What's new 2012
a:8592 t:1 y:0
What's new 2012
- What's new 2012
- 医療基本法制定へ理解を オンブズマンや医師会などシンポ 「患者の権利守れ」12.11.30
- (長野)麻酔と誤って止血剤注射…信大付属病院 12.10.11
- 自殺未遂対策、救急と精神科の連携効果 「再発率」3分の1 東海大調査 12.10.10
- レセプト情報、「営利利用はNG」と日医。個別法の「医療等ID」も慎重な検討求める 12.10.5
- 副反応の情報収集強化へ 予防接種で厚労省 迅速対応可能に 12.10.5
- 500ミリシーベルトで白内障リスク 放影研、国際基準を裏付け 12.10.5
- 福島第1原発事故 福島県が健康調査で秘密会 本会合シナリオ作る 12.10.3
- 日赤に7000万円賠償命令…介護職員自殺 12.10.3
- 医療&健康ナビ 子宮頸がん健診 12.10.1
- 医科歯科大、不正採血を謝罪 東京医科歯科大学が研究倫理違反を報告、処分方針と再発防止策示す 12.9.24
- 異例の保険指定取り消しへ 東京医大茨城医療センター 診療報酬不正で厚労省 12.9.21
- 論文ねつ造の多さ「不可解」- 日本麻酔科学会理事・澄川耕二氏に聞く 12.9.20
- アドボカシー団体INCAは「歯科保健条例」に、有害なフッ化物応用記載の回避を求める「要望書」提出:山梨県議会宛 2012.9.18
- カルテ開示で印刷ミス 名大病院、259人分 12.9.18
- 健保組合8割が赤字…拠出金負担増、解散も増加 12.9.14
- 死刑執行50年、再審目指す ハンセン病差別が背景 熊本の「菊池事件」 12.9.14
- 個人情報入りPC盗難 沖縄県立中部病院 12.9.14
- 脳内タンパク質減少が一因 統合失調症の認知障害 12.9.14
- がん細胞転移 解明の糸口 「成長因子」関与確認 12.9.13
- がん細胞転移 解明の糸口 「成長因子」関与確認 12.9.13
- 骨治療薬投与後に2人死亡 厚労省、注意改訂を指示 12.9.12
- 骨病変治療薬で死亡例、製薬会社に注意記載指示 12.9.11
- 個人情報流出に懸念 納税、年金手続き簡略化 「大型サイド」マイナンバー法案 12.8.22
- ベンゾジアゼピン系薬剤の副作用や薬物依存の症状や、減薬のための「アシュトンマニュアル」日本語版が公開 12.8.23
- 日本初、うつ病の学会指針を公表 12.7.27
- 安易な薬使用に警鐘 うつ病多様化で指針 学会、医師向けに初 12.7.27
- ヤマイモ成分にアルツハイマー改善効果…富山大 12.7.26
- ハンセン病療養所 41年ぶりハンストへ 職員削減に抗議 12.7.19
- 期限延長求め10万人署名 水俣病救済、被害者ら提出 12.7.19
- 抗がん剤等の「使用上の注意」改訂指示--厚労省 12.7.19
- がん対策「問題あり」7府県…群馬・埼玉・京都… 12.7.19
- 山形分子疫学コホート研究 調査同意、1万人超え 山形大 12.7.18
- ワクチン接種拡大 航空で参入促進 成長へ規制改革案 12.7.4
- 慶応大教授らを停職処分 骨髄液無断採取で 12.7.4
- 論文捏造は172本 学会「世界最多」 元東邦大准教の論文不正 12.6.30
- 人工栄養見直しの動き 胃ろうなど中止選択も 専門家がガイドライン 「医療新世紀」 12.6.26
- 頸がんワクチン過信は禁物 必ず検診の受診を 「医療新世紀」 12.6.26
- 熊本、鹿児島で水俣病調査 過去最大、1413人 88%に特有の症状 12.6.25
- インプラント 歯科医6割「トラブル」 学会指針作成へ 12.6.25
- 論文不正 : 東邦大元准教授執筆、00年に米専門誌指摘 在籍の筑波大放置 12.6.25
- 山本病院元理事長に実刑 手術ミスで患者死亡 12.6.25
- “終末期の人工透析、家族意向で中止も…学会提言” 延命中止し移植 新技術、心臓除き可能 欧州10カ国導入 倫理的課題、評価分かれ 12.6.24
- 大学の臨床研修、必修化前後で満足度不変
- 徳洲会が先進医療再申請 病気腎移植に保険適用を 12.6.21
- 次期10年計画案を決定 健康寿命、喫煙率に目標 12.6.21
- (神奈川)知事と医師会 全面対決 12.6.17
- 「後期廃止」にこだわるな 改革遅れ、政治の怠慢 「高齢者医療制度見直し」 12.6.12
- 子供の多数回CT、癌リスク3倍も 12.6.11
- がん細胞死滅の仕組み解明 愛知県がんセンター研 12.6.12
- 慢性化の原因タンパク特定 アトピー性皮膚炎、佐賀大 12.6.12
- ピオグリタゾン、膀胱癌と関連 12.6.5
- 「CKD診療ガイド2012」を発表 3年ぶりの改訂、重症度分類と血圧管理法に新機軸 12.6.4
- 呼吸器取り外しも可能に 議連の尊厳死法案 12.6.1
- 男70・42歳、女73・62歳 健康寿命、厚労省が初算出 「延ばす」目標に 12.6.1
- インプラント治療で障害421件、神経まひ4割 12.6.1
- 呼吸器取り外しも可能に 議連の尊厳死法案 12.6.1
- 薬の皮膚障害131人死亡 2年半で、厚労省に報告 12.5.29
- アルツハイマー病改善に運動療法が効果 京都大教授ら研究グループ、米科学誌に論文 12.5.20
- 死因究明法案を委員会可決 衆院、議員立法で提出 12.5.18
- HbA1c」値の国際標準化で通知--厚労省 12.5.17
- 薬ネット販売、国上告へ 規制緩和は並行検討 12.5.9
- 入院患者11人が院内感染か…日本医科大病院 12.5.9
- 増える胃食道逆流症 胸焼け、粘膜に傷 食生活や肥満が原因 「医療新世紀」 12.5.8
- がん認定医1万人超え 12.4.28
- 新型インフルエンザ特措法案成立 発生時、集会制限可能に 12.4.27
- 水俣病 公式確認56年迎え慰霊式 12.5.12
- フルオロキノロンで網膜剥離増加 12.4.6
- 東大が不正疑惑を調査 論文取り下げ、教授は辞職 12.4.6
- メタボ健診、見直し 厚労省検討会「非肥満でも指導」 腹囲で判断、根拠薄く 12.3.29
- 新型インフルエンザ等対策特別措置法案に反対する会長声明 12.3.22
- 新型インフルエンザ等対策特別措置法案に対する緊急声明 薬害オンブズパースン会議 12.3.19
- 精神医療のセカンドオピニオン どんな場合に検討すべきでしょうか。 12.3.18
- [規制改革] 米国による医療保険廃止要求の懸念あり、TPP参加は反対 日医 12.3.15
- 大流行対策に重要 鳥インフル論文で河岡氏 12.3.15
- 安楽死で初の司法判断へ 英裁判所が審理認める 12.3.13
- 一般患者も「延命治療しないで」の「事前要望書」島根大医学部付属病院 12.3.13
- 新型インフル法案閣議決定 危機管理で行動制限要請 12.3.9
- 糖尿病の指標変更に注意を HbA1c、4月から 日本独自から国際標準へ 「医療新世紀」 12.3.6
- 薬局のずさんな法令遵守状況に不満と失望 12.3.7
- 全国民に予防接種 13年度にワクチン確保 医薬品隠しに罰則 新型インフル法案 12.3.7
- 強毒性新型インフル予測時、全国民に予防接種へ 12.3.6
- リピーター医師に戒告処分、被害者「軽すぎる」 12.3.6
- 糖尿病の指標変更に注意を HbA1c、4月から 日本独自から国際標準へ 「医療新世紀」 12.3.6
- 日本弁護士連合会:新型インフルエンザ対策のための法制に関する会長声明 12.3.2
- 被爆でがんリスク42%増加 放影研、50年余の追跡調査 12.3.1
- 抗インフル薬3成分に改めて注意喚起--厚労省 12.3.1
- インフルエンザ集団感染、90代の女性が死亡 愛媛県内今季初 12.2.29
- めちゃくちゃにされた人生(1) 抗うつ薬と衝動性 12.2.29
- 東京医科歯科大の助教、論文データ捏造など不正 12.2.24
- 鳥フル致死率は過大評価 H5N1、米研究者が指摘 12.2.24
- 検査の混乱「隠蔽」 国立がんセンター東病院 12.2.21
- 理解乏しい放射線治療 選択肢として認識せず? 「医療新世紀」 12.2.21
- 4割に診療記録の記載漏れ …産科医療補償制度 12.2.21
- 受診遅れで67人死亡 困窮で「無保険」など 12.2.21
- 鳥インフル論文は全文掲載 管理懸念払拭が前提 WHO、国際会議で勧告 12.2.20
- [医療安全情報] 院内で画像診断報告書確認体制を設け、治療遅れ防止を 12.2.17
- 分子標的薬、思わぬ副作用—新たながん誘発も 12.2.17
- 「時代遅れ」新知見に対応 社会全体の流行拡大防止 12.2.17
- インフル論文検閲に波紋 大流行とテロどちら優先 「大型サイド」 12.2.17
- インフル対策に悪影響 WHO、米の対応を懸念 研究論文の削除勧告 12.2.16
- 「医療事故調」の議論再開 3年ぶり、厚労省が検討会 12.2.15
