきひろ)病院長は「申し訳ない。補償を含めて誠意を持って対応していきたい」と話している。

 病院長によると、点滴はカルシウムや水分補給などが目的で、右足の甲から行った。10時間を超す手術終了後、スタッフが右足の親指が腫れているのに気づいた。症状は悪化し、約2か月後に第1関節から先が欠落。点滴の薬液に含まれていた塩化カルシウムが、親指の壊死の原因になった可能性があるとみている。


バリウム飲み体調不良…胃がん検診後、女性死亡 12.6.21

(読売新聞 2012.6.21)

 滋賀県東近江市は20日、委託事業として14日に実施した総合健診の「胃がん検診」で女性(57)が体調不良を訴えて入院し、20日朝に死亡した、と発表した。

 市は同日、厚生労働省に報告した。市によると、女性が入院していた病院は死因を公表していないという。

 市の発表によると、検診は市御園コミュニティセンターで行われ、107人が受診。女性はバリウムなどを飲んだ後、エックス線検査中に気分不良を訴えたという。女性は救急車で病院に運ばれ、入院したが、市に20日朝、女性が死亡したとの情報が寄せられ、家族に確認した。

 市や検査を行った公益財団法人「県健康づくり財団」によると、女性は2005年からこれまで胃がん検診を4回受けている。09年にも同様に体調を崩したが、女性が14日の検診前に提出した受診表には記載されていなかった。

 この日、記者会見した市健康福祉こども部の木村太津男部長は「女性が亡くなった経緯について、きちんと調べたい」と話した。


「管理不十分」と賠償請求 精神科入院中の自殺めぐり 12.6.21

(共同通信社 2012.6.21)

 北九州市の小倉医療センター精神科に入院中だった女性=当時(28)=が昨年12月、ヘアバンドで首つり自殺をしたのは病院の管理が不十分だったのが原因だとして、母親らが20日までに、病院を運営する国立病院機構に約8千万円の損害賠償を求める訴訟を、福岡地裁小倉支部に起こした。

 訴状によると、女性は自殺願望が強く自傷行為を繰り返したことから、昨年11月17日、閉鎖病棟に入院。12月12日、ヘアバンドをドアノブにかけて首つり自殺を図り、翌日に死亡した。

 自殺を図る約1時間半前に、自殺の危険性が高まっていると判断した母親が「注意してほしい」と主治医に電話で頼んだが、病院側はひも類を排除するなどの防止策を取らなかったとして、母親らは「注意義務に違反した」と主張している。

 母親は取材に「娘には治療の意志があり、退院後に結婚を控えていた。自殺を防ぐため、信頼して預けたのに亡くなり、やるせない」と話した。

 病院は「裁判の中で事実関係を明らかにしていくので、現時点でのコメントは控えたい」としている。

山口・術後死亡女性の遺族、済生会山口総合病院を損賠提訴 12.6.20

(毎日新聞社 2012.6.20)

 山口市の済生会山口総合病院で気管切開手術を受けた美祢市の女性(当時68歳)が死亡したのは、手術後、呼吸管理用として気道に挿入されたカニューレ(管)が気道から抜けたためだとして、女性の遺族が同病院を運営する社会福祉法人恩賜財団済生会=東京都=を相手取り、約3763万円の損賠賠償を求める訴えを山口地裁に起こしたことが19日、分かった。

 訴状は6月6日付。それによると、女性は11年9月23日、脳室内出血などで同病院に入院。翌月7日に気管切開手術でカニューレを挿入し、集中治療室(ICU)で呼吸管理を受けていた。同日夜、看護師2人が女性の体を動かした際、何らかの原因でカニューレが気管から抜け、低酸素脳症となって死亡したとしている。

 遺族側は「カニューレが正常位置から移動することのないよう管理する注意義務がICUの看護師にある。事故は看護担当者の管理上の過失で発生した」と主張している。病院側は「訴状が届いていないので詳しいことは分からない」としている。

元薬剤師に有罪判決 誤った調剤で女性死亡 12.6.18

(共同通信社 2012.6.18)

 毒薬指定されている薬剤を誤って調剤し、服用した75歳の女性を死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた薬局の元薬剤師で千葉県野田市の無職吉田玲子(よしだ・れいこ)被告(65)に、さいたま地裁は15日、禁錮1年、執行猶予3年(求刑禁錮1年)の判決を言い渡した。

 小坂茂之(こさか・しげゆき)裁判官は判決理由で「薬局の管理薬剤師でありながら、誤投薬を患者に知らせなかった。生命や健康を預かる使命を放棄しており、強い非難に値する」と指摘。執行猶予を付けた理由として「薬局の誤投薬事故の防止体制に不備があった。遺族に賠償金を支払っている」と述べた。

 判決によると、2010年3月25日、埼玉県越谷市の調剤薬局で胃酸中和剤を調剤する際、薬を自動で包装する機器を使い、誤って毒薬指定の薬剤を処方。4月1日にミスに気付いたが、服用中止の指示をせず、7日に女性を中毒死させた。

 薬局の当時の男性経営者は、調剤ミスを防ぐ注意義務を怠ったとして、業務上過失致傷容疑で書類送検されたが、嫌疑不十分で不起訴になった。


東京医大病院 心臓治療で傷? 高齢患者が死亡 12.6.12

(毎日新聞社 2012.6.12)

 東京医科大病院(東京都新宿区)で4月、心臓から肺に血液を送り出す肺動脈にカテーテルを挿入された心臓疾患の高齢女性患者が、直後に肺胞出血を起こして死亡していたことが分かった。同病院は予期できない事態だったとして「現時点では医療過誤とは考えていない」と話している。一方で「カテーテルの先端部分が肺動脈を傷つけ、出血した可能性が高い」と認めており、病理解剖して原因を調べている。

 同病院によると、死亡した患者は心臓弁膜症を患い、循環器内科の医師が手術前の処置としてカテーテルを挿入した。相馬孝博・安全管理室長は取材に対し「カテーテル挿入で肺動脈を損傷しても大量出血する例は極めてまれ。何らかのアレルギー反応で出血しやすい状態になっていた」との見解を示した。

インプラント治療で障害421件、神経まひ4割 12.6.1

(読売新聞 2012.6.1)

 歯科医院などで受けた人工歯根(インプラント)を埋め込む治療が元で、顎や唇のしびれやまひなどの障害が生じ、のちに歯科大病院などで治療が行われた例が2009-11年の3年間に421件あったことが日本顎(がく)顔面インプラント学会の調査でわかった。

 インプラントに関する健康被害の全国調査は初めて。

 同学会は大学など公的病院の口腔(こうくう)外科医らが中心になり運営。調査は、同学会認定の研修施設79か所にアンケートし、74施設(回答率94%)から回答を得た。

 顎の骨に埋め込んだインプラントのため生じた神経まひが158件と4割近くを占めた。上あごの骨を突き抜けた例も63件あった。細菌感染や内出血など重い症状を伴うケースも少数みられた。


感染症治療薬過剰投与、男性死亡 遺族と300万円支払いで和解 /岐阜・中津川市 12.6.1

(毎日新聞社 2012.6.1)

 中津川市民病院の整形外科で、市内の男性患者(当時70歳)に感染症治療薬「クラビット」を過剰に処方したたとして、市は31日、男性の遺族に損害賠償金300万円を支払うことで和解したと発表した。男性は、腹膜炎による敗血症で死亡したが、過剰投与との因果関係は不明という。

 男性は昨年1月25日、市民病院皮膚科に入院。化膿(かのう)性椎間板(ついかんばん)炎と診断されて、整形外科に移った。同2月25日に退院する際、「500ミリグラムのクラビットを1日1錠服用」と処方された。通院治療中も同量の薬を飲み続け、3月8日から嘔吐(おうと)などの症状が出たが、継続して計約2カ月にわたって、服用を続けた。

 同4月21日に人工透析の治療を受けていた別の病院で「クラビットの長期投与による薬物中毒」と診断されて入院。5月11日に容態が急変し、「大腸に穴が開き、腹膜炎による敗血症」のため死亡したという。

 クラビットは、腎機能が著しく低下している患者に過剰投与すると危険が伴うため、「2日間500ミリグラム投与したら、その後は1日おきに250ミリグラム」が適量とされているという。

 市は「男性医師の思い込みで過剰投与となる処方箋を出した」と過失を認めている。

乳がん検診で圧迫され骨折、市が賠償金払う 12.6.1

(読売新聞 2012.6.1)

 昨年11月、秋田県能代市で乳がん検診を受けた市内の60歳代女性が、マンモグラフィー撮影の際に胸部を圧迫され、あばら骨を骨折していたことがわかった。

 同市健康づくり課によると、女性は検診から4-5日後、「痛みがとれない」と市に電話で相談した。市の勧めで市内の病院を受診したところ、骨折と診断された。撮影装置の板で胸部を圧迫したことが原因とみられる。女性のけがは40日ほどで完治したという。市は5月、治療費と慰謝料計約15万8000円を損害賠償として女性に支払い、和解した。同課の佐藤金弥課長は「検査は通常通りで、痛みが強い際は合図をするよう担当技師も事前に説明していたが、女性には苦しい思いをさせてしまった」と陳謝した。


(山梨)放射性医薬品過剰投与、第三者委設置へ 12.6.1

(読売新聞 2012.6.1)

 市立甲府病院(甲府市)で放射性医薬品が過剰投与された問題で、甲府市は31日、再発防止策や医療の安全態勢を探る第三者調査委員会を設置する方針を示した。宮島雅展市長の定例記者会見で、同病院の早川淳事務局長が明らかにした。

 委員会は、外部の医師や看護師、弁護士、病院運営の専門家らで構成。被害者側は問題の真相を究明する委員会の設置を求めているが、早川事務局長は「基本的には医療の安全態勢を点検・検証してもらうが、その中で原因究明という部分にも触れてくるのではないか。できるだけ早い時期に設置したい」と述べた。

 一方、同病院の放射線技師2人(1人は自殺)が5月に書類送検されたことに関連し、宮島市長は会見で「私を含めて関係者の処分はしなければならない」と改めて説明。ただ、「ある程度の結果が見えないと、どういう処分をしていいのか分からない」とし、甲府地検の判断を見守る意向を示した。


患者死亡で賠償命令 群馬、腫瘍の処置に過失 12.5.21

(共同通信社 2012.5.21)

 脳腫瘍の適切な処置をしなかったため、患者の女性=当時(77)=が約1年後に死亡したとして、女性の遺族が、病院を運営する老年病研究所(前橋市)などに損害賠償を求めた訴訟で、前橋地裁は18日、同研究所の過失を認め、約220万円の支払いを命じた。

 西口元(にしぐち・はじめ)裁判長は、検査で腫瘍を発見したにもかかわらず、すぐに他の医療機関を受診するよう勧めなかったとして、過失を認定した。

 判決によると、2005年2月、老年病研究所付属病院の医師が女性を診察、腫瘍を発見したが、すぐに悪化すると判断せず、女性と家族に経過をみるよう説明。その後腫瘍が増大し、約1年後に女性は多臓器不全で死亡した。


鳥取大病院医療ミス 2審も賠償命令 男児側に2億530万円 広島高裁松江支部 12.5.17

(毎日新聞社 2012.5.17)

 鳥取大医学部付属病院(鳥取県米子市)の医療ミスで脳に障害が残ったとして島根県内の男児(11)と家族が、同病院に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が16日、広島高裁松江支部であった。中野信也裁判長は、1審に続いて病院側の過失を認め、鳥取地裁米子支部判決より約20万円増額となる約2億530万円の支払いを命じた。

 判決によると、生後9カ月だった男児は02年2月、急性細気管支炎で同病院に入院。血中酸素濃度に異常が出ると警報音が鳴る装置が着けられた。その後心肺停止となったが、看護師が気づくまで13分間かかった。この間、脳への酸素供給が一時止まり、低酸素脳症による障害が残った。

 1審判決は当時の状況について、「警報音は鳴っていなかったが、鳴らないことも想定した監視措置を取っていなかった」と病院側の過失を認定。男児側が求めた賠償額の9割の支払いを命じた。

 中野裁判長は、検証結果などから「装置が事故時に限って作動しなかったことは極めて不自然」と警報音の作動を認めた。さらに、警報音は予測不能な不具合で鳴っておらず、過失はなかったと主張した病院側に対し、「医師、看護師の誰も気づかず、重大な落ち度であったと言わざるを得ない」と厳しく指摘した。

 判決後、同病院の担当者は「判決文を見ていないので、現時点でのコメントを差し控える」と答えた。男児側の弁護士は記者会見し、「ほぼこちらの言い分を認められた判決と考える」と話した。

こども病院手術中ミス 兵庫県が3268万円賠償 男児に後遺症、和解成立 12.5.17

(毎日新聞社 2012.5.17)

 10年1月に県立こども病院で当時3歳の難病の男児(神戸市須磨区)が手術中のミスで左足に後遺症が残ったとして、両親が県に対して損害賠償を求めていた問題で県は16日、両親側に賠償金約3268万円を支払うことで和解が成立したと発表した。

 県によると、男児は生まれつき腸の働きが機能しない難病「ヒルシュスプルング病」だった。10年1月、同病院で腸の一部を切除する手術を受けた際、固定していた男児の左足が器具からずれ、ふくらはぎが圧迫された状態となった。約12時間に及んだ手術終了間際に医師が固定器具からずれていたことに気付いた。男児は左足に知覚障害や歩行障害、足首が曲がりづらくなるなどの後遺症が残ったという。両親が昨年7月、県に対して約4400万円の損害賠償を求めた。

 岡本周治・県病院事業副管理者は「患者に対して安全で安心な医薬の提供に努める中で、このような事案が発生したことについて大変申し訳なく思っています。今後、より一層医療安全対策を充実し、再発防止に努めてまいります」とコメントした。

医療事故に3千万円支払い 兵庫県、男児に歩行障害 12.5.16

(共同通信社 2012.5.16)

 兵庫県は16日、県立こども病院(神戸市)で2010年、手術中に当時3歳だった男児の左足に障害が残る医療事故が起きたとして、両親に約3300万円の解決金を支払うと発表した。

 県によると男児は10年1月、腸閉塞(へいそく)を引き起こす病気で手術を受けた。その際、器具の不具合で誤って左足が長時間圧迫され、手術後に左足の変形と歩行障害が残ったという。手術自体は成功した。

 両親が11年7月、損害賠償を請求。県は手術中に器具の確認を怠ったことが原因と判断した。

 岡本周治(おかもと・しゅうじ)県病院事業副管理者は「大変申し訳ない。再発防止に努める」とコメントした。


吸引分娩で指針逸脱 診療記録の不備も 12.5.15

(共同通信社 2012.5.15)

 出産で赤ちゃんが重い脳性まひになった場合、医師側に過失がなくても補償金が支払われる「産科医療補償制度」を運営する日本医療機能評価機構は14日、これまでの発症事例のうち79件を分析した結果、「吸引分娩(ぶんべん)」で学会の指針を逸脱したケースや、診療記録の不備が目立つとする報告書を公表した。