- 15年にも個人カード配布 共通番号制 12.2.15
- 国民に「マイナンバー」 納税、年金を管理 共通番号法案を閣議決定 情報漏えいに罰則 12.2.14
- 養子関係の腎臓移植5例、問題なかったと学会 12.2.15
- 予告★★講座★★「抗生物質」の基礎知識 ~知っておきたい命に関わる薬の害作用~ 2012年2月25日
- 8割が「内容知らない」 共通番号制、周知進まず 一体改革議論に影響 個人情報漏えい懸念も 12.1.31
- タミフル、効果に疑問…国際研究グループ報告書 12.1.18
- 体外受精培養液に化学物質 妊婦血液の最大100倍 厚労省研究班調査 12.1.4
- タミフル:副作用、専門家が分析 重篤化誘因の恐れ11.12.30
医療基本法制定へ理解を オンブズマンや医師会などシンポ 「患者の権利守れ」12.11.30
(西日本新聞 2012.11.30)
「患者の権利」擁護を中核とする「医療基本法」の制定に向けたシンポジウムがこのほど、福岡市博多区のパピヨン24ガスホールであった。NPO法人「患者の権利オンブズマン」(福岡市)や福岡県医師会、薬害オンブズパースン会議(東京)などでつくる実行委員会が主催し、約120人が集まった。
はじめに、日本医師会の今村定臣常任理事が、同会の医事法関係検討委員会で3月にまとめた「『医療基本法』の制定に向けた具体的提言」に関して報告。提言がまとめられた経緯について(1)委員会が「医療を取り巻く法律や通達のほとんどが、医療提供者を規制することを目的としたもので、信頼関係を目指すべき医師・患者関係を阻害しており、見直しが必要」と考えた(2)その後、委員会は、患者中心の医療を進めるためにどのような法制度が望ましいかということを中心に検討を始め、その過程で医療に関する基本法が必要との議論に発展した-などと説明した。
続いて、薬害オンブズパースン会議代表の鈴木利廣弁護士が「患者の権利」について解説。この権利には、最善の医療を受ける権利▽個人の尊厳が守られる権利▽インフォームドコンセントに象徴される「知る権利と自己決定権」▽被験者の権利(臨床研究における患者の権利)▽被拘禁者の権利(認知症患者など、身体拘束を受ける患者の人権)▽医療被害の回復救済を求める権利-の六つがあるとし「こうした患者の権利を土台にしながら医療制度を再構築していくことが必要」と話した。
シンポでは、各政党とも医療基本法の成立に前向きな印象はあるものの、審議に向けた動きが見えないことも話題に。医療過誤原告の会(東京)の石政秀紹さんは「国会議員は医療基本法の重要性をちゃんと理解していないのではないか」と指摘し、制定に向けて市民側に理解を広めていこうと呼び掛けた。
(長野)麻酔と誤って止血剤注射…信大付属病院 12.10.11
(読売新聞 2012.10.11)
信州大医学部付属病院(松本市)は10日、80歳代の男性患者に皮膚の移植手術をする際、局所麻酔で別の止血用薬剤を誤って注射する医療事故があったと発表した。患者は手術中に心拍数や血圧が上昇し、一時意識不明となったが、集中治療室で治療を受け、回復に向かっているという。
同病院によると、患者は動脈が詰まり、足がただれる重症下肢虚血で今月3日、左足に脇腹の皮膚を移植する手術を受けた。手術前、担当医師が局所麻酔用の薬剤リドカインEを注射するはずが、看護師は生理食塩水で希釈した止血用のアドレナリン注射薬が入った注射器3本(計30ミリ・リットル分)を渡し、医師がそのまま注射した。
看護師はアドレナリン注射薬を希釈中に医師から「局麻(局所麻酔薬)下さい」と言われ、手元の注射薬を求められたと思って手渡した。お互いに声に出して薬剤名は確認しなかった。別の看護師がアドレナリン注射薬の量が少ないことに気付き、ミスが分かった。
男性患者は手術後半に心拍数や血圧が上がり、終了後に検査した結果、ストレスなどで心臓の筋肉が動かなくなるたこつぼ型心筋症と診断された。止血剤を注射したことが原因とみられるという。患者は快方に向かっているが、現在も集中治療室で治療を受けている。
記者会見した天野直二病院長は「二度と繰り返さないよう、速やかな再発防止策を講じたい」と陳謝した。
自殺未遂対策、救急と精神科の連携効果 「再発率」3分の1 東海大調査 12.10.10
(毎日新聞社 2012.10.10)
自殺:未遂対策、救急と精神科の連携効果 「再発率」3分の1--東海大調査
自殺未遂で救急搬送された患者に対し、搬送後に精神科医が診察を行い、退院後に精神科病院に入院させて治療を続けたところ、再び自殺を図って搬送される患者の割合が、15年間で約9%から3%に下がったことが、東海大医学部の市村篤講師の調査で分かった。自殺未遂者は再び自殺を図るリスクが高いとされるが、病院同士の連携で継続的に治療すれば、一定の防止効果があることを示したものとして注目を集めそうだ。(14面に「死なせない 自殺防止最前線」)
東海大医学部付属病院の高度救命救急センター(神奈川県伊勢原市)には、95年から市村講師ら精神科医が常駐。自殺未遂で搬送され、傷などの手当てが終わった患者の精神疾患を診察し、必要に応じて近隣の精神科病院に入院してもらっている。
市村講師によると、94年度に搬送された自殺未遂者149人のうち、1年以内に再び自殺を図ったのは13人(8・7%)だった。その後3年ごとに同様の調査を続けたところ、97年度179人中11人(6・1%)▽00年度255人中15人(5・9%)▽03年度422人中13人(3・1%)▽06年度607人中18人(3・0%)――となった。自殺未遂者の搬送数は増えているが、再び自殺を図る人の割合は減っている。
救命救急センターに精神科医がいると、家族やかかりつけの精神科医から患者に関する情報が的確に収集でき、自殺の背景を把握しやすくなる。退院後に通う医療機関ともスムーズに連携できる。
市村講師は「救急医療に精神科医がかかわることは、自殺未遂者対策のモデルになるのでは」と話している
レセプト情報、「営利利用はNG」と日医。個別法の「医療等ID」も慎重な検討求める 12.10.5
(医療維新 2012.10.5)
日本医師会は10月4日、記者懇談会を開催、レセプト情報などの患者情報が営利目的で使われかねない現状への懸念を呈するとともに、現在検討されている医療等分野の情報の利活用と保護に関する個別法で、厳罰化などで対応する必要性を指摘。さらに、9月に厚生労働省の検討会がまとめた「医療等分野における情報の利活用と保護のための環境整備のあり方に関する報告書」に盛り込まれた「医療等ID(仮称)」について、「報告書は、医療等ID(仮称)の創設を提言しているわけではなく、まだ注意しなければいけない論点が多々ある」(石川正己・日医常任理事)との見解を示し、慎重な検討を求めた。
[石川正己・日医常任理事は、「日医認証局」が地域連携における個人情報保護に有用だとした。]
石川氏は、地域がん登録などの公衆衛生や研究などの目的で、匿名化したレセプト情報を活用することは問題ないとしたものの、製薬メーカーや生保・損保会社などが営利目的で使うことには、「反対」と明言。現行の個人情報保護法には、「グレーゾン」の部分があり、レセプト点検を請け負う株式会社のレセプトデータの流用などが問題視され、厚労省は今年8月に、「事務連絡」を出し、個人情報の慎重な取り扱いを求めている。
「社会保障・税番号大綱」で、医療等分野においては、先の国会に提出されたいわゆるマイナンバー法案とは別に、情報の利活用と保護を目的として個別法を制定することが求められた。厚労省は4月に「社会保障分野サブワーキンググループ及び医療機関等における個人情報保護のあり方に関する検討会」を発足、9月に報告書をまとめた(『医療版「マイナンバー」、結論先送りで報告書』http://www.m3.com/iryoIshin/article/158697/を参照)。厚労省は今後、この報告書をたたき台にして、議論を深め、来年の通常国会への個別法の法案提出を目指している。石川氏は、この個別法でも、レセプト情報の匿名化情報の営利目的での利用を禁止することは、「(営利目的での活用意向がある立場との)力関係のために難しいだろう」としたものの、不正な手段によるデータ取得や情報漏えいに対する罰則の強化は進めるべきだとした。「そもそもレセプト情報は、保険者などから提供されている。提供する側のモラルの問題もあり、改善を求めたい」(石川氏)。
[羽生田俊・日医副会長は、「政府は個人情報の活用に言及するが、個人情報の最たるものである患者情報をいかに守るか、という視点も重要」と強調する。]
=民間会社がレセプトを基にデータベース作成=
石川氏は、「レセプトには、患者情報だけでなく、医療機関の情報が満載」と形容。例えば、診療所のレセプトを分析すれば、医師の処方行動などを把握することができるからだ。
レセプト情報は、高齢者医療確保法に基づき、医療費適正化計画作成などの目的で、国や都道府県の活用が認められている。それだけでなく、「感染症などの疾患の実態把握に基づく施策」など、「医療サービスの質の向上等を目指した正確なエビデンスに基づく施策の推進」の目的に合致すれば、研究機関などもレセプト情報の活用が可能だ。後者の場合は、レセプトの個人情報の匿名化が前提であり、厚労省の有識者会議で審査し、利用の可否を決定する。