 自然分娩での出産が困難な際に吸引カップを用いる「吸引分娩」は、赤ちゃんへの悪影響を避けるため日本産科婦人科学会などが指針で、1回の分娩での実施時間(20分以内)や回数(5回以内)を定めている。しかし報告書によると吸引分娩を実施した19件のうち時間超過が3件、回数超過が2件あった。

 機構が医療機関に求めている、陣痛や新生児の状態などに関する診療記録の記載に不備があったのは31件に上った。

 一方、胎盤が子宮からはがれる「常位胎盤早期剥離」が20件あり、このうち在宅中に腹痛や出血などの変調に気付いた妊婦が医療機関に連絡するまでに30分以上かかったケースが9件あった。機構は「胎盤剥離が発症すると、母子ともに急速に状態が悪化する。異変に気づいたら早期受診が重要だ」と注意を呼び掛けている。

 機構はこれまでに312件を審査、287件の補償が決まった。報告書の公表は昨年8月に続き2回目。


手術ミスで体内にガーゼ 40代女性、輪島市を提訴 12.5.9

(共同通信社 2012.5.9)

 石川県輪島市の市立輪島病院で手術を受けた際に医師がガーゼを除去し忘れ、体内に残ったとして、同市の40代女性が市や執刀医などを相手取り、約1980万円の損害賠償を求め金沢地裁輪島支部に提訴することが9日、分かった。病院側は手術ミスを認めている。

 訴状などによると、女性は1997年9月に右卵巣腫瘍の摘出手術を受けた。2006年ごろから耳鳴りやめまいが生じ、11年6月にあらためて受診したところ、卵巣腫瘍と診断された。同年7月に手術したが、卵巣腫瘍は見つからず、小腸などに癒着した直径約9センチの腫瘤(しゅりゅう)とガーゼが見つかった。腫瘤摘出の際には小腸も一部切除した。

 病院によると、手術後に女性側に謝罪したが、示談はまとまらなかった。

 女性の夫によると、ガーゼを除去し忘れた医師からの謝罪はないという。

 同病院は「患者の今後については、経過観察を続けるなど誠意を持って対応したい。安全管理を徹底的に再確認し、再発防止に努める」としている。

検査ミスで両脚まひと提訴 松山の男性、賠償請求 12.5.7

(共同通信社 2012.5.7)

 松山市の松山城東病院で医師が誤った検査をした結果、両脚がまひするなどの症状が残ったとして、松山市の男性(51)が2日までに、同病院を運営する医療法人社団慈生会に、介護費や慰謝料など計約2億2700万円の損害賠償を求め、松山地裁に提訴した。

 訴状によると、髄膜炎などで治療中だった男性は出血しやすい体質で、腰から針を刺して髄液を抜き取る検査をすると血腫ができる危険性があった。それにもかかわらず、医師は2007年7月、2回にわたって男性に検査を実施。

 男性は直後から背中や腰の痛み、脚のしびれを訴えたが、適切な治療を受けられず、両脚がまひするなどの症状が出た。

 男性はその後、別の病院へ転院し、脊髄に針を刺したことによりできた血腫が胸から腰にかけて広がり、神経を圧迫していることが判明。男性は介護が必要な状態になったとしている。

 男性は「医師が誤診し、適切な検査と手術をしなかった結果、血腫を拡大させ後遺症を負った」と主張。慈生会は「弁護士に任せており、こちらから申し上げることはない」としている。

島根県立中央病院 携帯型認証端末を導入 看護師1人に1台、患者・薬剤の間違い防止に 12.5.5

(毎日新聞社 2012.5.5)

 県立中央病院(出雲市姫原4)は医療行為の際に患者や薬剤を間違えないよう、電子カルテ上の情報を機械的に照合する携帯型の認証端末を導入した。これまで看護師による声かけや目視で確認することが多かったといい、看護師からは「ミスを防げるため安心できる」との声が出ている。

 端末は、ポケットサイズ(縦15センチ、横9センチ、厚さ3センチ)のPDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)。看護師1人に1台ずつ配備され、(1)医療従事者(2)患者(3)薬剤――の3点に不一致がないかを機械的に判断できる。

 二次元コードの情報を端末が読み取り、電子カルテと一致すれば青色で「○」、不一致なら赤色で「×」と表示される。点滴を打つ場合、患者の腕に巻かれたリストバンドの二次元コードに端末を近づけ、間違っていないかを確認する。端末は電子カルテとリアルタイムでつながっており、医療行為の直前に医師の指示が変わったり、治療が急に不要になったりした場合も対応できるという。

 同病院は午前9時から1時間ほどのピーク時、看護師1人が4~5人の点滴を担当しなければならず、負担が大きかった。重大な医療事故は起きていないが、うっかりといった事例は複数確認されているという。

 伊藤千加子・看護師長は「これまではいくら確認しても不安だったが、これなら安心できる。看護師のストレスも減っていくのでは」と話す。

「治療で後遺症」 山形・置賜総合病院を元入院患者提訴 12.4.4

(毎日新聞社 2012.4.4)

 公立置賜総合病院(代表管理者・内谷重治長井市長)に入院した南陽市の60代男性が、治療の際の挿管で尿道を傷つけられ、後遺症になったとして、同病院組合に対して慰謝料など計約1985万円の損害賠償を求める訴訟を山形地裁に起こした。提訴は3月22日付。

 訴状によると、07年8月6日、男性がうっ血性心不全のため同病院に入院した際、尿量管理のためにカテーテルを挿入された。原告側は、その際に尿道が傷つけられ、尿道炎敗血症になったとしている。その後も病院が適切な治療を施さなかったため頻尿などの後遺症に悩まされ、生活や仕事などに支障が出ていると主張している。

 同病院は「訴状の内容を精査して対応したい」と話している。

「出産後妻死亡は医療ミス」 静岡の遺族、済生会を提訴 12.4.4

(毎日新聞社 2012.4.4)

 08年に妻(当時40歳)が出産後に死亡したのは静岡済生会総合病院(静岡市駿河区)の医療ミスだとして、同市に住む夫の会社員、大石芳裕さん(46)と長女(3)の2人が3日、同病院を運営する社会福祉法人「恩賜財団済生会」に慰謝料など約9100万円を求める訴えを静岡地裁に起こした。記者会見した芳裕さんは、「(妻は)何も処置されないまま亡くなった。病院からきちんとした説明もない」と話した。

 訴状によると、妻の精子(せいこ)さんは08年11月23日午後6時ごろ、同病院で長女を出産。出産前から最大で200近くに血圧が上昇し妊娠高血圧症候群の症状が出たが、病院は一度降圧剤を投与した以外は鎮痛剤を投与しただけで、適切な処置をしなかったとしている。精子さんは脳出血を起こし、翌24日午前8時に病室で死亡しているのが発見された。

 同病院は、「訴状が届いてから対応を検討したい」と話している。

男児死亡で医師を書類送検 モニタリング怠った疑い 12.4.3

(共同通信社 2012.4.3)

 福岡市博多区の整形外科医院で2010年4月、男児=当時(4)=が骨折の手術のために全身麻酔を受けた直後に心肺停止状態となり死亡した事故で、福岡県警は3日、適切な処置を怠ったのが原因として業務上過失致死の疑いで、手術を担当した男性医師(45)を書類送検した。

 県警によると、医師が呼吸を確保するためのチューブを挿管した直後に男児の容体が急変し、心肺停止状態に陥った。

 送検容疑は、10年4月9日、男児に心電図や血圧などを計測するモニターを装着せずに麻酔を施したため、容体の変化に気づくのが遅れた上、設備が整った別の病院に搬送するなど十分な救命措置を取らなかった疑い。

 男児の父親が病院から119番し、総合病院に搬送されたが、同年6月18日、多臓器不全で死亡した。

 医師は任意の聴取に対し「モニタリングしていれば早く気づいて手を打つことができた」と容疑を認めているという。

 男児は幼稚園で鉄棒から落ちてひじを骨折。注射を必要とする部分麻酔を怖がったため、医師の判断で全身麻酔を施したという。


患者死亡 業者、酸素開栓忘れ 直後に70代女性死亡 京都・山科の病院 12.3.27

(毎日新聞社 2012.3.27)
患者死亡:業者、酸素開栓忘れ 直後に70代女性死亡--京都・山科の病院

 京都市山科区の愛生会山科病院で今月20日、呼吸補助装置から酸素が供給できなくなり、装置を使っていた70代の女性患者が直後に死亡していたことが、同病院などへの取材で分かった。医療用酸素を納入する業者(伏見区)がホースの開栓を忘れたことが原因とみられる。病院は医師法上の「異状死」に当たる可能性もあるとして27日、京都府警山科署に届けた。

 病院によると、女性は肺炎で入院中だった。20日午前3時半ごろ、装置の酸素残量のアラームが鳴り、看護師が業者に連絡。業者が駆けつけて開栓したが、女性は同午前4時45分ごろ死亡した。

 業者によると、19日にホースを取り換えた際、作業後に開栓していなかったという。通常、病院職員の立ち会いで開栓を確認するが、同日は職員が不在で口頭で作業終了を連絡しただけだった。

1900万円支払い和解 やけど死亡事故で千葉市 12.3.27

(共同通信社 2012.3.27)

 千葉市立青葉病院で2008年、入浴中に熱湯を浴び全身やけどで死亡した女性患者=当時(79)=の遺族が損害賠償を求めた訴訟の控訴審は26日、市が和解金約1900万円を支払う内容で東京高裁(高世三郎(たかせ・さぶろう)裁判長)で和解した。

 昨年10月の一審千葉地裁判決は、病院側の過失を認め、同額の支払いを命じていた。一審判決によると、女性はひざの手術を受けるために入院していた08年11月、1人で入浴中に全身にやけどを負い、翌日死亡した。


青森の病院で手術ミス ぼうこうに穴開き男性死亡 12.3.22

(共同通信社 2012.3.22)

 青森県むつ市のむつ総合病院で昨年4月、同市の80代の男性患者がぼうこう腫瘍切除手術を受けた際、医師のミスでぼうこうに穴が開き、死亡する医療事故が起こっていたことが22日までに分かった。

 病院は今年2月に男性患者の遺族に損害賠償金1600万円を支払い、和解したが、医療事故について1年近く公表していなかった。

 同病院によると、昨年4月21日、40代の泌尿器科の男性医師が男性患者のぼうこうの腫瘍を尿道から管を通して削り取る内視鏡手術を行った際、ぼうこうに穴が開いた。

 患者は手術の翌日に合併症による肺水腫で死亡。医師は手術ミスを認め、病院側も遺族に謝罪、その後、示談の交渉が続いていた。

 1年近く公表しなかった理由について、同病院は「遺族の要望によるもの」としている。


[医療安全情報] PTPシートのまま内服薬を誤飲する類似例等について注意喚起 12.3.21

(厚生政策情報センター 2012.3.21)

医療事故情報収集等事業 医療安全情報No.64(3/15)《日本医療機能評価機構》

  日本医療機能評価機構は3月15日に、医療安全情報No.64を公表した。今回は、2011年に提供した医療安全情報として、2011年1月-12月(医療安全情報No.50-No.61)のタイトルを総覧。そのうち、No.50の手術部位の左右の取り違え(第2報)、No.54の体位変換時の気管・気管切開チューブの偶発的な抜去、No.57のPTPシートの誤飲については、類似の事例が発生していることから、特段の注意を呼びかけている(p1参照)。

  No.50の「手術部位の左右の取り違え(第2報)」は、脳挫傷の患者に対し右前頭部の急性硬膜下血腫を伴う脳ヘルニアと診断しながら、術者が単独で左前頭部にマーキングを行って手術を開始、術後に瞳孔を確認して左右間違いに気づいたというもの。

  No.54の体位変換時の気管・気管切開チューブの偶発的な抜去は、人工呼吸器を装着した患者を3人の看護師が体位変換する際、人工呼吸器の保持が不十分であったため気管切開チューブが抜けたというもの。

  No.57のPTPシートの誤飲では、看護師がPTPシートのまま一錠ずつ切り離した状態で内服薬をカップに入れ、オーバーテーブルに置いて退室したあと、患者がそのまま飲んでしまい、食道入口部に止まっていた薬を内視鏡で摘出したという事例(p2参照)。

資料1 P1~P2(1.1M)
http://www.m3.com/tools/Document/WIC/pdf/201203_4/1740_3_1.pdf


千葉市が1900万賠償へ 入院患者がやけどで死亡 12.3.19

(共同通信社 2012.3.19)

 千葉市立青葉病院で2008年、入院中の女性患者=当時(79)=が入浴中に熱湯を浴びて全身やけどで死亡した事故で、千葉市は16日、東京高裁の和解勧告を受け入れ、遺族に賠償金約1900万円を支払うことを決めた。市議会が同日、補正予算案を可決した。

 この事故では、遺族が病院側に損害賠償を求めて千葉地裁に提訴。地裁は昨年10月、病院側の過失を認めて遺族に約1900万円を支払うよう命じたが、市は控訴し、東京高裁が2月27日に和解を勧告していた。

 一審判決によると、女性患者はひざの手術を受けるために入院していた08年11月、1人で入浴中に全身にやけどを負い、浴槽内で倒れているのを看護師に発見され、翌日死亡した。

装着器具ずれ男児死亡 愛知県の病院 12.3.19

(共同通信社 2012.3.19)

 愛知県春日井市の県心身障害者コロニー中央病院で1月、のどを切開して気管に気道確保のための器具を挿入した脳性まひの9カ月の男児が低酸素状態になり、心不全で死亡していたことが17日、分かった。器具がずれていたとみられ、病院は外部の医師らによる事故調査委員会を設置、さらに原因を調べている。

 病院によると、男児は脳性まひのため自力呼吸が困難で、1月17日にのどの切開手術を受けて「気管カニューレ」と呼ばれる器具を装着した。

 22日午後6時20分ごろ、体を硬直させて反り返らせる症状が見られ、その後に低酸素状態になった。看護師が体位を調整し、医師が気管カニューレを交換しても改善せず、同35分ごろ心停止した。

 同日午後7時25分ごろ、肺の周囲に空気がたまる気胸が生じていることがエックス線撮影で判明。針で空気を抜き、心臓マッサージでいったん蘇生したが、翌日の午前3時45分に死亡した。

 男児はこれまでもたびたび体を反り返らせることがあった。病院は男児が体を激しく動かしたため器具がずれたとみている。加藤純爾(かとう・じゅんじ)副院長は「反り返り後の処置は適切だった。何があっても対応できるよう訓練したい」と話している。


C型肝炎患者ら国提訴 「注射器感染を放置」 12.3.16

共同通信社 2012.3.16)

 北海道由仁町の診療所で1980年ごろまで注射器の使い回しが行われ、C型肝炎ウイルスに感染したのは国が指導を怠ったためとして、由仁町の患者ら約100人が15日、国に計約3億4900万円の損害賠償を求め札幌地裁に提訴した。

 訴えによると、由仁町の2カ所の診療所(廃院)は80年ごろまで注射器を使い回していた。51年には論文で連続使用による感染が指摘されたのに、国はその後も指導せずに放置したとしている。

 原告は2カ所の診療所を受診した40~90代の男女とその遺族。注射で感染し肝硬変や肝がんを発症したと主張している。

 提訴後に札幌市で記者会見した原告団の岩崎昭明(いわさき・てるあき)団長(66)は「注射器の使い回しで感染が広がったことを裁判で明らかにする。こんな医療を放置した国は許せない」と話した。

 国は「訴状が届いていないのでコメントできない」としている。

 北海道健康づくり財団(札幌市)の調査では、2000~09年の由仁町での肝がんによる死亡率は全国平均の2・44倍。


市立病院、7患者の患部など撮影したカメラ紛失 12.3.16

(読売新聞 2012.3.16)

 神奈川県大和市立病院は15日、皮膚科外来診察室で撮影に使用し、患者の個人情報を含むデータが保存されているデジタルカメラ1台を紛失したと発表した。

 情報の流出や二次被害は確認されていないが、同病院が個人データの紛失を確認したのは4か月以上後だった。

 同病院によると、カメラには昨年10月5日-同7日に皮膚科を受診した患者のうち、患部などを撮影された7人の氏名や年齢、病名などのデータが保存されていた。7日午後4時頃から11日午前11時頃までの間に紛失したが、盗難の可能性が高いという。

 皮膚科の女性医師が紛失に気付き、上司に報告したが、医療器具を管理する事務職員が個人情報が保存されていることに気付かず、管理職への報告はとどめていた。女性医師はその間の約1か月、私物のカメラを使用していた。

 その後、他の病院でカメラの紛失が発覚したことを受けて実施した内部調査で2月24日に判明。大和市立病院の五十嵐俊久院長は15日の記者会見で、「再発防止に全力を尽くす」と謝罪した。


過剰投与の技師長補佐死亡 自殺か、任意聴取現れず 12.3.15

(共同通信社 2012.3.15)

 14日午後4時50分ごろ、山梨県笛吹市の公園駐車場に止めた乗用車内で、甲府市立甲府病院放射線部の男性技師長補佐(54)=休職中=が死亡しているのを笛吹署員が発見した。

 県警によると、遺体に外傷はなく、遺書のようなものもあった。薬物自殺の可能性が高いとみて死因を調べる。子供への放射性物質の過剰投与をめぐり、県警が医師法違反容疑で捜査していた。

 補佐はこの日午後、県内の警察署で任意の事情聴取の予定だったが現れず、県警が捜していた。

 甲府病院によると、1999年から昨年にかけ、日本核医学会の推奨基準の40~2倍のテクネチウムの入った薬品を、腎臓検査を受けた15歳以下の84人に静脈注射した。

 南甲府署は、医師の資格がないのに薬の投与量を決めるなどの医療行為をした疑いで、昨年10月に病院や補佐宅を家宅捜索。その後も複数回にわたり補佐から聴取していた。南甲府署の清水順治(しみず・じゅんじ)副署長は「昨日連絡を取ったときは、変わった様子はなかったと聞いた。適正な捜査だったと考えている」としている。


手術でガーゼ置き忘れ 長崎大病院、昨年9月 12.3.13

(共同通信社 2012.3.13)

 長崎大病院(長崎市)が昨年9月、長崎市内の男性にペースメーカーを埋め込む手術をした際、止血用ガーゼを体内に置き忘れるミスがあったことが13日、同病院への取材で分かった。約2カ月後に取り除き、術後の経過は良いという。

 病院によると、男性に不整脈の症状があり、昨年9月にペースメーカーを埋め込む手術を実施。手術後数回、傷口から出血があったため、11月にペースメーカーを取り出した際、ガーゼ1枚が丸まった状態で見つかった。「ガーゼが出血の原因になった可能性もある」という。

 病院は「男性が公表を望まなかった」として報道機関にミスを発表していなかった。

 病院は「エックス線に写るガーゼを使用するなど、再発防止に努めたい」としている。


B型肝炎死亡、福大病院責任認め6280万円支払い 12.3.13

(読売新聞 2012.3.13)

 2009年、福岡大学病院(福岡市)で抗がん剤投与後に劇症肝炎を発症して死亡したのは、病院側がB型肝炎ウイルスの増殖を防げなかったのが原因として、福岡市の女性(当時46歳)の遺族が同大に約7900万円の損害賠償を求めた訴訟は13日、福岡地裁(増田隆久裁判長)で和解した。遺族の代理人弁護士によると、病院側が死亡への責任を認めて謝罪し、和解金約6280万円を支払う内容という。

 訴状などによると、B型肝炎のキャリアー(未発症の持続感染者)だった女性は08年、乳がんの手術を受け、09年1月から抗がん剤とステロイド剤を投与された。その後劇症肝炎を発症するなどし、同5月に死亡した。


元理事長がミスで死亡否定 山本病院・患者死亡事件 12.3.5

(共同通信社 2012.3.5)

 奈良県大和郡山市の「山本病院」(廃院)で2006年、肝臓手術を受けた男性患者=当時(51)=が死亡した事件で、業務上過失致死罪に問われた元理事長で執刀医だった山本文夫(やまもと・ふみお)被告(54)=詐欺罪で服役中=の公判が2日、奈良地裁(橋本一(はしもと・はじめ)裁判長)であった。被告人質問で山本被告は「(術中は)十分に止血した」と述べ、手術ミスによる死亡を否定した。

 山本被告は死因について、手術とは関係のない心筋梗塞の可能性があると主張した。

 一方、知識が乏しいのに腫瘍を悪性と誤診し、手術したとされる点について「今となっては愚かなことだと思う」と述べ、裁判官から「落ち度があったか」と問われると「はい」と答えた。

 起訴状などによると、山本被告は男性患者の肝臓の腫瘍が良性だったのに、悪性のがんと誤診。肝臓手術の経験が少ない上に、十分な人員や態勢を確保せずに手術に臨み、肝臓の血管を損傷させ、男性を出血により死亡させたとしている。

治療の12歳死亡 神戸大が和解金 大阪高裁 12.3.2

(毎日新聞社 2012.3.2)

 神戸大医学部付属病院で01年、悪性リンパ腫治療を受けた次男(当時12歳)が死亡したのは医療ミスが原因だとして、兵庫県内に住む母親が大学側に約4100万円の損害賠償を求めた訴訟が1日、大阪高裁で和解した。大学側が母親に和解金1500万円を支払う内容。1審の神戸地裁は請求を棄却したが、高裁は医師の過失を認め、和解を勧告していた。

 次男は01年11月13日に同病院の外来で抗がん剤「ロイナーゼ」を投与された後、容体が急変し、16日に急性膵炎(すいえん)などで死亡した。

 高裁は和解を前に、医師がロイナーゼを投与する際、生化学検査で血糖値を確認するなどして、副作用の危険性を調べる注意義務があったと指摘。次男の血糖値が極めて高いとの検査結果を見ずに投与したため、副作用の急性膵炎などで死亡したと認定していた。

 母親は「高裁の指摘を医療現場で生かしてほしい」と話し、神戸大側は「診療が不適切だったとは考えていないが、訴訟長期化や患者が亡くなられたことを考慮した」とコメントした。

名大病院、不妊治療薬投与ミス…有効成分少なく 12.2.29

(読売新聞 2012.2.29)

 名古屋大医学部付属病院(名古屋市昭和区)は28日、2010年8月からの1年間に、有効成分が決められた量よりも少ない不妊治療薬を、53人の女性患者に投与するミスがあったと発表した。

 健康被害や投与量不足による妊娠への悪影響はなかったという。

 ミスがあったのは、院内で作った、プロゲステロン(黄体ホルモン)膣(ちつ)座剤で、妊娠を促す薬効がある。08年4月、薬剤を詰めるカプセルを従来より小型のタイプに変更したが、薬剤師同士の引き継ぎミスなどにより、10年8月以降の製造分から、カプセル内の有効成分が足りなくなっていたという。

 11年8月に新たに配属された薬剤師が気付いた。名大病院は市昭和保健所などに報告するとともに患者に謝罪。製剤マニュアルの改定や、院内製剤の管理・評価の徹底など再発防止策をまとめたという。


手術ミス1億7000万賠償 名古屋地裁 藤田学園に支払い命令 12.2.18

(読売新聞 2012.2.18)

 愛知県豊明市の藤田保健衛生大学病院で脳動脈瘤(りゅう)の手術を受けた同県豊田市の女性(57)が、手術ミスで後遺症を負ったとして、病院を運営する藤田学園に約2億200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、名古屋地裁であった。堀内照美裁判長は担当医に過失があったと判断し、学園に約1億7000万円の支払いを命じた。

 判決によると、女性は2006年8月、金属製ワイヤを使い、脳動脈瘤内に破裂を防ぐための詰め物を入れる手術を受けた際、ワイヤが動脈瘤に穴を開け、出血性脳梗塞を発症、左半身にマヒが残った。判決は「担当医が慎重にワイヤを操作する注意義務を怠った」と判断。また、脳動脈瘤の一般的な治療法である別の手術方法の利点を十分に説明しなかったとして、「女性らは手術方法を選ぶのに熟慮する機会を与えられなかった。担当医には説明義務違反があった」と述べた。

 女性の夫(58)は「主張が通ったことはうれしいが、それよりも妻を健康な体に戻してほしい。手術をして後悔している」と話した。病院は「判決内容が分からないのでコメントできない」としている。


誤診で死亡、遺族に賠償へ 北九州市、和解案受け入れ 12.2.16

(共同通信社 2012年2月16日)

 北九州市立八幡病院で2009年、男性内科医の誤診で自営業男性=当時(31)=が死亡したとして、遺族が市などに損害賠償を求めた訴訟で、市は16日、福岡地裁小倉支部の和解案を受け入れる方針を決めた。次回期日の3月21日に和解する見通し。

 遺族側は慰謝料など約1億円を求めていたが、裁判所が示した6300万円の賠償額を市が支払うことで合意した。

 訴状などによると、男性は09年4月14日、胸の痛みなどを訴え救急搬送され、内科医に過呼吸症候群と診断された。

 その後も受診したが内服薬を処方されるなどしただけで、詳しい検査は行われず、同19日に別の病院で大動脈解離と診断され、同日死亡した。

 市は誤診を認め10年7月に公表。遺族側と示談交渉を進めたが賠償額で折り合わず、11年4月に遺族側が提訴していた。


峻くんの命・反響(上)出産事故 募る不信感 12.2.15

(読売新聞 2012年 2月15日)

 本紙記者の次男が心臓カテーテル検査の麻酔事故で意識不明となり、3か月後に亡くなった事例を題材に、医療事故を巡る現状について考えた連載「峻(しゅん)くんの命」(2011年12月19-28日、全8回)に対し、手紙やメールなど40件を超える反響が寄せられた。その多くが、医療事故の体験談。どれも長いものばかりで、患者側の苦悩が感じられた。

 東京都板橋区の女性(32)は11年夏、長女が仮死状態で生まれ、「脳死状態」となった。出産した病院の説明や対応に納得いかない思いを抱え、「峻くんのご両親と同じ」と語る。

 別の病院の新生児集中治療室(NICU)に入院中の長女は人工呼吸器につながれ、手を取っても人形のように反応がない。出産後、病院からは「原因不明」と説明された。「当時はわけがわからず、それを信じるしかありませんでした」

 しかし、それまで順調だっただけに納得いかず、カルテや分娩(ぶんべん)記録などを別の医療機関の産科医8人に見てもらった。

 両親によると、分娩監視装置で記録された胎児の心拍の経過を見て、医師8人全員が、出産の約1時間前に「遅発一過性徐脈」と呼ばれる異変があったことを指摘。一般に、その時点で適切な処置をして分娩を急がないと危険とされ、「これは判断ミス」と口にした医師も複数いた。

 この点を改めてただしたが、病院側は「問題ない」との見解で、外部委員2人を招いて開いた調査委員会の報告書でも、「標準を逸脱した対応はない」と結論づけられた。とはいえ、両親にしてみれば、公平な調査なのか疑問が消せない。

 「産科医療補償制度があるから大丈夫ですよ」。悲嘆に暮れていた出産直後、病院側からかけられた言葉だという。

 この制度は、出産事故で子どもが脳性まひとなった場合、総額3000万円の補償金が受け取れるもので、09年に導入された。出産後6か月から申請できる仕組みだが、病院側は申請を急ぎたい様子で、実際に申請するまで、何度も促された。

 「早く申請させ、訴訟を起こさせまいとしているように見えた。責任追及を逃れるための制度と思っているのでは」。両親は、かえって不信感を強めている。

 提訴を検討中という父親(33)は「きちんと反省して再び起こらないようにしてくれるなら、病院の対応に傷ついたり訴訟をしたりする人は減ると思う。でも、病院側の様子からは、世間体を気にしているだけで、反省はしていないように見える」と話した。


日本脳炎ワクチン誤接種、3カ月男児に、健康に問題なし2012.2.7

毎日新聞社 2012年2月7日

 秋田県横手市は6日、市が予防接種事業を委託している市内の医療機関が先月18日、生後3カ月の男児に本来の肺炎球菌でなく日本脳炎のワクチンを接種する医療ミスがあったと発表した。市によると、新生児に健康上の問題はない。

 市健康推進課は「3日に医療機関から誤接種の報告があり、健康被害の確認と再発防止のマニュアル作成などで(報告が)この時期になったとのことだった」としている。

過失認定に不服、岡崎市民病院訴訟で市控訴へ/愛知 2012.2.7

毎日新聞社 2012年2月7日

 岡崎市民病院で診察を受けた子宮外妊娠の女性(当時36歳)の死亡を巡り、病院の過失を認め市に6700万円の支払いを命じた名古屋地裁判決について、同市の柴田紘一市長は6日の記者会見で、名古屋高裁に控訴する方針を明らかにした。

 柴田市長は「説明責任を果たしており、判決の内容に疑義がある」と説明した。

 地裁判決は「医師は速やかに再受診を促す義務があった」と指摘した。

二審も330万円賠償命令 出産処置めぐり珠洲市に 2012.2.7

共同通信社 2012年2月7日

 石川県の珠洲市総合病院で2007年に出産した長女に障害が残ったのは、分娩(ぶんべん)監視を怠るなど医師の処置に過失があったとして、両親が珠洲市に1億660万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁金沢支部は6日、330万円の支払いを命じた一審金沢地裁判決を支持、両親の控訴を棄却した。

 判決理由で山本博(やまもと・ひろし)裁判長は「医師が分娩監視を続けたとしても、後遺症は防げなかった」などと指摘。その上で「胎児の低酸素状態を早く確認し、帝王切開していれば軽い後遺症にとどまった可能性もあった」とした一審判決を支持し、請求の一部を認めた。

 判決によると、長女は07年11月に緊急の帝王切開手術で新生児重症仮死の状態で出生。その後、金沢市内の病院に運ばれたが、脳性まひや呼吸不全などの障害が残った。


厚生病院で大腸手術の男性死亡 1800万円で遺族と和解 鳥取県 2012.2.3

毎日新聞社 2012年2月3日

 県は2日、県立厚生病院(倉吉市東昭和町)で昨年4月に琴浦町の男性(当時72歳)が直腸がんのため大腸の切除手術を受けた際、CT(コンピューター断層撮影)検査の結果を主治医が過小評価し腹膜炎で死亡させる医療過誤があったと発表した。当初は過失がない医療事故としていたが、遺族側から「注意義務違反があったのではないか」などと損害賠償を請求されたため、病院側が詳しく調査。11月に過失を認め、和解に向けて協議していた。慰謝料などとして県が約1800万円を支払うことでこのほど合意したという。