石川氏が問題視したのは、こうした正式なルート以外のレセプト情報の活用事例。石川氏が例示したのは、ある株式会社が、健康保険組合からレセプト情報を入手している事例。この会社のホームページには、医療統計データベースを提供するとし、「レセプト情報をデータソースとした膨大な医療情報データベース。皆様の知りたい答え、新たな発見を導き出します(対象:製薬メーカー、研究機関、生損保、医療機関、薬局など)」とある。
個人情報保護法では、「公衆衛生などのために、特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」などは、本人の同意なく、第三者に提供することができるとしている。石川氏は民間会社の活用事例をグレーゾンとし、「健保組合であれば、社員やその家族の同意を得ることは可能ではないか。また生命保険会社などにも提供しているので、本当に公衆衛生的に使われているのかは疑問」と指摘。またレセプト情報から患者名などを削除し、個人の特定が不可能な情報にすれば、「個人情報」に当たるかどうかという微妙な問題もある。
厚労省の前述の8月の「事務連絡」では、その背景として「最近、一部の医療機関、薬局および保険者において、情報の第三者提供について、大学病院等における学術研究目的での利用について通知・公表しているなどの場合以外に、レセプトに記載された個人情報に当たり得る情報を、あらかじめ本人の同意を得ないで営利目的等のために第三者へ売却または譲渡している事例がある、との情報が複数寄せられている」と説明。もっとも、個人情報保護法および関連ガイドラインの徹底を注意喚起するだけで、どんな匿名化であれば、レセプト情報が個人情報に該当しないと言えるか、また健保組合等からの匿名化したレセプト情報の第三者提供の是非やその利用目的の妥当性などには踏み込んでいない。これは個人情報保護法の限界であり、「グレーゾン」がある表れとも言える。
=「医療等ID(仮称)、気持ち悪い」=
石川氏は、先の通常国会に提出されたマイナンバー法案について「まだ成立していないが、自民党や公明党も支持しているので、法案は早晩通ると思っている」と見る。
その上で、医療等分野の個別法について、石川氏は厚労省の検討会において、計9回のうち7回目の会議で、「突然、医療等ID(仮称)の話が出てきた」と議論のプロセスを問題視。「生まれてきた子供に番号を付けると、死亡するまでその番号で管理される。医療等ID(仮称)は唯一無二の番号であり、(すべてを継続的に管理されることから)検討会では“気持ちが悪い”との表現も使った」と語る石川氏は、医療等ID(仮称)には、患者個人の治療に役立つなど、“個益”に資すると同時に、公衆衛生の目的で使うなど“公益”に役立つ側面があることは認めつつ、「非常に高いセキュリティーで管理する必要がある」と述べ、引き続き議論が必要だとした。
さらに医療分野の個人情報保護に関連して、医療者の電子認証の仕組みを整備する必要性も指摘。「日医認証局」は、地域医療連携や電子紹介状・診断書作成度などの際に、「電子署名」が可能な仕組みを有している。この「電子署名」の効力は、電子署名法で保証される。今年秋から石川県で電子処方せんの実証実験が始まるという。ただ、電子認証のためのICカードを保有する医師は約100人にとどまるため、石川氏は「日医認証局」の活用を呼び掛けた。
副反応の情報収集強化へ 予防接種で厚労省 迅速対応可能に 12.10.5
(共同通信社 2012.10.5)
厚生労働省は5日までに、予防接種を受けた後に起きるショックやまひ、発熱などの副反応に関する情報収集を強化し、一元管理するデータベース(DB)を来年度に構築する方針を決めた。医薬品医療機器総合機構(東京)、国立感染症研究所(同)との共同事業。
現在、副反応情報の集計は年1回のため、医療機関から情報が寄せられてから分析するまでに時間がかかっていた。DB構築によって、関係機関がリアルタイムに情報を共有、分析の結果、健康に影響がある場合は接種中止や注意喚起などの対応をより迅速に取ることが可能になる。 厚労省は関連経費を来年度予算の概算要求に盛り込んだ。
厚労省によると、DBには厚労省が副反応情報を入力。その後、主に総合機構や感染研が調査、分析し、結果をDBに反映させる。現在は任意となっている副反応の報告を医療機関に義務付けるための予防接種法改正の検討も進めている。
厚労省は定期接種が実施されているジフテリア、百日ぜき、日本脳炎、はしか、風疹、ポリオ(小児まひ)、BCG(結核)、破傷風、インフルエンザの副反応情報を収集。因果関係が分からなくても、死亡やけいれんなど重大なものから、発熱や腫れなど軽度のものまで、接種後の一定期間内に起きた副反応を幅広く集める。
医薬品の重大な副作用や医療機器の不具合情報は、薬事法で医療機関や製薬会社による報告が義務付けられており、DBも構築されている。
500ミリシーベルトで白内障リスク 放影研、国際基準を裏付け 12.10.5
(共同通信社 2012.10.5)
広島、長崎の原爆投下で500ミリシーベルト以上の放射線量を受けた被爆者は、放射線を受けていないと考えられる被爆者に比べて手術が必要な重症の白内障を発症するリスクが高いとの研究結果を、日米共同の研究機関「放射線影響研究所」(広島市、長崎市)のチームがまとめ、5日までに北米放射線学会の専門誌に発表した。
最近の研究で眼組織は比較的低線量でも放射線の影響を受けやすいことが分かってきており、国際放射線防護委員会(ICRP)は昨年4月、生涯の眼組織の最大許容線量を5シーベルトから500ミリシーベルトに引き下げた。錬石和男(ねりいし・かずお)非常勤研究員は「この新基準の強力な科学的裏付けになる」と話している。
研究によると、チームが追跡調査している被爆者6066人のうち1986~2005年に初めて白内障手術を受けた人は1028人。この中で放射線を受けた642人、受けていないと考えられる386人に分け、統計解析した。
この結果、放射線を受けた人の方が、手術が必要な重症白内障を発症しやすくなり、500ミリシーベルトを境にリスクが高くなることが分かった。1シーベルト浴びた場合は、約1・32倍まで高まった。
錬石非常勤研究員は「手術が必要なほど重症な白内障の発症と放射線との関係が明らかになった。低線量でもリスクが増加することも分かり、今後は線量に応じた発症のメカニズムを解明していきたい」と話している。
※専門誌はRADIOLOGY
福島第1原発事故 福島県が健康調査で秘密会 本会合シナリオ作る 12.10.3
(毎日新聞社 2012.10.3)
東日本大震災:福島第1原発事故 福島健康調査で秘密会 県、見解すり合わせ 本会合シナリオ作る
東京電力福島第1原発事故を受けて福島県が実施中の県民健康管理調査について専門家が議論する検討委員会を巡り、県が委員らを事前に集め秘密裏に「準備会」を開いていたことが分かった。準備会では調査結果に対する見解をすり合わせ「がん発生と原発事故に因果関係はない」ことなどを共通認識とした上で、本会合の検討委でのやりとりを事前に打ち合わせていた。出席者には準備会の存在を外部に漏らさぬよう口止めもしていた。
県は、検討委での混乱を避け県民に不安を与えないためだったとしているが、毎日新聞の取材に不適切さを認め、今後開催しない方針を示した。
検討委は昨年5月に設置。山下俊一・福島県立医大副学長を座長に、広島大などの放射線医学の専門家や県立医大の教授、国の担当者らオブザーバーも含め、現在は計19人で構成されている。県からの委託で県立医大が実施している健康管理調査について、専門的見地から助言する。これまで計8回あり、当初を除いて公開し、議事録も開示されている。
しかし、関係者によると、事務局を務める県保健福祉部の担当者の呼びかけで、検討委の約1週間前か当日の直前に委員が集まり非公開の準備会を開催。会場は検討委とは別で配布した資料を回収し議事録も残さず、存在自体を隠していた。
9月11日に福島市内の公共施設で開いた第8回検討委の直前にも県庁内で準備会を開いていた。同日は健康管理調査の一環である子供の甲状腺検査で甲状腺がん患者が初めて確認されたことを受け、委員らは「原発事故とがん発生の因果関係があるとは思われない」などの見解を確認。その上で、検討委で委員が事故との関係をあえて質問し、調査を担当した県立医大がそれに答えるという「シナリオ」も話し合った。
実際、検討委では委員の一人が因果関係を質問。県立医大教授が旧ソ連チェルノブイリ原発事故で甲状腺がんの患者が増加したのは事故から4年後以降だったことを踏まえ因果関係を否定、委員からも異論は出なかった。
また、昨年7月の第3回検討委に伴って開かれた準備会では、県側が委員らに「他言なさらないように」と口止めもしていた。
毎日新聞の取材に、県保健福祉部の担当者は準備会の存在を認めた上で「あらかじめ意見を聞き本会合をスムーズに進めたかった。秘密会合と言われても否定できず、反省している。(今後は)開催しない」と述べた。
福島県の県民健康管理調査は全県民を対象に原発事故後の健康状態を調べる。30年にわたり継続する方針で、費用は国と東電が出資した基金で賄う。