 男性は直腸がんのため昨年3月30日に入院し、4月1日に大腸の切除手術を行った。入院中の6日午前2時ごろに容体が急変。同日にCT検査を行ったところ、担当の放射線科医が腹膜炎の疑いを指摘した。だが、主治医(消化器外科)は下痢が続いていることや所見により感染性腸炎の可能性が高いと判断。薬の投与などの治療を行ったが、症状は改善しなかった。7日の朝に心肺停止となり、緊急手術を行ったところ、縫合不全による汎発性腹膜炎だったと判明。治療を試みたが、9日に死亡したという。

 前田迪郎院長は「(主治医は)他の医師のアドバイスを素直に聞くべきだった。診断と治療が遅れた点について、おわび申し上げる」と謝罪。「今後はこのようなことがないように、対応策などを病院内に配布して再発防止に努める」としている。

点滴ミス後に患者死亡 岐阜病院が遺族に謝罪 12.2.1

(共同通信社 2012年2月1日)

 岐阜市の公益社団法人岐阜病院(鈴木祐一郎(すずき・ゆういちろう)院長)で1月、入院中の女性患者=当時(82)=が点滴治療後に容体が悪化、死亡していたことが1日、病院への取材で分かった。病院はミスがあったと認め「死亡を早めた可能性がある」と遺族に謝罪した。

 病院によると、女性は統合失調症などで2004年から入院。昨年末に肺炎にかかり、今年1月に容体が悪化。胸に水がたまって呼吸困難になるなど重い症状が見られた。

 病院は1月11日、利尿剤を点滴して体から水を抜く処置を決定。高齢のため、利尿が急激に進んで体に負担をかけないよう、医師は体液を補う点滴液に利尿剤を薄めて徐々に投入することを看護師に指示したが、看護師が誤って利尿剤を薄めずに点滴したという。

 女性は点滴後に血圧が低下、約2時間後に死亡した。翌日、別の看護師が、カルテに記載された医師の指示と看護師の処置が異なることに気付き発覚。病院は遺族に経緯を説明、謝罪した。

 鈴木院長は取材に「点滴ミスが死の直接原因なのかは不明だが、指示通りにやれなかったことはミス。高齢患者で利尿が進み、血圧が低下した可能性は否定できない」とし「今後は看護師の技能向上に努めたい」と話した。

 遺族は「病院から同様の説明があり、納得している」としている。


誤投与の薬剤師ら起訴猶予 福岡地検、患者は死亡12.1.5

(共同通信社 2012年 1月5日)

 福岡市博多区の「さく病院」で血液製剤と誤って麻酔薬を投与し、入院中の男性患者=当時(68)=を死亡させたとして業務上過失致死容疑で書類送検された女性薬剤師(42)と、33歳と31歳の女性看護師2人について、福岡地検は4日までに、いずれも起訴猶予処分とした。処分は昨年12月28日付。

 地検は理由を「過失責任の程度や遺族の処罰感情、(投与後の処置や補償など)病院の医者の措置がとられたことなどを考慮した」と説明している。

 3人は、2008年2月14日、入院中の男性に医師が血液製剤投与を指示したのに、誤って麻酔薬を点滴。男性は呼吸障害を起こして8日後に死亡し、博多署が昨年1月、書類送検していた。


山形・県立中央病院医療事故 県、賠償金支払いで和解 11.12.3

(毎日新聞社 2011年12月3日)

 県立中央病院で08年2月、山形市内の40代男性への血管造影検査で男性の左腎機能を損傷した医療事故で、県は病院側の過失を認め、損害賠償金1036万円を支払うことで男性側と和解していたことが2日分かった。

 県病院事業局によると、男性は08年2月8日、同病院で足からカテーテルを使って造影剤を入れる検査を行った。この検査の際、病院側は本来静脈に入れるカテーテルを誤って動脈に入れ、左腎臓の動脈を損傷。その後、男性の左腎臓が機能不全となったことが判明した。【和田明美】


呼吸用のどの穴、看護師誤ってふさぎ患者窒息死  11.12.4

(読売新聞 2011年12月4日)
 愛媛県立中央病院(松山市)は4日、70歳代の男性入院患者ののどに開けられていた呼吸用の穴を、看護師が誤って塞ぐミスがあり、男性が窒息死したと発表した。

 看護師は男性が口や鼻でも呼吸できると誤認しており、主治医らとの間で情報共有ができていなかった可能性があるという。県警松山東署が、業務上過失致死容疑で調べている。

 同病院によると、男性は脳内出血で11月15日から入院。約10年前に受けた喉頭がんの手術以来、口や鼻で呼吸ができず、のど元に「永久気管孔」(直径2センチ)が開けられていた。

 病院では気管孔をガーゼで覆って異物混入を防いでいたが、ガーゼが外れがちだったため、20歳代の女性看護師が3日午後3時頃、代わりに通気性のない合成樹脂製の粘着シートを貼って穴を塞いだという。約1時間半後、巡回していたこの看護師が男性の呼吸が止まっているのに気づき、午後5時頃、死亡が確認された。

 看護師は11月25日から男性を担当。男性のカルテには「喉頭の摘出、気管切開あり」との記載はあったが、「永久気管孔」とは記されていなかったという。


業過容疑で歯科医書類送検 インプラント死亡事故で 11.8.1

2011年8月1日 共同通信社

 東京都中央区の歯科医院「飯野歯科」で2007年5月、人工の歯根を歯ぐきに埋めて義歯を付ける「インプラント」手術を受けた会社経営の女性=当時(70)=が死亡した事故で、警視庁捜査1課は1日、業務上過失致死の疑いで執刀医の男性院長(67)を書類送検した。

 送検容疑は、07年5月22日午後、インプラントの手術で女性の下顎の骨をドリルで削る際、誤って動脈を傷付けて大量出血を起こし、23日に窒息による低酸素脳症などで死亡させた疑い。

 捜査1課によると、院長は「そこに動脈があるとは認識していなかった。ミスはなかった」と容疑を否認している。

 院長は人工歯根を埋め込む穴の角度を誤り、動脈を傷付けたという。出血が激しくなったが、ガーゼで止血するだけで手術を続行。女性は出血や口の中の腫れで息ができなくなった。

 院長は事故当時、約40人のスタッフの中で唯一インプラント手術を行っており、約30年間で約3万本の症例があるという。


外科手術で無資格麻酔容疑 歯科医師ら2人書類送検 11.8.1

2011年8月1日 共同通信社

 千葉県がんセンター(千葉市)で、外科手術の際に歯科医が資格のない麻酔をしたとして、千葉県警は29日、医師法違反(無資格医業)の疑いで、センターの手術管理部長(47)と、歯科医師(38)を書類送検した。

 送検容疑は、昨年5月から4カ月半に医師ががん患者10人に資格のない全身麻酔などを行い、部長は適切に指導しなかった疑い。

 県警によると、2人は「(厚生労働省の)ガイドラインに従った」と容疑を否認している。医師は昨年5月からセンターに勤務。麻酔医不足を補うために採用されたとみられる。

 厚労省のガイドラインは、外科手術などの「医科麻酔」を歯科医が研修として行うことは認めている。しかし医師らは、研修の条件とされる学会への登録や報告をせず、患者の事前同意も得ていなかった。

 県警は今年2月に同容疑でがんセンターを捜索。医師が半年間に83件の無資格麻酔をしたことを確認した。厚労省もガイドラインに抵触するとの見方を示したと、説明している。

 千葉県がんセンターの中川原章(なかがわら・あきら)センター長は「誠に遺憾。捜査には誠意を持って協力する」とのコメントを出した。


千葉)麻酔最高難度含め83件 11.7.30

2011年7月30日 読売新聞

県がんセンター事件 歯科医師、研修登録せず

 県がんセンター(千葉市中央区)の歯科医師ら2人が医師法違反(無資格医業)容疑で書類送検された事件で、歯科医師が昨年5月から11月までに、容疑事実の10回を含めて計83件の麻酔を行っていたことが、県警への取材でわかった。最高難度「Dランク」の麻酔も行っていたとされる。研修医はDランクの麻酔を行えないとされ、県警は、背景に慢性的な麻酔科医不足があったとみている。

 同センターで昨年春、70歳代の男性は、がんの手術を受ける数日前、歯科医師の名前が記載された「手術麻酔同意書」を受け取った。歯科医師が、麻酔医ではないという説明はなかった。男性の切除手術は成功したが、「公立病院で起きるとは信じられない。何か起きていたらと思うとおそろしい」と振り返る。

 同センターで勤務経験のある医師は、「(歯科医が)麻酔を行うことは、内部でも問題視する声があったが、監督すべき麻酔科医も特に指示を出すこともなく、男性歯科医に単独で麻酔をやらせていた」と証言する。

 厚労省の「歯科医師の医科麻酔科研修のガイドライン」では、研修医は麻酔科医の立ち会いの下、研修として医科麻酔を行うことは認められている。歯科医師や同センターも「研修目的」と主張する。

 一方、県警環境犯罪課の発表などでは、歯科医師は2006年から08年に麻酔の研修を受け、日本歯科麻酔学会への研修医登録をしていなかった。さらに、ガイドラインは難易度ごとにA-Dに分け、Dランクの麻酔については、研修医は見学しかできないが、歯科医師はDランクの麻酔も行っていたという。患者への手術前の告知もなかったとされ、同課は「悪質性が高い」としている。

 同課によると、センターの昨年度の手術実績は約3000件だが、当時、正規の麻酔医は2人だった。

 歯科医師は「麻酔行為を行ったのは事実だが、ガイドラインにのっとっている」と容疑を否認。がんセンターの松本均事務局長は「手術中、指導医が少しの間離れることはあったが、つねに連絡が取れる状態だった」と説明し、患者への告知について、「術前に手術麻酔同意書を示して確認している」としている。

歯科医が全身麻酔、無資格医業容疑で書類送検 11.7.29

2011年7月29日 読売新聞

 千葉県がんセンター(千葉市中央区)で行われた外科手術で、医師が行うべき麻酔を歯科医師が行ったとして、県警環境犯罪課は29日、同センターの歯科医師(38)(千葉市緑区)と手術管理部長の医師(47)(千葉県市原市)を医師法違反(無資格医業)の疑いで千葉地検に書類送検した。

 発表によると、歯科医師は、麻酔業務などを管理する医師と共に昨年5月28日-同10月15日、同センターで、53-85歳のがん患者10人に計10回、歯科医師に認められていない全身麻酔をかけるなどした疑い。

 厚生労働省の指針(ガイドライン)では、歯科医師による医科麻酔は研修として行う場合は認められているが、県警によると、歯科医師らは、研修に必要な日本歯科麻酔学会への届け出をせず、患者からの同意書も得ていなかった。調べに対し、2人は「(麻酔は)ガイドラインにのっとって行った」と容疑を否認しているという。

患者死亡の県立病院捜索 業過致死容疑、宮城県警 11..7.29

2011年7月29日 共同通信社

 宮城県立循環器・呼吸器病センター(栗原市)に心筋梗塞で入院していた同市の無職男性患者(82)が死亡した事故で、宮城県警捜査1課などは29日、業務上過失致死の疑いで、センターと地方独立行政法人宮城県立病院機構を家宅捜索した。

 捜査1課などによると、男性は今月12日、別の病院から救急搬送され、意識不明の状態で入院した。24日夜に心肺維持装置の電源が抜けていることを知らせるアラームが鳴ったが、どの装置から音が出ているか特定できず容体が急変。装置の再起動にも手間取り、同日死亡した。

 異状死は24時間以内に警察への届け出が義務づけられているが、センターは「異状死という認識はなかった」などとして、2日後の26日に届け出ており、捜査1課は医師法違反の疑いもあるとみて調べを進める。

 捜査1課は家宅捜索で鳴動した装置などを押収し、男性が亡くなった集中治療室(ICU)を現場検証した。

 センターの担当者は「警察の捜査が始まるので、こちらからは何も言えない」と話した。


鼻の手術で中国人女性死亡 宮崎県警、業過致死疑いも 11.7.29

2011年7月29日 共同通信社

 宮崎市内の病院で6月、同市に住む20代の中国人女性が鼻の手術を受けた後、容体が急変して死亡していたことが28日、宮崎県警への取材で分かった。県警捜査1課と宮崎北署は、医療ミスの可能性もあるとみて業務上過失致死容疑を視野に捜査を進めている。

 宮崎北署などによると、死亡した中国人女性は就労目的で来日、宮崎市内の職場で働いていたという。

 同市内の病院から6月24日、鼻の手術をした女性が死亡したと届け出があった。女性は鼻の不調を訴え、同病院で手術を受けたところ、出血がみられ容体が急変して死亡した。難しい手術ではなく、死因ははっきりしていないという。

 同署は、病院側から事情を聴くなどして、女性の手術と死亡に因果関係があったかどうかなど詳しい経緯を調べている。


患者死亡の県立病院捜索 業過致死容疑、宮城県警 11.7.29

2011年7月29日 共同通信社

 宮城県立循環器・呼吸器病センター(栗原市)に心筋梗塞で入院していた同市の無職男性患者(82)が死亡した事故で、宮城県警捜査1課などは29日、業務上過失致死の疑いで、センターと地方独立行政法人宮城県立病院機構を家宅捜索した。

 捜査1課などによると、男性は今月12日、別の病院から救急搬送され、意識不明の状態で入院した。24日夜に心肺維持装置の電源が抜けていることを知らせるアラームが鳴ったが、どの装置から音が出ているか特定できず容体が急変。装置の再起動にも手間取り、同日死亡した。

 異状死は24時間以内に警察への届け出が義務づけられているが、センターは「異状死という認識はなかった」などとして、2日後の26日に届け出ており、捜査1課は医師法違反の疑いもあるとみて調べを進める。

 捜査1課は家宅捜索で鳴動した装置などを押収し、男性が亡くなった集中治療室(ICU)を現場検証した。

 センターの担当者は「警察の捜査が始まるので、こちらからは何も言えない」と話した。

装置の電源抜け患者死亡 宮城の県立病院 11.7.27

2011年7月27日 共同通信社

 宮城県立循環器・呼吸器病センター(同県栗原市)は26日、心筋梗塞で入院していた80代男性患者の心肺維持装置の電源コンセントが抜け、その後男性が心不全で死亡したと発表した。

 センターによると、男性は12日に別の病院から救急搬送され、意識不明の状態で入院。心肺維持装置をつけており、24日午後7時ごろに電源が抜けていることを知らせるアラームが鳴ったが、看護師がどの装置から音が出ているか特定できず容体が急変。その後も装置の再起動に手間取り、約2時間後に死亡した。

 センターは26日午後、警察に異状死として届け出た。異状死は24時間以内の届け出が義務付けられている。

 センターは電源抜けの原因は不明としているが、死亡につながったとして遺族に謝罪。26日に記者会見した佐藤尚(さとう・たかし)院長は「あってはならないことで申し訳ない」と陳謝し、異状死の届け出が遅れたことには「病院内で解釈の違いがあった」と釈明した。電源コンセントのロック式への変更や装置の操作マニュアルの整備など、対策を取るとしている。