………………………………………………
■解説
◇揺らぐ信頼性
「データだけを明らかにすれば数字が独り歩きして住民の不安をあおりかねない」。原発事故に伴う福島県の県民健康管理調査で専門家が「秘密会」(準備会)を開いて調査結果への見解を事前にすり合わせていた背景には、県や関係者のこんな思惑がうかがえる。
検討委員会の山下俊一座長は公の場などでこれまで「今回の事故で誰も大量被ばくしていない。エビデンス(科学的根拠)から見て危険な人たちはほとんどいない」と繰り返し強調してきた。だが、秘密会では調査結果について本会合でどうやりとりするかの「シナリオ」まで事前に協議。県民の不安解消を目的とした調査結果への信頼を揺るがし「最初に結論ありき」だったとの不信感が高まるのは避けられない。
秘密会を今後は開かないという県の方針は当然だが、そこでどのような議論が交わされてきたのかも明らかにする必要がある。不信の払拭(ふっしょく)には徹底した情報公開しかない。
日赤に7000万円賠償命令…介護職員自殺 12.10.3
(読売新聞 2012.10.3)
介護職員だった男性(当時43歳)が自殺したのは、勤務先の施設を運営する山梨赤十字病院(富士河口湖町船津)が注意義務を怠ったことが原因だとして、県内に住む男性の妻ら遺族が同病院を運営する日本赤十字社(東京都港区)を相手取り、約8895万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2日、甲府地裁であった。
林正宏裁判長は「時間外労働の減少に向けた適切な指示をせずに漫然と放置していた」として病院側の責任を認定し、約6991万円を支払うよう命じた。
判決によると、男性は2005年8月から、山梨赤十字病院内にあるリハビリ施設「あかまつ」に勤務していた。施設の責任者に就任したことに伴って業務量が増加し、07年4月頃からうつ病の症状が出始め、同月24日、施設内の浴室で首をつって自殺した。男性の自殺については09年12月、都留労働基準監督署が労災認定した。
判決は男性の時間外労働について、自殺するまでの6か月間の1か月平均は99時間30分、自殺直前の1か月に限れば166時間を超えていたと認定。「施設の責任者に就任することで、男性の業務量は過重なものであった」とし、「業務と自殺に因果関係を認めることができる」と判断した。
さらに、病院側はタイムカードで男性の勤務状況を把握できたにもかかわらず、タイムカードの確認をせず、「労働者の心身の健康に配慮し、適切な業務遂行をなし得るような十分な支援態勢を整える注意義務を怠った」と指摘した。
遺族側は、男性の妻に対して約4447万円の支払いを求めていたが、判決は「遺族補償年金などを受給し、損害が補填(ほてん)されている」として約2544万円を支払うよう命じたため、支払い命令の総額は請求を下回った。
山梨赤十字病院の今野述(のぶる)院長は「判決の中身を詳細に検討した上で今後の対応を考える」とのコメントを発表した。
医療&健康ナビ 子宮頸がん健診 12.10.1
(毎日新聞社 2012.10.1)
◇使用器具で精度に差
「検診で早期発見すれば予防できる」とされる子宮頸(けい)がん。だが専門家は、検診で使う器具の種類や検診方法によって、異常が見落とされる恐れを指摘する。せっかくの検診を無駄にしないためには?
◇原因はウイルス
子宮頸がんは子宮の入り口(頸部)に発生する。原因はヒトパピローマウイルス(HPV)で、1度でも性交の経験があれば、年齢や回数にかかわらず感染の可能性がある。
国立がん研究センターによると、日本では年間約9000人が子宮頸がんと診断され、約2600人が死亡している。感染後がんになるまで約10年かかるとされるが、自覚症状がほとんどないため、検診で事前の異常を見付けることが不可欠だ。
検診は産婦人科医が専用ブラシなどで子宮頸部を軽くこすって細胞を採取。それを薬品で処理してスライドガラスにこすりつけたものを、細胞検査士が顕微鏡で調べる。
◇綿棒、見逃す恐れ
採取に使う器具は特に指定がない。検査を請け負う「日本セルネット」(京都市)の加藤順子さんらが11年に実施した調査によると、標本2万9680件のうち、綿棒を使い細胞を採取したものが1万9729件(66・5%)と突出して多く、ブラシ2997件(10・1%)、サイトピック570件(1・9%)――と続いた。異常(陽性)と異常が疑われた標本を器具別に分類すると、綿棒3・4%▽ブラシ8・0%▽サイトピック6・0%。綿棒とブラシの比較では有意差が認められた。
NPO「子宮頸がんを考える市民の会」副理事長で細胞検査士の高山須実子さんは「綿棒では、異変のある細胞を取り逃す恐れがある」と話す。
ブラシは1本40~80円程度と綿棒より高いため、普及が進まない原因になっているようだ。だが高山さんは「受診者は数十円を自己負担してでもブラシを選ぶのでは。精度の高い器具を標準で使うべきだ」と訴える。
◇欧米は感染有無も
そもそも、日本の検診受診率は、欧米と比べてかなり低い。OECD(経済協力開発機構)によると、米国が8割超、欧州諸国が7割前後なのに対し、日本は2割台前半にとどまり、加盟34カ国中で最低レベルという。
検診の方法も異なる。日本の子宮頸がん検診は現在、がんやがんの兆候となる異常な細胞がないかを調べる細胞診だけ。欧米ではさらに、発病原因であるHPVの感染の有無を調べるHPV検査を併用することが多い。HPV検査は将来の発がんリスクを知るのに有効とされ、USPSTF(米国予防医療専門委員会)は今年3月、併用検診を推奨する検診ガイドラインを出した。
東京女子医大病院産婦人科の平井康夫教授が、08~09年に併用検診を実施した2394人を調べたところ、細胞診が陰性(正常)でHPV検査が陽性だった人が104人いた。うち15人は細胞に異常があり、放っておくとがんになる可能性があることも分かったという。
「HPV検査を併用することで、発がん前に感染を検出でき、より確実に予防できる。効率よく検査でき、医療費も抑えられる」と平井教授は語る。
厚生労働省がん対策・健康増進課によると、併用検診を実施しているのは全国で26自治体だけ(10年1月現在)。だが、07年度から住民検診に併用検診を取り入れた島根県出雲市では、細胞診だけのころと比べ、異常を見付ける割合が約2・2倍に増え、検診助成費は約3割減ったという。
日本産婦人科医会がん対策委員会は昨年11月、併用検診について「精度が飛躍的に向上することが期待される」との見解を発表。世界的な流れを受け、同省は来年度から、検診にHPV検査を導入する方針だ。
ようやく国内でも始まった併用検診への流れに、子宮がんと卵巣がんの患者会「らんきゅう」管理人の女性(38)は期待する。自らも検診で「異常なし」と言われた半年後にがんが見つかり、29歳で子宮と卵巣を全摘した経験がある。女性は「検診の精度が高まるのなら一刻も早く導入し、私と同じような思いをする人を減らしてほしい」と訴えている。
医科歯科大、不正採血を謝罪 東京医科歯科大学が研究倫理違反を報告、処分方針と再発防止策示す 12.9.24
(臨床ニュース 2012.9.24)
東京医科歯科大学は9月21日、教員および大学院生が「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に違反し、倫理審査委員会の承認を得る前に患者から採血した事実を報告。臨床研究の関係者に謝罪し、今後の再発防止と公正な研究活動の確保を約束した。
今回の研究倫理違反は6月下旬に発覚。7月より調査委員会が調査を開始した。難治疾患研究所の教員と大学院生の2人が、医学部付属病院の教授の協力の下、臨床研究を計画。倫理審査委員会に2月28日に申請していたものの、承認前の4月から6月にかけて362人の患者から採血を実施していた。患者にはインフォームドコンセントを行い、同意書を得ていた。また、行われたのは採血のみで、実験はしていなかった。
大学は、今回協力した患者には文書により謝罪し、採取した検体および同意書については、廃棄する旨を説明したと報告。違反者については、懲戒委員会を設け、厳正に処分を行う予定という。報告書の中で具体的な再発防止策も列挙している。
【関連リンク】
研究倫理違反について
http://www.tmd.ac.jp/news/20120921/index.html
異例の保険指定取り消しへ 東京医大茨城医療センター 診療報酬不正で厚労省 12.9.21
(共同通信社 2012.9.21
茨城県阿見町の東京医大茨城医療センター(松崎靖司(まつざき・やすし)センター長)が診療報酬を不正請求していたとして、厚生労働省関東信越厚生局が、健康保険法に基づく保険医療機関の指定取り消し処分をする方針を固めたことが21日、関係者への取材で分かった。21日午後、発表する。
厚労省によると、少なくとも1998年度以降、大学病院が保険医療機関の指定を取り消されたことはなく、今回の処分は極めて異例。指定を取り消されると保険診療ができなくなり、医療費は全額患者負担となる。原則5年間は再指定されない。
同センターは、茨城県南部地域のがんや肝疾患の拠点病院に指定されている。センターによると、ベッド数は約500、毎月の利用患者数は入院が延べ約1万1千人、外来が延べ約2万6千人。指定が取り消されれば、地域医療にも大きな影響が出そうだ。
2009年7月、診療報酬の不適切な請求があり、約1億1870万円を国に返還すると同センターが発表した。厚生局が監査を進め、不正請求の期間や金額を詳しく調べていた。
同センターは「厚生局から通知が届いておらず、内容を把握していないため現時点ではコメントできない」としている。
※保険医療機関の処分
健康保険法は、厚生労働相が指定した病院や診療所、保険医登録した医師でなければ、保険制度に基づく医療を提供できないと規定。診療報酬の不正請求などで同法に違反し、悪質な場合は指定や登録が取り消される。再指定は原則5年間認められないが、地域への影響などを考慮し期間が短縮されたケースもある。厚労省によると、2010年度の医療機関の指定取り消しは11件、保険医登録の取り消しは13人で、診療報酬の返還額は約43億4千万円に上る。
※9月21日の記者会見は、『故意による不正請求と認定」、東京医大茨城医療センター』を参照。
論文ねつ造の多さ「不可解」- 日本麻酔科学会理事・澄川耕二氏に聞く 12.9.20
(医療維新m3.com 12.9.20)
東邦大元准教授の212本の論文、委員会で検証
一般紙に今夏、大々的に報じられた東邦大学の元准教授による論文ねつ造問題。日本麻酔科学会は調査特別委員会を設置し、今年6月に172本の論文を「ねつ造」とする報告書を提出、8月末には「永久に再入会を認めない」とする処分を下した(報告書は、同学会のホームページに掲載)。発覚の経緯や長年にわたり元准教授がねつ造論文を発表し続けた原因などについて、調査委員会の委員長を務めた学会の常務理事で、長崎大学麻酔学教室教授の澄川耕二氏に話を聞いた(2012年9月14日にインタビュー。計2回の連載)。
――まず今回の発覚の経緯を教えてください。
2011年7月に、元准教授が当時所属していた東邦大学に対して、「Clinical Therapeutics」などの海外ジャーナル5誌に提出した9本の論文について、これら5誌から、「ねつ造ではないか」という調査依頼が来ました。同大は内部調査を実施し、8本について、「施設内の倫理委員会を経て実施していない」との理由で、「諭旨免職」としました。その後、「Anaesthesia」が、元准教授の論文のデータについて、統計学的アプローチで調べたところ、100万回に1回にしか発生しないレベルのばらつきのないデータであることなどから、ねつ造の可能性が高くなりました。
(澄川耕二氏は、「ねつ造論文の中には77回引用されたものもあった」と疑問を投げかける。)
――委員会として、どのような調査をしたのでしょうか。
元准教授の論文のテーマは、手術後の麻酔の吐き気止めの効果と、犬を使った動物実験の2種類がほとんどでした。そこで、元准教授や共著者の所属していた施設の症例や動物の持ち出し記録を調べて、実際の論文と照らし合わせていきました。一本ずつ内容を精査した形です。本人への聞き取りも2回実施しました。ただ、本人は「覚えていない」などと話し、ねつ造は認めませんでしたが、言い分を確かめるために、共著者や周辺で勤務していた人への聞き取りもやりました。
――ねつ造を認定した論文の本数はどれくらいあったのでしょうか。
調査対象となったのは、元准教授が1990年から2011年にかけて書いた原著論文212本です。そのうち、172本をねつ造と断定しました(編集部注:残りの37本は「ねつ造かどうか判定できない」、3本は「ねつ造なし」)。
――ねつ造と断定するのは難しい作業だったのではありませんか。
施設に記録のある症例数と、実際に提出された論文の症例数を照らし合わせました。その結果、元准教授が入手できるデータの数倍から数十倍の症例が、論文内で扱われていて、多くの論文が「書くことが不可能」という結論になり、断定しました。中絶手術後の患者の吐き気止め効果を試した論文を例に取ると、1999年9月から2001年3月に、准教授が当時所属していた筑波大学で担当した中絶が32件だったのに対して、論文上は120件ありました(編集部注:元准教授が担当しなかった症例を含めても99件)。
――一部の論文について「ねつ造」と断定できなかった理由は。
これについては、周辺の人への聞き取りで「実験はしていた」という話が出て、なおかつ施設側の動物の管理記録などの証拠が残っていないケースが多かったからです。
――主なねつ造論文の方法は。
初期のころから、大規模なランダム化比較試験(RCT)で、二重盲検法を用いたねつ造論文が目立ちます。RCTの場合は症例数が100を超える大規模なものが多いのですが、実際に症例を水増ししていました。実際には一度も試したことのない症例で、論文を書いていたこともあります。RCTは、エビデンスレベルで最も信頼度が高い調査法として、世界的に認められています。インパクトファクターを重視して、医療界に貢献することを目的とするジャーナル側からしても、ぜひ掲載したい論文だったのではないかと思います。実際に元准教授の論文で、最も引用回数が多かったのは77回となっています。「Nature」や「Science」といった世界的に有名な雑誌の論文でも、平均20回程度ですから、多くの人が興味を持った論文だったのでしょう。ただ、今年になって海外ジャーナルが統計学的なアプロ―チで、元准教授のデータの信頼性について指摘しましたが、大規模なRCTだからこそ指摘が可能になった側面もあります。
――データの捏造はどのようにしたのでしょうか。
最初のうちは、周辺の人への聞き取りなどからして、実際に実験をしていたようです。ただその後、論文に出てくる症例数100件のうち、1件から3件ほどしか実施していない例が出てきて、さらに進むと実際の作業を全くしていないケースが出てきました。グラニセトロンという薬の使用例はほとんどないにもかかわらず、婦人科系の手術、胆のう摘出手術、乳がん手術の症例で使ったという論文を立て続けに書いています。これについては、すべて机の上で組み立てたデータと見られます。
――最初に調査をした東邦大学は諭旨免職の理由として「倫理委員会の審査を受けていない」ことで、「ねつ造」が理由ではありません。
ねつ造と判断するには、多くの決定的な証拠を集めなくてはいけません。しっかりとした調査ができない場合、「地位保全」を訴えた裁判では、訴えが認められるケースが多いのが実情です。施設としてもねつ造の調査には消極的な側面があるのが事実で、しっかりと証拠が示せる理由で論旨免職にしたのだと思います。
――元准教授は疑惑について、どう話しましたか。
最初の面接で、本人は「すべて自分の担当した症例でやった」と明言しました。ただ、生データは「シュレッダーにかけるなどして捨てた」と説明しました。症例数が合わないことを指摘しても、「分からない」などと話しています。実験のための生データは、カルテと違って、保存義務がありません。逆手に取れば、生データがなければ、「ねつ造の決定的な証拠がない」という状態になります。また、RCTは実施に当たり、割り付け作業が必要になるのですが、本人は「共著者がやった」などと話していますが、共著者に聞くと否定して、言い分が食い違っている状態です。元准教授は常に言い訳を探して、弁明しているように感じました。
――元准教授の論文数は多いのでしょうか。
どう考えも多いです。1年間に10本近く書いていた計算になりますが、臨床医をやりながら研究をしていたとなると考えられない本数です。通常で考えると、教授や講師は5年の任期の間に評価を受ける場合、求められるのは年間1、2本程度です。その意味で、なぜこんな膨大な数の論文を書いたのか不明です。
――論文は元准教授の出世に影響したのでしょうか。
大学で元准教授や講師になるに当たって、論文のリストを提出していると思いますし、影響していると考えられます。それでも、本数の多さは不可解です。
【掲載スケジュール】
Vol.1◆論文ねつ造の多さ「不可解」
東邦大元准教授の212本の論文、委員会で検証
Vol.2◆共著者がねつ造阻止できたはず
学会は共著者も処分、「通報窓口」を設置へ
アドボカシー団体INCAは「歯科保健条例」に、有害なフッ化物応用記載の回避を求める「要望書」提出:山梨県議会宛 2012.9.18
(要望書6ページ)
カルテ開示で印刷ミス 名大病院、259人分 12.9.18
(共同通信社 2012.9.18)
名古屋大病院は14日、電子カルテの印刷プログラムに不具合があり、2003年4月~今年7月に開示した259人分に、実施していない診療行為を記載するなど486件の誤りがあったと明らかにした。
カルテは患者や家族だけでなく、損害保険会社や裁判所、警察などにも提出されており、補償や捜査関係書類として利用された可能性があるという。
灰色で表示し削除を表現するべきところをそのまま印刷したケースが355件、医師が注射や薬の処方を取り消したが取り消し線がなかったのが33件など。医師が開示前に内容を確認していたが、別の部署で印刷しチェックできなかった。
カルテを見た患者が7月「処方が取り消された薬が、処方されたことになっている」と指摘し、判明した。