ボンベの接続放置が一因か 医療ミスで厚労省が通知 11.7.26

2011年7月26日 共同通信社

 神戸市立医療センター中央市民病院で、腹部の手術後に酸素と誤って二酸化炭素を吸入させられた80代の男性が重体になった問題で、手術前にガスボンベと圧力調整機器が接続されたままだったことが25日、厚生労働省と病院への取材で分かった。

 同省によると、ボンベの種類が違えば対応する圧力調整機器に接続できない仕組み。吸入時に接続する手順を踏めば二重のチェックで事故が防げた可能性があり、厚労省は同日、使用時以外はボンベを機器から外すよう求める通知を都道府県に出した。

 圧力調整機器はボンベ内のガスを減圧するために使用。ボンベの種類を間違って接続する医療事故が福岡県八女市の病院など各地で起き、二酸化炭素と酸素で接続部の形状を変える防止策が取られていた。同様の対策を取っていた中央市民病院でミスがあり、厚労省は新たな対策が必要と判断した。

 一方、兵庫県警は担当した医師らの安全管理に問題があった可能性があるとみて、業務上過失致傷容疑で捜査。事故は14日午前0時半ごろ、腹部の大動脈瘤(りゅう)の手術後に起きた。

調剤ミスの薬局に賠償命令 2500万円、服用で死亡 11.7.22

2011年7月22日 共同通信社

 薬剤師が誤って調剤した薬を服用し、その後死亡した札幌市東区の90歳代の女性の遺族が約3800万円の損害賠償を求めた訴訟で、札幌地裁は21日、薬局を開設している医薬品販売会社の北海道保健企画(同市東区)と薬剤師に約2500万円を支払うよう命じた。

 薬局側は服用と死亡との因果関係を争ったが、判決理由で田辺麻里子(たなべ・まりこ)裁判官は「調剤ミスで必要のない薬を飲ませられ、副作用の脳梗塞を起こして死亡した」と述べた。

 判決によると、薬剤師は2008年6月、薬局で頻尿治療薬を求めた女性に対し、誤って血圧を下げるための錠剤180錠を調剤し、服用した女性は約3カ月後、副作用の脳梗塞で死亡した。

 錠剤の説明書には、脳梗塞を起こす恐れがあり、高齢者には慎重に投与するよう注意書きもあった。

 判決について薬局側は「コメントできない」としている。

酸素と間違え二酸化炭素、患者重篤…神戸の病院 11.7.21

2011年7月21日 読売新聞

 神戸市立医療センター中央市民病院(神戸市中央区)は20日、手術を終えた80歳代男性に酸素ではなく二酸化炭素を吸引させるミスがあったと発表した。

 男性は一時心肺停止に陥り、重篤という。

 同病院によると、男性は腹部大動脈瘤(りゅう)切迫破裂で13日夜から14日未明にかけて緊急手術を受けたが、術後、集中治療室(ICU)に運ぶ際、麻酔科医と看護師が二酸化炭素ボンベを酸素ボンベと取り違え、人工呼吸器に数分間接続した。

 酸素ボンベと二酸化炭素ボンベはほぼ同じ大きさで、酸素は黒、二酸化炭素は緑で色分けされている。

 北徹院長は「ご家族には大変申し訳ない。医療事故調査委員会を設け、原因究明や再発防止に努める」と謝罪した。


新生児植物状態 賠償訴訟、病院側争う構え…福岡 11.7.6

2011年7月6日 読売新聞

 医師らの経過観察が不十分で出産後に次女(1)が植物状態になったとして、福岡県糸島市内の次女と両親が、福岡市中央区の「九州医療センター」を運営する独立行政法人国立病院機構(東京都)を相手取り、約2億3000万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が5日、福岡地裁(増田隆久裁判長)で開かれた。

 「新生児を母親の胸に抱かせる『カンガルーケア』中の事故だった」との原告側の主張に対し、病院側は「原告らにはカンガルーケアは実施していない」と反論。請求棄却を求め、争う構えを見せた。

 病院側は「原告のケースは帝王切開だったので、出産直後に新生児と母親の素肌を合わせるような処置はしていない。ベッドに連れて行った時点で次女に異常はなく、漫然と放置もしていない」としている。

 訴状によると、母親(33)は2009年11月20日、同センターで次女を帝王切開で出産。約10時間後に助産師が次女を連れてきて、病室のベッドで母親の胸の上に乗せた。母親は意識がもうろうとした状態だったが、助産師の見回りも無いままその後に次女の容体が急変。心肺が一時停止し、低酸素性虚血性脳症で植物状態となった。


3病院受け入れ拒否73歳死亡、「たらい回し防止基準」不備 11.7.4

2011年7月4日 読売新聞

すでに患者5人 / 整形外科医不在 / 手術直後だった

 軽乗用車にはねられた富山市の女性(73)が、市内の3病院に受け入れを断られ、搬送先の高岡市内の病院で死亡した問題で、県は2日、富山市内の5総合病院の院長らを集めて緊急の連絡会議を開いた。

 「たらい回し」を防ぐため、県は今年4月から、新しい受け入れ基準の運用を開始したばかり。「基準が絵に描いた餅になっている」などと厳しい声も相次ぎ、医師不足や、基準の周知不足などの課題が浮き彫りとなった。

 受け入れを拒否したのは、輪番制でこの日夜間救急を担当していた富山市民病院と、県立中央、富山大付属の両病院。理由について「すでに救急患者を5人受け入れていた」(富山市民)、「整形外科の専門医が不在だった」(県立中央)、「医師が手術直後で、ベッドも満床だった」(富大付属)などと説明した。

 しかし、新基準では、「照会回数4回以上」か「医療機関への連絡開始から30分以上経過」した場合、富山医療圏内では、重篤患者向けの3次救急医療機関の県立中央病院が受け入れるか、搬送先を調整することになっている。

 このため、出席者から「受け入れられない場合があるから、3次のシステム(新基準)を作ったはず。それが機能しなかったのは、周知不足など病院にも責任がある」などと、県立中央病院へ批判の声が上がった。

 県立中央病院の飯田博行院長は「3次病院であっても輪番日以外に、当直以外の多くの医師を院内にとどめておくだけの人的余裕はない。今回、輪番日でないと手薄になってしまう弱点が出たのではないか」とし、「救急医療の『最後の砦(とりで)』として、早急にスタッフを招集するなど、連絡態勢を整えたい」と述べた。

 県消防課によると、女性は先月30日午後7時25分頃、富山市の県道を自転車で横断中に軽乗用車にはねられた。救急隊の現場到着時は意識があったが、富山市民病院のほか、県立中央、富山大付属の両病院も相次いで拒否。開始から約20分後の6回目の照会で、隣の高岡医療圏の厚生連高岡病院への受け入れが決まり、女性は搬送されたが、事故から約3時間後に死亡した。


受け入れ拒否2時間半、事故の車椅子の女性死亡 11.7.1

2011年7月1日 読売新聞

 さいたま市で29日夜、車椅子の女性(38)が乗用車にはねられ、30日に死亡した。

 女性は12の病院に受け入れを断られ、処置を受けた病院に搬送されるまで約2時間半かかっており、さいたま市南消防署は「搬送に2時間半もかかったのは異例。死亡との因果関係を検証する」としている。

 同消防署や埼玉県警浦和署によると、女性は同市見沼区大谷、無職星野美穂さん。29日午後10時15分頃、同市南区曲本の市道を1人で横断中に、市内の男性(73)が運転する乗用車にはねられた。救急車は同26分に現場に到着したが、受け入れを求めた8病院が「専門医がいない」、4病院が「処置が困難」として断ったという。受け入れ先がようやく決まり、搬送されたのは翌30日午前0時55分で、女性は同日午後2時頃に腰の骨折による出血性ショックで死亡した。

[医療安全情報] アレルギー、禁忌薬剤欄にきちんと記載し投与ミス防止を 11.6.20

2011年6月20日 提供:WIC REPORT(厚生政策情報センター)

 医療事故情報収集等事業 医療安全情報(6/15)《日本医療機能評価機構》

 日本医療機能評価機構は6月15日に、医療安全情報No.55を公表した。今回は、2006年から2009年に提供した医療安全情報のタイトルを列記(p1~p6参照)。そのうえで、2010年にも類似事例が発生しているとしている。たとえば、2010年に(1)アレルギーの既往がわかっている薬剤の投与:9件(p5参照)(2)小児の輸液の血管外漏出:8件(p2参照)(3)口頭指示による薬剤量間違い:6件(p5参照)― などが報告されている。(1)は、診療録の決められた場所に薬物アレルギー情報の記載がなかったため、禁忌薬剤を投与した事例だ。(2)は、薬剤添付文書上、輸液の血管外漏出に関する危険性の言及の有無にかかわらず、小児に対する点滴実施の際、輸液の血管外漏出により、治療を要した事例。(3)は、口頭指示の際、薬剤の単位や量、希釈の条件を明確に伝えなかったため、薬剤量を間違えた事例。

 このほか、インスリンについて含量の誤認や単位の誤解、処方入力の際の単位間違いなどの事例もおきている(p1~p6参照)。

 
資料1 P1~P6(その1:1.3M)
http://www.m3.com/tools/Document/WIC/pdf/201106_4/1561_5_1.pdf
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[医事紛争] ADR経験のある病院、紛争の早期解決に役立つとの高評価も 11.6.16

2011年6月16日 WIC REPORT(厚生政策情報センター)

医療裁判外紛争解決(ADR)機関連絡調整会議(第4回 6/13)《厚労省》

  厚生労働省が6月13日に開催した、医療裁判外紛争解決(ADR)機関連絡調整会議で配付された資料。この日も前回に続き、ADR機関からの事例紹介と、それに基づく意見交換が行われた。

 紹介されたのは、『愛媛弁護士会紛争解決センター』と『医療仲裁センター岡山』の2事例。愛媛弁護士会紛争解決センター運営委員会副委員長の田口構成員は「ADRを整備した平成22年3から9ヵ月で4件の紛争について申し立てがあったが、3件が不応諾、1件が調停取り下げ」となったことを報告し、迅速性の強調は好ましくないと分析している(p18-p31参照)。一方、医療仲裁センター岡山弁護士会の水田構成員は、平成21年9月のセンター設立以来、13 件の申し立てがあり、3件の応諾、2件の和解成立という実績を報告し、今後は申立件数の増加や応諾率のアップに取り組むとの姿勢をアピールしている (p32-p38参照)(p51-p144参照)。

 また、この日は小山構成員(日本病院団体協議会代表)から、「医療裁判外紛争解決(ADR)機関」に関するアンケート調査の結果も報告されている。調査は 1001病院を対象として、平成21年度に行われた(回答率は40.0%)。まず、ADR機関からの相談申入れがあったのは、わずか20病院(5.0%)に過ぎず、総件数は24件、病院が相談に応じたケースは13件となっている。相談申入れを受理しなかった理由は、(1)何度か説明の場を設けたが、高額な要求があり、話し合いでの解決は無理と判断(2)診療内容に問題がない(3)カルテ開示もせず患者の申立てだけでADRを行うのは裁判制度に屋上屋を重ねるもので、医療者の負担が増す-などさまざまだ。また、ADRを経験して良かった点として「維持紛争の早期解決に役立った」「患者の抱えた問題が整理されて医療者へ届く」などがある一方、悪かった点として「医療上の内容討論がない」「病院側にメリットはない」などの声もあがっている(p39-p50参照)。
資料1 P1~P50(その1:3.1M)
http://www.m3.com/tools/Document/WIC/pdf/201106_3/1559_3_1.pdf
資料2 P51~P144(その1:6.9M)
http://www.m3.com/tools/Document/WIC/pdf/201106_3/1559_3_2.pdf

高度障害残る医療事故「過失なし」で詳細発表せず…高知 11.6.16

2011年6月16日 読売新聞

 高知医療センターを運営する県・高知市病院企業団議会の臨時会、議員協議会が15日、同市池の同センターで開かれ、昨年10月1日-3月末に1027件(前年同期比85件減)の医療事故があり、そのうち1件は高度の障害が発生していたことが報告された。

 同センターでは、医療事故を、死亡した場合を最高とする5段階に分類。死亡や高度障害に至ったケースで、医師らの過失が疑われる場合は詳細を発表するとの内規があるが、畠中伸介企業長は「センター内で検討した結果、過失はなかった」とした。現在、外部の医師にも検証を依頼しており、結果を待って過失の有無を最終判断する。

 このほかの事故は、「入院日数の増加など」が生じた事例が8件。残りは患者自身の転倒や薬の飲み忘れなどで、「ほとんど身体に影響がない」(797件)、「検査が必要になった」(221件)といった事故が大半を占めた。


歯科医院に4千万賠償命令 抗菌薬使わず感染症「下顎骨骨髄炎」に 11.6.16

2011年6月16日 共同通信社

 抜歯後に抗菌薬を投与されず、感染症から顎の骨髄炎になったとして、名古屋市の40代男性が名港鈴木歯科医院(同市港区)に約1億8500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は15日、医院に約4千万円の支払いを命じた。

 判決理由で永野圧彦(ながの・あつひこ)裁判長は「強い痛みが持続していたことから感染症を疑い、抗菌薬を投与すべきだった。十分な予防措置をしなかったため、抜歯後、菌に感染、骨髄炎に進行した」と医院の責任を認めた。

 男性側は流動食しか取れなくなり、完全に労働能力を失ったと主張したが、永野裁判長は「労働能力への影響が大きいとは言えない」として、失われたのは35%と判断した。

 判決によると、男性は2004年8月、医院で親知らずの抜歯手術を受けたが、激痛で再受診。医院は消毒をし、鎮痛剤を処方しただけだった。その後、別の病院で「下顎(かがく)骨骨髄炎」と診断され、流動食しか食べられない状態になった。

 判決後、男性は「ミスが認められたのは満足だが、元に戻るわけではないのでやりきれない」と話した。医院側は「判決文を見ておらず、コメントできない」とした。


薬害C型肝炎 救済対象外の患者遺族、4200万円賠償求め提訴/京都 11.6.16

2011年6月16日 毎日新聞社

 手術で血液製剤「フィブリノゲン」が投与されC型肝炎に感染しながら、カルテがないことを理由に薬害肝炎救済法に基づく給付金が支給されない患者だった京都市内の男性の遺族2人が、国と田辺三菱製薬(旧ミドリ十字、本社・大阪市)に計4200万円の損害賠償を求めて京都地裁に提訴していたことが15日わかった。

 訴状などによると、男性は73年、京都市内の病院で右腕切断などの手術を受けた。93年にC型肝炎感染と診断された後、10年に肝臓がんのため55歳で死亡。カルテは残っていないが、当時、手術の際の止血剤としてフィブリノゲンが同病院に納品されていたことなどから、男性の手術にもフィブリノゲンが使われたとみられ、C型肝炎感染もフィブリノゲン投与が原因だと主張している。同社は「救済法の枠組みからすると、当社が被告とされる旨はないので、コメントは差し控える」、国は「個別具体的な案件についてはコメントを差し控える」としている。


熊本・ワクチン同時接種、2カ月の乳児死亡 再開後初報告 11.6.14

2011年6月14日 毎日新聞社

 熊本市は13日、市内の医療機関でヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンを今月3日に同時接種した生後2カ月の男児が、翌4日に死亡したと発表した。市によると、4月の接種再開後の死亡報告は全国で初めて。接種と死亡との因果関係は現時点では不明という。

 市によると、男児に基礎疾患はなかった。解剖の結果、死因は乳幼児突然死症候群の疑いが強いという。

 ヒブワクチンは細菌性髄膜炎などを予防する働きを持つが、他のワクチンとの同時接種後に死亡する乳幼児の報告が相次いだため、厚生労働省が3月に接種を一時見合わせた。同省が7件の死亡例を検証したところ明確な因果関係が認められず、ワクチンの安全性に問題はないとして4月から接種再開を認めていた。


装置接続ミスで心臓に空気 新潟県立病院、女性患者に 11.6.13

2011年6月13日 共同通信社

 新潟県立中央病院(上越市)は10日、同市の60代女性患者に対する2009年の心臓血管手術の際、人工心肺装置の接続ミスから心臓に空気が注入される事故が発生したと発表した。

 同病院によると、事故との因果関係は不明だが、女性は脳梗塞で後遺症を負った。新潟県は賠償金800万円を女性側に支払う方針。県は関係者の処分を検討している。

 女性は09年12月、急性大動脈解離で緊急手術を受け、人工心肺装置を使用したが心臓の血液が吸引されず、逆に1~2分間、空気が注入された。

 女性は手術前後に脳梗塞となり、視野がぼやけるなどの後遺症を負った。昨年3月に退院後もリハビリを続けている。

 同病院の矢沢正知(やざわ・まさとも)院長は「患者やご家族に心からおわび申し上げる。再発防止に全力を尽くしていきたい」としている。

経験者立ち会わずに執刀 患者死亡のロボット手術 11.6.8

2011年6月8日 共同通信社

 名古屋大病院(名古屋市昭和区)で昨年9月、ロボットを使って内視鏡を操作する胃の切除手術を受けた男性患者=当時(76)=が術後に死亡した事故で、病院は7日記者会見し、指導管理する経験者の立ち会いがないまま手術が行われた結果、執刀医が別の臓器を傷つけ、多臓器不全を招いたことが原因とする調査結果を発表した。

 松尾清一病院長は「再発防止に取り組む」とし、今後、遺族への謝罪や補償手続きを進める意向を示した。

 病院によると、ロボットは「ダ・ヴィンチ」と呼ばれる手術支援システム。医師が装置に映し出された患部の立体画像を見ながら、内視鏡のメスやはさみを遠隔操作する仕組み。

 報告書などによると、昨年9月8日の男性の手術にはロボット手術経験者が立ち会わず、執刀医は力が強いロボットの特徴を十分に理解せずに操作していた。その結果、過度に押さえた膵臓が裂け、消化力の強い膵液が漏れたため周辺臓器などを溶かしてしまったという。患者は多臓器不全で同13日に亡くなった。

 病院側によると、執刀医は手術翌日のCT検査で、膵臓断裂に気付いたが、専門医らとの詳細な検討はしなかった。「裂けた膵臓を摘出し、膵液漏れを抑えるなどの手術を実施すれば、助けられた可能性があった」としている。


がんと誤診し、男性の胃摘出 兵庫県立加古川医療センター 11.6.8

2011年6月8日 毎日新聞社

県立加古川医療センター:がんと誤診し、男性の胃摘出 /兵庫

 県は7日、県立加古川医療センターで3月10日、胃潰瘍の男性(73)を胃がんと誤診して胃の摘出手術をしたことを明らかにした。男性に後遺症などはないという。

 県病院局によると、事前の病理組織検査で標本を作る際、胃がんの男性(80)から切り取った組織を、誤って胃潰瘍の男性の患者番号が書かれたスライドガラスに載せてしまった。その結果、胃潰瘍の男性を胃がんと誤診し、手術で胃の3分の2を摘出したという。本来、この男性は摘出の必要はなかった。

 検査技師が組織とスライドガラスの番号を確認していなかったのが原因。摘出した胃からがん細胞が見つからなかったため、間違いが発覚した。検査は技師3人で行い、同センターでは1日に約200件の標本を作成しているという。同センターは再発防止策として、複数人での番号確認を徹底することにしている。


神奈川・小田原市立病院 「脳血管撮影で死亡」 南足柄の男性家族、市を損賠提訴 11.6.4

2011年6月4日 毎日新聞社

 小田原市立病院(同市久野)で脳血管撮影検査を受けた南足柄市の男性(当時62歳)が適切な措置を受けず死亡したとして、家族3人が市に約5287万円の損害賠償を求めて横浜地裁小田原支部に提訴していたことが3日、分かった。

 訴状によると、男性は09年4月8日、歩行困難と腰痛を訴え同病院に入院。20日に脳血管撮影検査を受けたが、意識が戻らなかった。頭部CT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像化装置)検査を受けたが、一度も意識が戻らず、28日に再発性脳梗塞(こうそく)で死亡。リスクを伴う脳血管撮影検査の必要はなく、早期にMRIで脳梗塞を発見すれば救命は十分可能だったとしている。

 同病院経営管理局は「弁護士と相談しながら、きちっと対応していくが、病院としては請求棄却を求めていく方針」と話している。


後遺症に慰謝料425万…藤沢市民病院、示談が成立 11.6.1

2011年6月1日 読売新聞

 神奈川県藤沢市の藤沢市民病院は31日、2009年に同病院で治療を受けて後遺症が残った市内の70歳代の男性について、慰謝料425万円を支払うことで示談が成立したと発表した。

 同病院によると、男性は09年9月に入院し、化膿(かのう)性脊椎炎と診断されて投薬治療を受けた。その後、炎症が広がり、10年3月に手術を受けたが、両下肢のしびれや、胸から腰にかけての運動障害などが残った。城戸泰洋病院長は、「きっちり検査すれば、炎症が広がらなかった可能性がある。診断した男性医師を含め、診療体制に不備があった」と話した。6月7日に始まる市議会定例会に関連議案が提出される。


分娩でミス、5カ月後死亡 長崎市立市民病院 11.6.1

2011年6月1日 共同通信社

 長崎市立市民病院は31日、昨年6月に分娩(ぶんべん)ミスで、男児が重度の仮死状態で生まれる事故があったと発表した。男児は約5カ月後に死亡した。分娩前、胎児を監視する体制に不備があり、容体の急変を見逃したのが原因として、市は家族に賠償する方針。

 病院によると、母親は妊娠41週目の昨年5月31日に入院。翌月2日午後9時20分ごろに胎児の心拍数が一時的に低下したが、その後回復したため、監視を強化しなかった。3日午前2時半ごろ、帝王切開で生まれたが、仮死状態だった。

 病院は、胎児の容体が急変したとみられる3日午前1時10分までの約1時間半、心拍数のモニターなどがされず、異常の発見が遅れたことが原因としている。鈴木伸(すずき・しん)院長は「約30分に1回は監視すべきだった。二度と繰り返さないようにしたい」と話している。




出産で重い障害、医療過誤一部認める 石川・珠洲市に賠償命令 11.6.1

2011年6月1日 毎日新聞社

 珠洲市総合病院で出産した際、病院側が適切な処置を怠り、産まれた長女に重い障害が残ったとして、長女と両親=いずれも金沢市=が同市に慰謝料など約1億2900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が31日、金沢地裁であった。中山誠一裁判長は、担当医の過失と後遺症との因果関係は認めなかったが、「適切に処置されておれば、早期に帝王切開手術が行われ、障害が軽くなった可能性がある」として原告側の請求を一部認め、同市に330万円の支払いを命じた。

 判決によると、長女の母は07年11月、胎動を感じなくなったため同病院に入院。帝王切開手術で出産した際、長女は仮死状態だった。現在も呼吸不全などで入院中で、重い障害が残っている。

 中山裁判長は、担当医が分娩(ぶんべん)監視装置を外し、胎児の状態を確認していなかったとして過失を認定。しかし、最初に胎児の心拍数などを検査した際、既に「脳神経系に障害を負っている可能性が高い」という結果が出たことなどから、担当医の過失と後遺症との因果関係は認めなかった。請求の大部分や両親への慰謝料なども認めなかった。



肺血栓と気づかず 手術後死亡。5720万円で遺族と和解…小田原市立病院 11.5.26

2011年5月26日 読売新聞

 神奈川県小田原市立病院は25日、40歳代の女性が子宮全摘出手術を受けた後に、肺血栓塞栓症を起こして死亡したと発表した。「手術後に十分な対応が取れなかった」として、5720万円を支払うことで遺族側と和解したという。

 同病院によると、女性は子宮腺筋症で、手術は昨年8月中旬に行われた。午後2時15分に手術が終わり、女性は病室に戻ったが、深夜に「息苦しい」と訴え、血液中の酸素の濃度が低下する症状がみられた。酸素を投与しながら経過観察したが、翌午前8時30分頃、容体が急変し、2時間後に死亡した。

 病理解剖の結果、死因は肺血栓塞栓症とわかった。

 記者会見した安野憲一副院長は「痛みなどは術後にみられる症状と判断し、肺血栓塞栓症に思い至らなかったようだ」と説明。「深夜の段階では、血栓が出ていたとしても小さいもので、急変した時に大きい血栓が肺に飛んだと考えられる」と述べた。

 中島麓院長は「十分な対応が取れず、重大な結果となり、心からおわびする」としたうえで、「医療ミスではない」と強調した。肺血栓塞栓症は、突然発症して短時間で重大な結果になることがあるためという。




子宮摘出手術で手術ミス 堺市、患者に600万円賠償 11.5.26

2011年5月26日 毎日新聞社

 堺市は25日までに、市立堺病院で女性患者(45)への子宮摘出手術でミスがあったとして、患者に600万円の賠償金を支払った。

 病院によると、07年3月に市内の女性が同病院で子宮内膜症による子宮摘出手術を受けた。その際、医師が女性の体内に一時的に残すガーゼについて、残す場所を誤った。このため、人工肛門を一時的に付けたり、別の手術を行わなければならなくなった。

 女性は昨年6月、病院に損害賠償を請求。先月、示談がまとまった。同病院は「単純なミスで申し訳ない。再発防止に努めたい」としている。




帝王切開で障害、堺市7000万円和解 判断遅れ認める 11.5.26

2011年5月26日 毎日新聞社

 堺市立堺病院で出産した際、帝王切開の判断が遅れたために生まれた女児が脳性まひになったとして、女児とその両親が市に1億8000万円の賠償を求めて堺簡裁に申し立てた調停で、同市は25日、和解金7000万円を支払い調停が成立したと発表した。

 同病院によると、07年3月、当時大阪府茨木市在住の女性(36)が帝王切開で女児を出産したが、女児は低酸素脳症となり、重い脳性まひになった。医師は出産日の午前10時ごろ、胎児の心拍数低下を確認。経過観察していたが、午後3時15分ごろさらに低下したため、帝王切開した。

 女性側は昨年9月、調停を申し立てた。病院側は「因果関係は不明」としながらも、外部の医師の意見から、最初に心拍数の異常が判明した際に帝王切開すべきだったと認め、「帝王切開の遅れは争えない」と判断した。



予防接種で針を使い回しか 東大阪、4カ月の乳児に 11.5.26

2011年5月26日 共同通信社

 大阪府東大阪市は25日、乳児の4カ月健診に合わせて11日に行われたBCG予防接種で、同じ針を使い回した可能性が高いと発表した。予防接種は43人が受けたが、終了後に調べたところ、使用した針が42人分しかなく、発覚した。

 市によると、接種したのは地元の医師会から派遣された医師。使い回しのミスを防止するため、厚生労働省は通達で、針に付いているキャップを使用後にはめ直すことを禁止しているが、医師は従っていなかった。

 1度使った針で注射された可能性のある40人を対象に、エイズやB、C型肝炎などの感染がないか血液検査する。




がん誤診で胃の大半摘出 東芝健保に賠償命令 11.5.20

2011年5月20日 共同通信社

 東芝の健康保険組合が運営する相模原市の東芝林間病院で胃がんと診断され、胃の約5分の4を摘出した後、がんではなかったことが分かったとして、同市の女性(54)が組合側に約2670万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は19日、約1260万円の支払いを命じた。

 判決理由で今岡健(いまおか・けん)裁判長は、担当医は手術前の総合診断で、胃がんと確定できる所見があるか再検討すべき注意義務を怠り手術に踏み切ったとし、「適切に再検討すれば手術は回避されたと推認され、注意義務違反と手術との間に因果関係が認められる」と判断した。

 判決によると、女性は2006年7月、別の病院で胃粘膜の異常を指摘され東芝林間病院で受診、その後の検査で胃がんと診断された。9月に入院し手術を受けたが、摘出された胃からはがん細胞が見つからず、消化吸収障害が残った。


奈良県立医大を提訴 転落後死亡の男性遺族 11.5.20

2011年5月20日 共同通信社

 奈良県橿原市の県立医大病院で昨年2月、食道がんの手術を受け入院中の男性=当時(71)=が、病室のベッドから転落、死亡したのは転落防止義務を怠ったためとして、遺族3人がそれぞれ同医大に対し、計約3900万円の損害賠償の支払いを求め、奈良地裁に提訴していたことが19日分かった。第1回口頭弁論が同日開かれた。

 訴状によると、男性は昨年1月に手術後、幻覚や不眠などを発症し、数回にわたってベッドの柵を乗り越え床に転落。同年2月22日にも転落し、酸素吸入用のマスクが外れ心肺停止状態で倒れているのを看護師が発見した。数日後に死亡した。

 原告側代理人は「看護師は転落の危険性を容易に予見できた」とした上で、「被告は看護師の使用者責任がある」と主張。被告側代理人は「できる限りの予防措置を行っていた」と反論した。


新生児ケアのミスで提訴 帝王切開後の母の胸で放置 11.5.13

2011年5月13日 共同通信社

 次女(1)が植物状態になったのは、国立病院機構九州医療センター(福岡市中央区)が、帝王切開で出産直後、母親の胸に乗せたまま長時間放置したのが原因だとして、福岡県糸島市の両親が13日、機構に約2億3千万円の損害賠償を求める訴訟を福岡地裁に起こした。

 訴状によると、母親は2009年11月20日正午ごろ、次女を帝王切開で出産。センター側は病室のベッドであおむけに寝た状態の母親の胸に次女を乗せ、タオルで固定するなどして、出産の約6時間後から2回にわたり、計約1時間20分放置した。

 次女は低体温症や低血糖症となり、同日深夜、心肺が停止した。母親は鎮痛剤などを投与され意識がもうろうとしており、助産師は「急患がいる」などとして、その場を離れていたという。

 原告側弁護士は、出産直後の母親に新生児を直に抱かせる「カンガルーケア」の中で起きた事故と主張。「経過観察を怠り、安全義務違反に当たる」と話している。

 九州医療センターは「弁護士を立てて、何度も交渉し、こちらの過失はないと繰り返し述べている。当院ではカンガルーケアを実施しているが、この患者には実施していない」としている。