松尾清一(まつお・せいいち)院長は「信頼性にかかわる重大な出来事として深刻に受け止めている。患者や関係機関に大変な迷惑を掛けた」と陳謝した。
健保組合8割が赤字…拠出金負担増、解散も増加 12.9.14
(読売新聞 2012.9.14)
健康保険組合連合会(健保連)は13日、大企業の会社員や家族が加入する健康保険組合の2011年度決算見込みが3489億円の赤字になったと発表した。
赤字総額は4年連続で3000億円を超え、赤字組合は全体の8割の1101組合に達した。
保険料収入は前年度比約6%増となったが、高齢者医療を支える拠出金負担は同2302億円増の2兆8721億円と過去最高となり、保険料収入の44%に膨らんだことなどが影響した。
厳しい財政状況に対応するため約4割にあたる571組合が保険料率を引き上げた。財政難から解散に追い込まれる組合も増加傾向にあり、12年3月の組合数は1443組合と、前年同期(1458組合)から15組合減少した。
死刑執行50年、再審目指す ハンセン病差別が背景 熊本の「菊池事件」 12.9.14
(共同通信社 2012.9.14)
熊本県内の村の元職員を殺害した罪に問われた熊本県のハンセン病元患者の男性が、無実を訴えながら死刑執行されてから14日で50年。この「菊池事件」の背景には、ハンセン病患者への差別があったとされる。弁護団は、男性が公平な裁判を受けられなかったとして、11月に再審請求に向けた手続きに入る方針だ。
男性は1951年と52年に逮捕され、公判は裁判所法に基づき、熊本県合志市の国立療養所「菊池恵楓園」に設置された特別法廷で開かれた。
弁護団が問題視するのは、入所者や家族以外の一般傍聴を認めず、実質的に非公開で進められた点。弁護団の国宗直子(くにむね・なおこ)弁護士は「公開の裁判を受ける権利が損なわれ憲法違反だ」と主張する。
さらに弁護団は、裁判官や書記官は感染を恐れて予防服やマスクを着け、証拠品は菜箸で扱うなど、異様な手続きだったことも「公平な裁判を受けられる状況ではなかった」と厳しく批判している。
こうした法廷で、男性は2回とも無罪を主張した。しかし、弁護側は検察官が証拠請求した調書にすべて同意し、男性が殺害を認める発言をしたとする調書などが有罪の証拠とされ、反対尋問もなかった。
執行前の男性と面識があった菊池恵楓園入所者自治会の志村康(しむら・やすし)副会長(79)は「当時の隔離政策で、ハンセン病患者への差別意識が背景にあった」と指摘する。男性が事件を起こした動機は、被害者が男性をハンセン病患者として県に報告したことの恨みとされた。
弁護団や入所者は、五十回忌の昨年9月、本格的な活動を開始した。再審請求の権限がある遺族が請求に慎重な姿勢のため、熊本地検に再審請求するよう要請する。実現へのハードルは高いが、志村さんは「再審で男性の名誉を取り戻したい。それが私の最後の使命だ」と話している。
※菊池事件
1951年8月1日、熊本県内の村の元職員宅でダイナマイトが爆発し、菊池恵楓園への入所勧告を受けていた近所に住む男性が2日後、殺人未遂容疑で逮捕された。元職員が男性をハンセン病患者として熊本県に報告したことの逆恨みが動機とされた。男性は無罪を訴えたが52年6月9日、一審で懲役10年の有罪判決を受けた。男性は控訴後、6月16日に拘置所から脱走。約3週間後に元職員が刺殺体で見つかり、逃亡中だった男性が殺人容疑などで逮捕された。再び無罪を訴えたが、57年9月25日に死刑が確定した。62年9月13日に3度目の再審請求が棄却され、翌14日に死刑が執行された。
個人情報入りPC盗難 沖縄県立中部病院 12.9.14
(共同通信社 2012.9.14)
沖縄県は13日、県立中部病院(うるま市)で、患者やその家族など665人の個人情報が入ったノートパソコンが盗まれ、容疑者が県警に逮捕されたと発表した。パソコンは転売され見つかっていないという。
県によると、盗難があったのは8月9日午前10時ごろ。嘱託職員の30代女性が、パソコンを病院のロビーの机に置き、トイレに入っている間になくなったという。
パソコンには、患者の名前や病気の症状などの情報が入っていた。
病院は同日、盗難届を県警に提出。県警によると、8月20日に別の事件で逮捕した男(38)が同病院での窃盗を認めたため、今月10日に追送検した。男はパソコンを中古品販売店に売却、その後転売されていた。
県病院事業局の伊江朝次(いえ・ともつぐ)局長は記者会見し「患者やご家族に多大なご迷惑と心配をかけた」と謝罪した。
脳内タンパク質減少が一因 統合失調症の認知障害 12.9.14
(共同通信社 2012.9.14)
統合失調症の患者にみられる思考力や注意力の低下といった認知機能の障害が、タンパク質の一種「LHX6」が脳内で減少していることにより引き起こされる可能性が高いことを金沢大などの研究チームが突き止め、14日付の米精神医学誌(電子版)に発表した。
統合失調症は100人に1人の割合で発症。幻覚や妄想といった症状に対する治療薬は存在するが、認知機能障害には有効な治療法が確立されていない。LHX6の働きを明らかにすることで治療法の開発につながる可能性があるという。
チームは、認知機能の中枢を担う脳内の「前頭前野」と呼ばれる部分に着目。米国の脳バンクを利用し、統合失調症の患者42人と精神疾患にかかったことがない42人の前頭前野を比較した。
その結果、患者20人の前頭前野でLHX6の量が平均で約22%減少しており、さらに認知機能の調節で大きな役割を持つ神経細胞の分子も32~46%減少していることが判明した。
LHX6にはこの神経細胞の発達を促す働きがあることから、前頭前野でのLHX6の不足が神経細胞の働きを悪化させ、一部の患者の認知機能に障害を起こしているとみられる。
※米精神医学誌は「アメリカン・ジャーナル・オブ・サイカイアトリー」
がん細胞転移 解明の糸口 「成長因子」関与確認 12.9.13
(読売新聞 2012.9.13)
県がんセンター研究所 抑制剤開発に期待
県がんセンター研究所(名古屋市千種区)は、がん転移のメカニズムのうち、がん細胞が移動しやすくなる「上皮間葉転換」が起き、がん細胞が血管内で止まるために必要な「シアリルルイス糖鎖」を備えるという二つのステップが、上皮成長因子というたんぱく質の関与で同時に起こることを、大腸がんを対象とした研究で発見した。転移しやすいがん細胞発生の仕組みを解明する糸口になると期待されている。
発見したのは、同研究所分子病態学部の佐久間圭一朗主任研究員、青木正博部長と、愛知医科大学先端医学研究センターの神奈木玲児博士の共同研究グループ。札幌市内で19日から開かれる第71回日本癌学会学術総会で発表する。
最初にできたがんの細胞が、がん組織を離れて血管を移動し、別の臓器に広がっていく転移は、がん根治を困難にする最大の障壁だが、転移のメカニズムは複雑で、未解明の部分が多い。
今回の研究の対象となった上皮間葉転換とは、がん細胞が動きやすくなる現象で、血管を出入りしたり、臓器に浸潤したりすることができるようになる。シアリルルイス糖鎖は血液中のがん細胞が血管壁に着地するための足にあたり、着地したがん細胞が血管から臓器に入り、転移がんとなる。
佐久間さんによると、シャーレの中で培養した大腸がん細胞に上皮成長因子の試薬を与え、細胞の栄養分である血清は与えなかったところ、これまで上皮成長因子との関係が示唆されていた上皮間葉転換だけでなく、シアリルルイス糖鎖もつくられていた。
比較のため、患者から摘出された大腸がんの検体を調べると、がん組織の末端で、正常細胞と接している部分で、上皮間葉転換とシアリルルイス糖鎖の双方が備わり、転移準備が完了したがん細胞が見つかった。
上皮成長因子は正常細胞、がん細胞のどちらからも分泌される。また、増殖の早いがん組織では、しばしば血流が不足し、栄養や酸素が不足しがちになる。佐久間さんは「そのような環境が、がん細胞にシャーレの中と同じような変化を引き起こしている可能性がある」という。
佐久間さんは「今回の発見をきっかけに転移の分子メカニズムを解明し、それらの分子を標的とした転移抑制剤を開発したい」と話している。
がん細胞転移 解明の糸口 「成長因子」関与確認 12.9.13
(読売新聞 2012.9.13)
県がんセンター研究所 抑制剤開発に期待
県がんセンター研究所(名古屋市千種区)は、がん転移のメカニズムのうち、がん細胞が移動しやすくなる「上皮間葉転換」が起き、がん細胞が血管内で止まるために必要な「シアリルルイス糖鎖」を備えるという二つのステップが、上皮成長因子というたんぱく質の関与で同時に起こることを、大腸がんを対象とした研究で発見した。転移しやすいがん細胞発生の仕組みを解明する糸口になると期待されている。
発見したのは、同研究所分子病態学部の佐久間圭一朗主任研究員、青木正博部長と、愛知医科大学先端医学研究センターの神奈木玲児博士の共同研究グループ。札幌市内で19日から開かれる第71回日本癌学会学術総会で発表する。
最初にできたがんの細胞が、がん組織を離れて血管を移動し、別の臓器に広がっていく転移は、がん根治を困難にする最大の障壁だが、転移のメカニズムは複雑で、未解明の部分が多い。