日赤医療過誤訴訟 高松高裁で和解 11.5.12

2011年5月12日 毎日新聞社

日赤医療過誤訴訟:高松高裁で和解 /香川

 高松赤十字病院(高松市)で、手術を受けた三木町の女性(当時53歳)が死亡したのは、医師らが適切な処置を怠ったためとして、遺族が日本赤十字社(東京都)に約1億4000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審は11日、高松高裁(小野洋一裁判長)で和解が成立した。

 1審・高松地裁判決(10年3月)などによると、女性は00年3月に同病院に右変形性股関節症で入院。担当医師は手術前に肺の血管が詰まる肺梗塞(こうそく)を予見していたが、術後に女性が脚のだるさなどを訴えても検査をしなかった。女性は4月5日に容体が急変し、翌朝、肺梗塞で死亡した。

 遺族側代理人によると、高松高裁は、女性が「脚がだるい」などの症状を訴えており、医師は対処すべきだったと判断した上で、和解を勧めていたという。

 1審は「治療義務を怠ったとは認められない」として遺族側の請求を棄却したが、遺族側が控訴していた。


業過致死罪で医師起訴 品川美容外科の脂肪吸引 11.5.12

2011年5月12日 共同通信社

 東京都豊島区の品川美容外科池袋院で2009年、脂肪吸引手術を受けた前田京(まえだ・みやこ)さん=当時(70)、荒川区=が死亡した事故で、東京地検は11日、業務上過失致死罪で手術を担当した医師堀内康啓(ほりうち・やすひろ)容疑者(37)を起訴した。

 起訴状によると、堀内被告は09年12月2日、前田さんに手術を行った際、挿入する角度や深さを適切に調整せずに脂肪吸引に使う金属製の医療器具「カニューレ」を操作、腹壁数カ所に穴を開けて腸を傷つけ、2日後に脱水症で死亡させたとしている。

 堀内被告は警視庁の取り調べに「自分に過失があったか分からない」と容疑を否認していた。


ワクチン誤接種 静岡・富士市で女児に 健康被害なし 11.5.12

2011年5月12日 毎日新聞社

 富士市は11日、市が予防接種事業を委託する市内の医療機関の医師が、市内に住む女児(11)に誤って違う種類のワクチンを接種したと発表した。健康被害はなく、後日改めて正しいワクチンを接種するという。

 市によると、女児は先月22日、ジフテリアと破傷風の混合ワクチンを接種する予定だったが、医師が別の接種予定者と混同し、誤って麻しんと風しんの混合ワクチンを接種。今月6日になり、ワクチンの在庫を確認した医療機関が誤りに気付いたという。

 市や医療機関は10日に女児宅を訪れ、謝罪と健康状況の確認を行った。同市健康対策課は「接種時の注意事項を改めて喚起し、再発防止の徹底を図りたい」とした。


死亡で6千万円賠償命令 横浜、肝炎患者の検査怠り 11.5.2

2011年5月2日 共同通信社

 横浜市都筑区の医療法人「活人会(かつじんかい)」が運営するクリニックで尿酸値を下げる薬を処方された男性=当時(57)=が肝炎で死亡したのは医師が肝機能検査を怠ったのが原因などとして、遺族が法人と医師に計約6800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、横浜地裁は28日、検査義務違反を認め、計約6千万円の支払いを命じた。

 鶴岡稔彦(つるおか・としひこ)裁判長は「薬の副作用で肝機能障害が出る可能性があり、添付文書に定期検査を行うよう記載があったのに従わず、肝炎発症の発見が遅れた」と指摘。検査を怠った過失と死亡の因果関係を認めた。

 判決によると、男性は2006年8月にクリニックで高血圧と高尿酸血症との診断を受け、治療薬を処方された。添付文書には投与開始から少なくとも半年間は必ず定期的な検査をするよう記載があったが、医師は約4カ月間、検査をしなかった。男性は07年1月に吐き気や発熱などを訴え、クリニックから紹介された大学病院で急性肝炎と診断されて入院。同年3月に死亡した。


解剖、都道府県に新機関 警察庁の死因究明研究会 11.4.28

2011年4月28日 共同通信社

 犯罪による死亡を見逃さないため、新たな死因究明制度を検討する警察庁の有識者研究会は28日、現行の司法、行政解剖のほかに、事件性の有無が分からない遺体を解剖する制度をつくり、各都道府県に解剖専門機関を新設することを柱とする提言をまとめた。

 全遺体に対する薬毒物の簡易検査、コンピューター断層撮影(CT)による死後画像検査、身元不明遺体のDNA型や歯型のデータベース化なども盛り込んだ。

 警察庁は提言を受け、解剖医増員などに向け厚生労働、文部科学両省と協議。5年後をめどに法案を提出し、新制度をスタートさせる考え。

 昨年1年間に警察が扱った遺体は17万1025体。解剖されたのは1万9083体(11・2%)にとどまった。事件性不明の遺体は多くが解剖されず、犯罪死見逃しの一因と指摘されていた。新制度で解剖率50%を目指す。

 提言では、新たにつくる制度は「法医解剖」で、裁判所の令状や遺族の承諾を不要とし、警察署長が決定。大学の法医学教室や解剖専門の機関として各都道府県に「法医学研究所」を新設するとしている。

 解剖の前提となる検視の高度化にも言及。警察の検視官を増員し、窒息や中毒死なども検視対象とする。現行制度では医師が検視に立ち会っているが、開業医が本業のかたわらで従事するケースも多く、専門職の公務員育成を目指す。

 警察庁によると、1998-2010年の犯罪死見逃しは43件。研究会は、07年の大相撲時津風部屋の力士暴行死事件などを契機に昨年1月に設置され、連続不審死事件が相次いだことも踏まえて議論してきた。


スウェーデンは89%解剖 日本の制度「極めて脆弱」11.4.28

2011年4月28日 共同通信社

 警察庁の有識者研究会は新たな死因究明制度を提言するに当たり、海外の遺体解剖制度を調査した。スウェーデンでは89・1%の変死体が解剖されるなど、先進国の解剖率は軒並み日本を上回っていた。日本は11・2%で、研究会は「極めて脆弱(ぜいじゃく)」とした。

 研究会の資料によると、フィンランドのヘルシンキ市は78・2%、オーストラリアのビクトリア州は53・5%。調査した中で最も低い米国の一部でも12・5%だった。

 スウェーデンには中央官庁として法医学庁があり、専門の解剖医を抱える。人口100万人当たり5・4人。

 日本は全国に約170人。100万人当たり1・3人しかいない。大半は大学の法医学教室の教授で、研究をしながらの"兼業"。解剖医が1人しかいない県もあった。

 研究会は各都道府県に専門機関を設置し、解剖医を5年後に340人、最終的に850人に増やすことを提言。解剖率は5年後に20%、将来的には50%に引き上げることを目標とした。

 新制度でも解剖するかどうかは、実態としては警察官が判断する。警察庁幹部は「専門の検視官が遺体を確認し、警察署員や捜査員が生命保険の加入状況や関係者の話を丹念に聴くなど、犯罪性の有無を見極める初動捜査の徹底が重要だ」と話している。


大動脈解離見落としで提訴 北九州、死亡男性の遺族 2011.4.21

2011年4月21日 提供:共同通信社

 北九州市立八幡病院の男性内科医が2009年、救急搬送された自営業男性=当時(31)=の大動脈解離を見落としたため男性が死亡したとして、遺族が21日までに、北九州市などに約1億円の損害賠償を求め福岡地裁小倉支部に提訴した。

 市は診断ミスを認め遺族側と示談交渉を進めてきたが、金額で折り合わなかったとしている。

 市によると、男性は09年4月14日、胸の痛みなどを訴え搬送された。内科医は過呼吸症候群と診断。男性はその後も2回受診したが内服薬を処方されるなどしただけで、詳しい検査は行われなかった。同19日に容体が急変。別の病院で大動脈解離と診断され死亡した。


チューブのずれ発見できず 九大病院の死亡医療事故 2011.4.14

2011年4月14日 共同通信社

 九州大病院(福岡市)は13日、2010年9月に入院患者の補助人工心臓のチューブが外れて大量出血し、翌月死亡した医療事故で、少なくとも2カ月前から血液ポンプとチューブのつなぎ目がずれていたのに、発見できなかったことが事故につながったとする調査委員会の報告書を発表した。

 報告書によると、チューブのずれは想定されておらず、日常的な点検項目にも入っていなかったという。チューブが長期の使用で硬くなり、外れやすくなっていた可能性も指摘した。

 患者は50代で心臓弁膜症のため09年5月に入院した。血液ポンプからチューブを通して体内に血液を送る補助人工心臓を装着。昨年9月、チューブが外れ大量に出血して意識不明の状態で発見され、同年10月に多臓器不全で死亡した。

 病院側は調査委員会を設置し、原因を調べていた。今月12日に患者の遺族に説明し謝罪したという。


木沢記念病院の医療過誤:手術ミスで死亡、医師を起訴猶予 /岐阜 2011.3.31

2011.3.31 毎日新聞社

 美濃加茂市の「木沢記念病院」で09年9月、当時の外科部長の医師(50)が手術の際に男性患者(当時56歳)の体内にワイヤを置き忘れ、死亡させた事故で、岐阜地検は30日までに、業務上過失致死容疑で書類送検されていたこの医師を起訴猶予処分とした。

 地検などによると、医師はカテーテルを静脈内に誘導するワイヤを誤って切断。体内に残ったワイヤの一部が心臓に突き刺さり、男性は10年3月に死亡。

 県警は同年9月に医師を書類送検し、医師はその後、病院を退職した。地検は、既に示談が成立しており、遺族が処罰を望んでいないことなどを考慮した。


女性死亡、富山大に7400万円支払い判決 2011.3.30

2011.3.31 読売新聞

裁判長「医師、注意義務に違反」

 富山医科薬科大(現富山大)付属病院で2004年、大腸摘出などの手術を受けた富山市の女性(当時20歳)が感染症にかかって死亡したのは適切な処置を怠ったためとして、両親が富山大を相手取り、慰謝料など約1億300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、富山地裁であった。

 田辺浩典裁判長は「担当医師が感染症の治療を開始すべき注意義務に違反した」などと原告の主張を認め、同大に7500万円余りの支払いを命じた。

 判決は、女性に多量の排せつ物があったことなどから、担当医が04年12月4日の時点で腹腔(ふくくう)内感染症を疑い、治療薬を投与すべき義務があったと認定。死因となった敗血症性ショックに陥ることを回避できた可能性が高いとした。

 女性は潰瘍性大腸炎で同病院に入院。同年9月28日の大腸摘出手術後に感染症にかかり、担当医が同12月11日から薬の投与を始めたが、同12日に死亡した。

 同大は、早い時点で感染症を疑うのは困難で、薬の投与を判断するのは難しかったと主張していた。病院では女性の死亡後、遺族の指摘で医療事故調査委員会を設置。05年9月に「明らかな医療過誤があったとは判断できない」との調査結果をまとめていた。

 判決後、原告の代理弁護士は「治療を開始すべき時期などで言い分が認められた」と話した。一方、同大は「1審判決を真摯(しんし)に受け止め、対応を検討したい」とコメントした。


手術患者2人の体内にガーゼ残す…山口大病院 2011.3.30

 山口大付属病院(山口県宇部市)で手術を受けた患者2人の体内にガーゼが残され、同病院が再手術してガーゼを取り除いたうえで、2人に損害賠償金を支払っていたことがわかった。

 金額については「答えられない」としている。

 同病院によると、1997年9月に当時60歳代の男性患者の心臓を手術。術後の胸部コンピューター断層撮影法(CT)で胸に影が映ったが、担当医は血腫と説明していた。男性は2009年3月に肺炎を発症。再度、胸部CTで調べたところ、異物が認められ、内視鏡手術でガーゼ1枚(30センチ角)を取り出した。

 09年6月には、70歳代の男性患者が足の腫瘍を切除する手術を受けたが、10年7月に再発。ガーゼが残されていることが分かり、腫瘍と一緒にガーゼ1枚(30センチ角)を摘出した。

 10年7月と今年2月にそれぞれ示談が成立。病院側はガーゼが残されていたことについて、「確認の不徹底などによるミス」としている。

 肺炎を発症したこととの因果関係については「否定できない」とし、腫瘍の再発については「関係はない」としている。(2011.3.30 読売新聞)


医師らに食事行き渡らず 救援活動に支障の恐れも 2011.3.15

 東日本大震災で大きな被害を出した岩手県や、宮城県沿岸部の災害拠点病院で働く医師や看護師など病院職員用の食料が不足していることが14日、分かった。ようやくつながった病院から県の担当部局への電話で「被災者優先なのは百も承知だが、このままでは救援活動に支障が出る」との悲痛な声が相次いで伝えられたという。

 岩手県の県立病院で働く職員は計約4800人。震災を逃れた職員の多くが、勤務地で医療活動に当たっている。県の災害対策本部には「市町村役場には食料が届いているのに、われわれのところに回ってこない」といった声が寄せられた。

 同対策本部は「最も被害がひどい沿岸部の病院とは今もほとんど連絡が取れない。状況はより深刻なはずだ」として、こうした病院向けに救援物資の新たな輸送方法を検討中だ。同様の訴えは宮城県にも寄せられているという。

 原子力発電所を抱える福島県では、爆発事故で避難してくる被災者への対応で精いっぱいで、医療従事者の状況まで配慮できないという。担当者は「自己責任で調達してもらうようにしているが、要望があればできるだけ対応していきたい」と話した。(提供:共同通信社)


1500万円支払い命じる 地裁判決 熊本・氷川の医療過誤訴訟 2011.2.24

 症状改善のための措置を取らずに男性(当時85歳)が死亡したとして遺族4人が氷川町の病院を運営する医療法人に慰謝料などを求めた訴訟の判決が23日、熊本地裁であった。長谷川浩二裁判長は「適切な治療がされたとは認められない」として計約1500万円の支払いを命じた。

 判決によると、男性は05年11月、肺に異常があったことから検査のため入院した。血清ナトリウムの濃度が低下したが注意義務に違反し、食塩水を輸液するなどの適切な治療をしなかったという。同年12月に意識を失うなど急変し、06年2月に転院先の病院で死亡した。長谷川裁判長は「病院に注意義務違反があったと認めざるを得ず、症状急変との因果関係もあった」と指摘した。(2011年2月24日 毎日新聞社)

労災病院過失に賠償命令 術後脳障害、広島・呉の女性側に8660万円 2011.2.24

 中国労災病院(呉市)で、へんとう摘出手術を受けた後に大量出血で窒息し、重い脳障害が残ったとして、呉市の女性(61)と家族らが、独立行政法人・労働者健康福祉機構に約1億900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が23日、広島地裁であった。野々上友之裁判長は、病院側の過失を認め、約8660万円を支払うよう機構に命じた。

 判決によると、女性は17年2月、へんとう肥大と睡眠時無呼吸症候群の治療のため、へんとう摘出手術を受けた直後に大量出血を起こした。担当医は女性に全身麻酔薬と筋弛緩(しかん)薬を投入し、再挿管による呼吸の確保を図ったが、出血で視野が得られず断念。窒息による低酸素脳症を起こし、障害が残った。

 判決で野々上裁判長は「全身麻酔を導入すれば患者の嚥下(えんげ)機能が消失し、気道閉塞(へいそく)の危険を高めることが容易に想像できる」と指摘。「自発呼吸を温存し意識がある状態で、麻酔導入を試みるべきだった」と過失を認めた。