今回の研究の対象となった上皮間葉転換とは、がん細胞が動きやすくなる現象で、血管を出入りしたり、臓器に浸潤したりすることができるようになる。シアリルルイス糖鎖は血液中のがん細胞が血管壁に着地するための足にあたり、着地したがん細胞が血管から臓器に入り、転移がんとなる。
佐久間さんによると、シャーレの中で培養した大腸がん細胞に上皮成長因子の試薬を与え、細胞の栄養分である血清は与えなかったところ、これまで上皮成長因子との関係が示唆されていた上皮間葉転換だけでなく、シアリルルイス糖鎖もつくられていた。
比較のため、患者から摘出された大腸がんの検体を調べると、がん組織の末端で、正常細胞と接している部分で、上皮間葉転換とシアリルルイス糖鎖の双方が備わり、転移準備が完了したがん細胞が見つかった。
上皮成長因子は正常細胞、がん細胞のどちらからも分泌される。また、増殖の早いがん組織では、しばしば血流が不足し、栄養や酸素が不足しがちになる。佐久間さんは「そのような環境が、がん細胞にシャーレの中と同じような変化を引き起こしている可能性がある」という。
佐久間さんは「今回の発見をきっかけに転移の分子メカニズムを解明し、それらの分子を標的とした転移抑制剤を開発したい」と話している。
骨治療薬投与後に2人死亡 厚労省、注意改訂を指示 12.9.12
(共同通信社 2012.9.12)
厚生労働省は11日、転移したがんが骨の組織を壊すのを抑える骨病変治療薬「ランマーク」の投与を受けた男性2人が副作用の低カルシウム血症を起こし、後に死亡したと発表した。
厚労省は副作用と死亡との因果関係が否定できないと判断。製造販売元の第一三共に、使用上の注意を改訂して低カルシウム血症への注意喚起を徹底するよう指示した。
カルシウムは体内で神経の興奮や筋肉の収縮などに関わり、血中濃度が低くなると手足のしびれや不整脈などの症状が現れることがある。
ランマークは今年4月に販売が始まり、国内では推定約7300人が使用している。
骨病変治療薬で死亡例、製薬会社に注意記載指示 12.9.11
(読売新聞 2012.9.11)
厚生労働省は11日、骨病変治療薬「ランマーク」(一般名・デノスマブ)を使った男性患者2人が低カルシウム血症とみられる症状で死亡したと発表した。
同省は、製造販売業者の第一三共に対し、薬の「使用上の注意」に警告欄を設け、投与前後に血中カルシウム濃度を頻繁に測定するなどの注意事項を記載するよう指示した。同省によると、この薬を投与された患者は推定約7300人。
個人情報流出に懸念 納税、年金手続き簡略化 「大型サイド」マイナンバー法案 12.8.22
(共同通信社 2012.8.22)
国民に番号を割り振って納税や年金の情報を管理するマイナンバー法案が今国会の残る焦点の一つになっている。消費税増税が柱の社会保障と税の一体改革は低所得者対策にこの番号を使うことを視野に入れており、民主、自民、公明3党は7月、法案修正に大筋合意。だが衆院解散をめぐる対立のあおりで成立への道筋はなおも見えない。
その間も政府は、行政手続き簡略化や、別番号で個人医療情報も管理できるマイナンバーの利点をアピールしているが、情報流出への懸念がぬぐい切れていない。
▽一体改革の前提
「一日も早く審議し成立させていただきたい」。一体改革関連法が成立した10日。古川元久国家戦略担当相はマイナンバー法案の重要性を訴えた。
マイナンバーは、2015年1月から番号カードを住民票がある個人に配り、利用開始する計画だ。米国やスウェーデンで先例があり、日本でも自民党政権時代の1980年に「グリーンカード制度」の法律が成立したが、所得把握を含む国の監視強化に反発が強まり、実施前に廃止された。
ところが07年、年金保険料を納めたのに旧社会保険庁に記録が残っていないなどの問題が発覚。これが転職を重ねても年金記録を管理しやすいマイナンバー導入を後押しした。今回は国会で圧倒的多数の民自公3党が賛成の立場で「グリーンカードには慎重だった日本商工会議所も推進側だ」(政府関係者)と政府側はリベンジに燃える。
消費税増税の緩衝材としての役割も加わった。低所得者が納めた所得税を払い戻したり、現金を支給したりする「給付付き税額控除」、医療や介護を合わせた世帯ごとの自己負担額に上限を設ける「総合合算制度」もマイナンバーが前提だ。
さらに東日本大震災を機に、災害時の医療体制を支える側面がクローズアップされている。
▽災害医療で期待
「先生、糖尿病の薬をください」。11年の大震災発生直後、医療支援で宮城県沿岸部へ入った中国地方の男性医師は、患者にすれば、ごく当たり前の要求かもしれない、その言葉に戸惑った。
カルテは津波で流され、検査機器も海水をかぶって使えない。適切でない薬を渡せば命に関わるため確かめる方法がない以上、「薬は出せません」と言うしかなかった。
個人ごとの番号を医療情報と結び付けて管理すれば、かかりつけの病院が被災しても、別の医療機関が投薬情報や持病を確認できるようになる。
ただ多くの行政機関や企業が利用するマイナンバーに医療情報を直結させるとプライバシー流出の可能性が高まる。そこで政府はマイナンバーとは別の、限られた人だけがアクセスできる番号で医療情報を管理するため新たな法案を来年の通常国会に提出する方針だ。
▽立ち入り検査も
マイナンバー法案は情報漏えい防止のため、国や自治体へ立ち入り検査できる権限を第三者機関に付与。漏えいに関わった行政職員らには4年以下の懲役を科す。
それでも心配の声は残る。日本弁護士連合会情報問題対策委員長の清水勉弁護士は「情報にアクセスできる人間が多くなるほど流出、漏えいの危険は高まる」と警鐘を鳴らす。公務員らのモラルが完全ではない以上、プライバシー侵害の危険と背中合わせの制度となるのは避けられない。
ベンゾジアゼピン系薬剤の副作用や薬物依存の症状や、減薬のための「アシュトンマニュアル」日本語版が公開 12.8.23
(読売新聞 12.8.23)
抗不安薬や睡眠薬として多く使われるベンゾジアゼピン系薬剤を長期に服用した場合の、副作用や薬物依存の症状や、減薬するための手順などを記した「アシュトンマニュアル」の日本語版が19日、インターネットで公開された。
次のアドレスで日本の国旗をクリックする。
http://www.benzo.org.uk/manual/index.htm
(日本語版:http://www.benzo.org.uk/amisc/japan.pdf)
日本初、うつ病の学会指針を公表 12.7.27
日本うつ病学会が最新エビデンスや現場の実情を踏まえて作成
(m3.com:2012.7.27 日本うつ病学会)
日本うつ病学会気分障害の治療ガイドライン作成委員会は7月26日、「日本うつ病学会治療ガイドライン II.大うつ病性障害2012」を発表した。学会ホームページで全文を読むことができる。
学会が発表するガイドラインとしては日本初。従来よく参照されていた「気分障害の薬物治療アルゴリズム」(精神科薬物療法研究会)は、2003年以降は改訂されていない。このたび学会は、新規抗うつ薬の新たな副作用の報告や有効性に関する国際的な議論を踏まえ、最新のエビデンスや医療体制、日常診療の実情に沿ったガイドラインを作成した。「うつ病治療計画の策定」「軽症うつ病」「中等症・重症うつ病(精神病性の特徴を伴わないもの)」「神病性うつ病」の大項目より成る。
特徴の一つに、「治療アルゴリズムを作成しなかった」ことがある。作成委員会は、「気分障害の薬物治療アルゴリズム」で示されていたアルゴリズムは、本文理解の一助という位置付けから逸脱して一人歩きし始め、通り一遍の治療が広がった感があると考えたため。今回はあくまで本文理解の一助として、巻末に要約を掲載している。
作成委員会は、基本的に精神科専門医が利用することを想定している。大うつ病の治療は困難を伴うことから、非専門医が利用する際には、成書や講習会などでうつ病治療の最低限の知識を付けてからが望ましい。うつ病の重症度を判定するのは容易ではないため、軽症うつ病の治療の項目のみ読んで参考にするのではなく、全章を通読したうえで活用してほしいと訴えている。
【関連リンク】
日本うつ病学会治療ガイドライン II.大うつ病性障害2012 Ver.1
http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/0726.pdf
安易な薬使用に警鐘 うつ病多様化で指針 学会、医師向けに初 12.7.27
(共同通信社 12.7.27 )
日本うつ病学会は27日までに、多様化するうつ病を適切に治療するための医師向け指針をまとめた。次々に開発されている抗うつ薬の有効性や副作用に関する情報を盛り込み、軽症者の安易な薬物療法に警鐘を鳴らしたのが特徴だ。学会が指針をつくるのは初めて。
厚生労働省の推計によると、国内のうつ病の患者数は1999年の約24万人から、2008年には70万人を超え急増。年間3万人を超える自殺の主な原因ともされている。同学会は最新の医学的知見を盛り込み、現在の医療体制や現場の実情を考慮した指針が必要と判断した。
指針は、急増している患者の多くは軽症か、うつ病の診断基準以下の「抑うつ状態」と推測されると指摘。臨床現場では「慎重な判断が求められる」とした。軽症者に抗うつ薬の使用を始めるには、焦燥感や不安感の増大などの副作用に注意して、少量から始めることを原則とする。