 同病院は「コメントは差し控えたい」としている。(2011.2.24 毎日新聞社)


日赤に5300万賠償命令 名古屋地裁、手術ミス認定 2011.2.21

(2011.2.21 共同通信社)

 名古屋第二赤十字病院(名古屋市)で脳動脈瘤(りゅう)の手術を受けた同市の女性(78)が術後に脳梗塞を起こし、左手足にまひが残ったのは手術ミスが原因などとして、日本赤十字社(東京都港区)に約9312万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は18日、約5335万円の賠償を命じた。

 判決で永野圧彦(ながの・あつひこ)裁判長は、動脈瘤にクリップをかけて手術する際に、クリップが動脈を圧迫して血流が低下したのが脳梗塞の原因と判断。「血流計で状態を確認すべきだったのにしておらず、注意義務に違反している」と述べた。

 判決によると、女性は2005年4月、同病院で未破裂脳動脈瘤と診断された。同5月に手術を受けたが、術後に左手足にまひが残り、常時介護が必要となった。


関西医大に1.5億円賠償命令 新生児、処置遅れ障害 大阪地裁 2011.2.19

(2011.2.19 毎日新聞社)

 出生直後に搬送された関西医科大学付属滝井病院(大阪府守口市)での処置が遅れ、脳性まひによる重度の後遺障害が残ったとして、同府門真市の男児(6)と両親が同病院に約2億円の賠償を求めた訴訟の判決が18日、大阪地裁であった。揖斐潔裁判長は「処置の遅れで脳性まひが生じた可能性が高い」と認め、同病院側に約1億5000万円の賠償を命じた。

 判決によると、男児は04年8月13日、未熟児で生まれ、同病院の新生児集中治療室に搬送された。男児は14日早朝、脳性まひにつながる危険性を示す血液中の「総ビリルビン値」が上昇しているのが確認された。

 しかし、担当医は「黄疸(おうだん)症状が見られない」などとして、同日は人工的な光線を当てる「光線療法」と呼ばれる処置を見送った。

 翌日の15日未明、男児はけいれんを起こし、総ビリルビン値が更に上昇。医師はこの時点で光線療法を開始したが、男児は脳性まひになり、自力で動くことができないほど重い後遺障害が残った。

 病院側は「脳性まひの原因は先天的で、処置とは関係ない」などと主張していた。

 揖斐裁判長は「染色体に異常はなく、脳性まひの原因はビリルビンの上昇による脳の損傷」と病院側の主張を退け、「もっと早く光線療法を実施していれば脳性まひを避けられた可能性が高い」と指摘した。賠償額については、重い後遺障害による逸失利益のほか、将来的な介護費を約6800万円と算定して盛り込み、総額約1億5000万円を認定した。


日本脳炎ワクチン誤接種 乳幼児4人に 2011年2月19日

2011.2.19 毎日新聞社

ワクチン誤接種:乳幼児4人に--大竹の広島西医療センター /広島

 大竹市は18日、国立病院機構広島西医療センター(同市)で先月、本来は2歳以上に接種する肺炎球菌ワクチン「ニューモバックスNP」を、6カ月~1歳5カ月の乳幼児4人に誤って接種していたと発表した。4人に健康被害はないという。

 同市は今年1月から小児用肺炎球菌ワクチンに対する公費助成を開始し、医療機関に予防接種を委託。今月14日、市がセンターからの請求書を整理した際に誤接種を見つけた。同市は1月12日、同センターに注意喚起をしたが、18~25日に誤接種をしたという。2歳未満の乳幼児には別のワクチン「プレベナー」があり、4人には接種し直す予定。同センターの田中丈夫院長は「チェック体制に不備があった。再発防止に努める」と話している。


二審も医療機関のミス認定 帝王切開後に女性死で

(2011年2月15日 共同通信社)

 妊娠高血圧症候群(PIH)で入院した妻=当時(31)=が帝王切開で出産後に死亡したのは術後の管理ミスが原因として、岐阜市の夫らが地方独立行政法人岐阜県総合医療センターに約1億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁は14日、約8400万円の賠償を命じた名古屋地裁判決を支持し、センター側の控訴を棄却した。

 判決理由で中村直文(なかむら・なおふみ)裁判長は、出産翌日も高血圧状態だった女性に速やかに血液検査を実施せず、降圧剤を投与しなかったことを一審同様に過失と認定。「センター側の不作為と女性死亡の因果関係は否定できない」と判断した。女性の病状急変時に診察まで1時間40分かかったことについても「不十分、不適切な対応だった」と指摘した。

 判決によると、女性は2006年1月、PIHのため入院し、予定日より約2カ月早く男児を出産。2日後にけいれん発作を起こして合併症を発症し、2月に死亡した。


医療事故:研修医が起こす 入院中の男性患者死亡--焼津市立総合病院 /静岡 

(2011年2月15日 毎日新聞社)

 焼津市立総合病院(焼津市道原)は14日、30代の男性研修医が入院中の男性患者(88)に呼吸器具を挿入しようとした際、医療事故を起こしたと発表した。この患者は同日、死亡した。県警は15日、遺体を司法解剖し、医療事故との因果関係を調べる方針。太田信隆院長は記者会見で「事故は全面的に病院の過失だ。遺族に深くおわびしたい」と謝罪した。

 同病院によると、この研修医は今月7日、患者の喉に装着してある呼吸器具(気管カニューレ)を取り換え、その3分後、様子を見に戻ったところ、呼吸停止状態になっていた。研修医は器具を取り付けやすくする内筒を抜き忘れていたことに気付き、取り外したが、患者は意識不明のまま14日、死亡した。

 同病院によると、患者は焼津市在住。慢性腎不全などで昨年11月15日、救急搬送され、そのまま入院。12月2日、気管切開手術を受けていた。同病院の説明によると、院内規定では、研修医については、こうした治療は他の医師の監督下で行うと定めているが、当時、研修医が1人で呼吸器具を交換したという。

 同病院は事故の再発防止のため、外部の有識者による医療事故調査委員会を近く設け、事故の起きた経緯を調べる方針を示した。


1千万円支払いで和解 呼吸器スイッチ入れ忘れ

(2011.2.15 共同通信社)

 富山赤十字病院(富山市)で2006年、医師が人工呼吸器のスイッチを入れ忘れたため、福井市の男性(32)が一時心停止し、脳に損傷を受けて植物状態になったとして、男性と両親が日本赤十字社(東京)に約3億円の損害賠償を求めた訴訟は14日、日赤側が解決金1千万円を支払うことなどで富山地裁(田辺浩典裁判長)で和解が成立した。

 訴状によると、男性は06年8月に入院。自発呼吸が困難なため、人工呼吸器を装着されていたが、同9月、CT検査のため呼吸器を一時、外した。

 簡易呼吸器を付けた検査の終了後、医師が人工呼吸器をつなぎ直したが、スイッチを入れ忘れ、男性は少なくとも12分以上、無呼吸状態が続いたとしている。

 同病院の小西孝司院長は「和解を受け入れていただき感謝している。二度とこのようなことのないよう、職員の指導を徹底する」と話した。


薬剤師に異例の賠償責任 薬5倍投与で男性死亡

(2011年2月14日 共同通信社)

 東京・虎の門病院で2005年、肺がんのため入院した大学教授の男性=当時(66)=が死亡したのは、正規量の5倍の薬を3日連続で投与されたのが原因だとして、遺族が計約1億円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は10日、病院を運営する国家公務員共済組合連合会、担当した当時の研修医、薬剤師3人に計2365万円の支払いを命じた。

 病院側は当時、記者会見を開き、投与ミスを認めていた。薬剤師3人のうち1人が実際に調剤。残る2人は用量などを確認する立場だった。原告側代理人によると、医療事故訴訟で調剤に関わった薬剤師にまで賠償責任が及ぶのは極めて異例。

 浜秀樹裁判長は、劇薬に指定されている肺炎治療薬「ベナンバックス」の過剰投与と死亡との因果関係を認定。その上で「普段調剤しない不慣れな医薬品で、重大な副作用が生じる可能性もあり、用法、用量の内容を確認して、処方した研修医に疑問を呈する義務があった」として薬剤師の過失を認めた。

 研修医についても、当時臨床経験3年目ではあったが、医薬品集を読み誤り、別の薬の投与回数や用量を薬剤師に指示する「通常起こり得ない単純な間違い」と指摘。「研修医と薬剤師による一連の行為が男性の死亡を招いた」と結論付けた。

 判決によると、男性は肺がんのため05年8月下旬から入院。肺炎の併発に研修医は、ベナンバックスの正規量が1日180ミリグラムだったのに5倍の900ミリグラムを同10月29日から3日間処方するよう薬剤師に指示。男性は投与3日目に意識障害を起こし、翌月10日に腎不全などで死亡した。

 虎の門病院は「判決文が届いていないので、コメントは差し控える」としている。


輸血発注書、日付偽造か 数日前からの準備装う? 「専門関係なく手術を」

(2010年2月10日 共同通信社)

  奈良県大和郡山市の医療法人雄山会「山本病院」(破産手続き中)で肝臓がんの手術を受けた男性患者=当時(51)=が死亡した事件で、男性の手術中に取り寄せた輸血用血液の発注書の日付が、手術数日前に発注したように偽造された疑いがあることが9日、病院関係者らへの取材で分かった。

 県警もこの事実を把握。手術を執刀した元理事長山本文夫(やまもと・ふみお)容疑者(52)=業務上過失致死容疑で逮捕=らは輸血用の血液を用意していなかったことが既に判明しており、発注書の偽造で輸血準備を装った可能性があるとみて経緯を調べている。

 山本容疑者が日ごろから院内の医師に「専門の診療科に関係なく(手術や検査を)どんどんやれ」などと勧めていたことも病院関係者の話で判明。県警はより多くの症状の患者を検査、手術することで診療科目を増やし、診療報酬を得ようとしたとみている。

 病院関係者らによると、2006年6月16日、男性は肝臓腫瘍(しゅよう)の切除手術を受け、午後1時半ごろまでに大量に出血。輸血用の血液はなく、元勤務医塚本泰彦容疑者(54)=同容疑で逮捕=の指示で、病院側は県赤十字血液センター(大和郡山市)に2回輸血用の血液を発注した。

 しかし、これまでの病院の家宅捜索では同日付の発注書が1回分しか見当たらず、ほかに手術数日前の日付が書かれた発注書が見つかった。一方、同センターには16日に山本病院から2回受注した記録はあったが、手術数日前の受注はなく、偽造の疑いがあるという。

 男性は同センターから取り寄せられた血液で輸血の処置を受けたが、手術当日の午後3時40分ごろに死亡した。


「酒飲みに」と手術室出る 元理事長、大量出血後に

(2010.2.10 共同通信社)

 奈良県大和郡山市の医療法人雄山会「山本病院」(破産手続き中)で肝臓手術を受けた男性患者=当時(51)=が死亡した事件で、元理事長山本文夫(やまもと・ふみお)容疑者(52)=業務上過失致死容疑で逮捕=が、男性の大量出血後、「酒を飲みに行く」と言って手術室を出ていたことが10日、捜査関係者への取材で分かった。

 県警は、山本容疑者が容体急変時に処置を怠り、死亡につながった可能性があるとみている。山本容疑者は逮捕前の県警の任意の聴取に「しっかり止血し、手術を終わらせた。途中でいなくなったわけではない」などと話していた。

 捜査関係者によると、2006年6月16日午前10時すぎ、男性の肝臓腫瘍(しゅよう)の切除手術を開始。山本容疑者は執刀し、麻酔医も兼ねていた。午後1時半ごろまでに大量出血すると、手術室を出て行った。

 立ち会っていた元勤務医塚本泰彦容疑者(54)=同容疑で逮捕=と看護師らが、急きょ取り寄せた血液を輸血したり、心臓マッサージをしたりしたが、男性は午後3時40分ごろ死亡。この間、看護師が電話で連絡を取ろうとしたがつながらず、夕方になって戻ってきたという。


死亡時刻2時間遅く記入…山本病院

(2010.2.10 読売新聞)

カルテに、死因も改ざん

 奈良県大和郡山市の医療法人雄山会「山本病院」(解散)の業務上過失致死事件で、元理事長の山本文夫被告(52)(詐欺罪で実刑判決を受け控訴中)らが2006年6月、肝臓手術で失血死させたとされる男性(当時51歳)の死亡時刻を、実際より2時間遅くカルテに記載していたことがわかった。

 また、ともに手術をした元勤務医の塚本泰彦容疑者(54)は山本被告の指示を受けて、死因を「急性心筋梗塞(こうそく)」と改ざんしたと供述、県警は手術中の死亡を隠蔽(いんぺい)しようとしたとみている。

 奈良県が07年1月に実施した聞き取り調査で、山本被告は、〈1〉手術は午後1時半頃に終了〈2〉男性を病室に戻した後、急激に血圧が低下した〈3〉約2時間、心臓マッサージなど心肺蘇生(そせい)を試みたが、同3時39分に急性心筋梗塞で死亡した--などと説明。カルテにもそう記載していた。

 しかし、看護師らが記載する手術記録や病院関係者の証言では、男性は手術中の午後1時半頃、肝静脈損傷による大量出血で心肺停止状態に陥っていたことが判明。手術後に山本被告の行方がわからなくなった後、塚本容疑者は傷口を縫合して、男性を集中治療室(ICU)に移したという。

 県警の調べに、塚本容疑者は手術後の状況について、「手術中に男性が死んだが、隠すため、手術室からICUに移した。山本被告に『死因は急性心筋梗塞でいいやろ』と指示された」と供述しているという。


病気腎移植問題、元患者が賠償提訴へ…「がん誤診で摘出」

(2010.2.5 読売新聞)

備前市を相手に

 病気腎移植問題に絡み、がんではない腎臓を摘出され、精神的苦痛を受けたなどとして、岡山県備前市の市立病院で万波廉介医師(64)の手術を受けた県内の女性(73)が市を相手に、約3700万円の損害賠償を求める訴えを近く岡山地裁に起こす。この問題で、病院側が提訴されるのは初めて。

 訴状によると、女性は2006年7月、備前市立吉永病院で、万波医師から「九分九厘、腎臓がん」と診断され、経過観察など摘出以外の選択肢について説明のないまま左腎臓を摘出された。実際は腎臓の一部が石灰化した腎のう胞で、手術4日後に万波医師から「摘出した腎臓は良性だった。透析患者に移植され、正常に機能し始めた」と知らされ、そのことが元で重度のうつ病になった、としている。そのうえで「コンピューター断層撮影法(CT)のみでがんと誤診し、摘出手術を行った病院の過失は明らか」と主張している。

 取材に対し、病院側は「腎臓は、病理検査のために摘出せざるをえない状況だった。元に戻すことは不可能。万波医師には全幅の信頼を寄せており、誤診ではないと確信している。万波医師は腎臓を移植に使うということを患者に説明したと言っている」としている。

 病気腎移植を巡っては、厚生労働省が07年7月、臓器移植法の運用指針を改正して、臨床研究以外は原則禁止した。宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)は09年12月から、研究として病気腎移植を再開している。

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