一方で、乱用や転売目的で抗不安薬や睡眠薬を入手するための受診が社会問題化しているとして「大量処方や漫然とした処方は避けるべきだ」と明記。「安易に薬物療法を行うことは厳に慎まなければならない」と強調している。
若者に多くみられ、仕事ではうつ状態になるが余暇は楽しく過ごせるような、いわゆる「新型うつ病」に関しては、「精神医学的に深く考察されたものではない」として取り上げていなかった。
治療に関する指針は、厚生労働省の研究グループが03年に策定したが、その後改訂されていない。
====
初の標準的な指針 関係者談話:
日本うつ病学会の指針作成委員会委員長を務めた野村総一郎(のむら・そういちろう)防衛医大教授(臨床精神医学)の話 うつ病は近年、治療法と効果の症例が世界的に蓄積し、その知見を集め治療に役立てることが必要とされていた。今回初めてそのような標準的な指針が出来た。患者によってベストな治療は異なるため、指針は臨床医が治療法を決めるための一つの参考となるだろう。軽症者の場合、必ずしも薬を投与しなくていい症例も報告されており、機械的に投与すべきではない。安易な薬物投与につながる恐れのある治療の(具体的な)手順は示さなかった。
ヤマイモ成分にアルツハイマー改善効果…富山大 12.7.26
(読売新聞 2012.7.26)
ヤマイモなどに含まれる成分にアルツハイマー病を改善する作用があることを、富山大学和漢医薬学総合研究所の東田千尋准教授(46)らの研究グループが動物実験で突き止めた。
病変した神経細胞を回復させる効果も確認され、治療薬開発につながると期待される。
成分は、ヤマイモなどに含まれ、強壮作用があるとされる化合物ジオスゲニン。実験では、アルツハイマー病を発症させたマウスに1日0・12ミリ・グラムずつ、20日間連続で注射した。その後、記憶力を試すと、注射していないマウスが30分前に見た物体に初めて見るような反応を示したのに対し、注射したマウスは正常なマウスと同じく既知の物体と認識した。
アルツハイマー病はアミロイドβ(ベータ)と呼ばれるたんぱく質が脳内に蓄積することで、神経細胞から伸びた突起「軸索」が病変を起こして記憶に障害が出る。実験では、ジオスゲニンの投与でアミロイドβが約7割減少し、さらに、軸索が正常な状態に戻っていたことが分かった。
ハンセン病療養所 41年ぶりハンストへ 職員削減に抗議 12.7.19
(毎日新聞社 2012.7.19)
全国13の国立ハンセン病療養所入所者でつくる「全国ハンセン病療養所入所者協議会」(全療協)は18日、東京都内で会合を開き、ハンセン病療養所勤務の職員が削減され続けていることに抗議するため、近く東京・霞が関の厚生労働省前での座り込みやハンガーストライキなどの実力行使に踏み切ることを決めた。実力行使は1971年以来41年ぶりとなる。
全療協は1951年の発足以来、患者隔離を定めた「らい予防法」(96年廃止)の改正や療養所の処遇改善を訴えて、旧厚生省での座り込みなどを繰り返していた。近年は入所者の減少や高齢化もあり、行政との対話による解決を目指してきた。
政府は01年のハンセン病国賠訴訟の控訴断念を受け、国の法的責任に基づいて療養所の生活や医療の充実に最大限努めることを約束。さらに、療養所を現行の定員削減計画の対象外とする決議が衆参両院で採択された。
だが、国は「削減計画は閣議で決められ、療養所だけを除外できない」として看護や介護職の削減が進められ、生活や医療の水準の低下が続いている。全療協の神(こう)美知宏会長は「国は口先だけの対応に終始している。入所者を守るため、命をかけて行動したい」と話している。
期限延長求め10万人署名 水俣病救済、被害者ら提出 12.7.19
(共同通信社 2012.7.19)
水俣病特別措置法に基づく救済策の申請受け付けが7月末に締め切られるのに抗議し、新潟、熊本両県の被害者団体が18日、期限延長を求める約10万2千人分の署名を環境省に提出した。
署名は5月以降、新潟、熊本、鹿児島の3県を中心に被害者団体や支援者らが集めた。細野豪志環境相宛てで「さまざまな理由で申請できなかった被害者は(締め切りによって)放置、切り捨てられることになり、紛争が再燃するのは必至だ」としている。
環境省の担当者に署名提出後、水俣病不知火患者会(熊本県水俣市)の大石利生(おおいし・としお)会長(72)は「申請期限を切ってもわたしたちの症状はなくならない」と国の対応を批判。新潟水俣病阿賀野患者会(新潟市)の山崎昭正(やまざき・あきまさ)会長(70)は「まだまだ潜在患者が出てくる。1人もいなくなるまで窓口は恒久的に開けてほしい」と訴えた。
不知火患者会は、新たな治療法の開発や介護手当の支給を求める要望書も環境省に提出した。
抗がん剤等の「使用上の注意」改訂指示--厚労省 12.7.19
(薬事ニュース 2012.7.19)
厚生労働省は7月10日、(1)疼痛治療剤「プレガバリン」(2)抗リウマチ剤「メトトレキサート(錠剤2mg、カプセル剤)」(3)「インフルエンザHAワクチン」(4)糖尿病用剤「メトホルミン塩酸塩」(5)血小板増加薬「エルトロンボパグ オラミン」(6)骨病変治療薬「デノスマブ(遺伝子組換え)」(7)抗がん剤「テムシロリムス」(8)抗がん剤「ニロチニブ塩酸塩水和物」(9)真菌症治療剤「ボリコナゾール」(10)合成抗菌剤「シタフロキサシン水和物」(11)合成抗菌剤「シプロフロキサシン」「塩酸シプロフロキサシン」(12)抗ウイルス剤「アデホビル ピボキシル」(13)抗ウイルス剤「ファムシクロビル」--について、「使用上の注意」の改訂を行うよう日本製薬団体連合会(日薬連)宛てに通知を発出した。ブルーレターの指示は出ていない。
がん対策「問題あり」7府県…群馬・埼玉・京都… 12.7.19
(読売新聞 2012.7.19)
厚生労働省研究班(代表=今井博久・国立保健医療科学院統括研究官)は、各都道府県のがん対策推進計画や実行計画書(アクションプラン)の評価報告をまとめ、群馬、埼玉など7府県について、「がん対策推進が懸念される」として、改善を求めた。
がん対策推進計画は、2007年施行のがん対策基本法で義務づけられている。評価は、計画に改善を促し、がん医療の地域格差の解消を目指す目的で行われた。「懸念」が指摘されたのは、群馬、埼玉、京都、和歌山、高知、香川、熊本の各府県。研究班は、「10年以内にがん死亡率を20%下げる」などの国の目標に基づいて各都道府県が作成した推進計画を予防、検診など6分野224項目に分けて点数化し、偏差値を算出。さらに推進計画を具体化する実行計画書を3分野に、5段階で評価した。
山形分子疫学コホート研究 調査同意、1万人超え 山形大 12.7.18
(毎日新聞社 2012.7.18)
山形分子疫学コホート研究:調査同意、1万人超え--山大 /山形
山形大医学部は、「山形分子疫学コホート研究」に協力を同意した調査同意者が1万460人に達したと発表した。一定規模の集団(コホート)を対象に追跡調査を行う研究で、調査対象者が1万人を超えたケースは国内ではまれ。
生活習慣などの環境要因と遺伝的要因がどう病気の発症に関わるかを調べている。県内各地での特定健診(メタボ健診)などの際に40歳から74歳までの男女を対象に協力を呼びかけ、血液などの提供を受けて調査する。
研究が進むと、原因が組み合わさって発症した疾患の病態解明や、新薬の開発などに役立つと期待されている。また、個々人の体質に応じて治療法を選択することも将来的には実現できるという。
ワクチン接種拡大 航空で参入促進 成長へ規制改革案 12.7.4
(共同通信社 2012.7.4)
政府の規制・制度改革を議論する有識者委員会(委員長・岡素之住友商事相談役)は3日、予防接種ワクチンの対象拡大をはじめ航空機の整備、大型コンテナ用車両の走行に関する規制緩和を柱とする計41項目の改革案を公表した。医療や航空など成長分野での新規参入を促すとともに、東日本大震災からの復興を加速させるのが狙いだ。7月中旬に閣議決定する。
各府省庁による実施状況は行政刷新会議(議長・野田佳彦首相)が検証する。行政改革担当相を兼務する岡田克也副総理は記者会見で「(規制改革の必要性を)指摘した以上は全て実現する」と述べた。
日本は予防接種法に基づいて公費助成される定期予防接種ワクチンの対象が欧米諸国に比べて限られており、世界保健機関(WHO)が推奨する子宮頸(けい)がんやインフルエンザ菌b型(ヒブ)、おたふくかぜなども含まれていない。対象になれば低負担で受けられるようになる。医療機器の承認手続き迅速化に向けた薬事法の改正も目指す。
航空分野では、航空機の整備事業に関する国土交通省と経済産業省の規制が重複していると指摘し、経産省所管の航空機製造事業法に基づく規制を抜本的に見直す。整備の外部委託を可能にすることで格安航空会社(LCC)の新規参入を容易にする。
復興の鍵を握る物流促進策として、大型の「45フィートコンテナ」を輸送する車両走行に先導車を求める規制の緩和が必要とし、国内各地で調査を進める。
難航する欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の締結交渉入りを見据え、EUが求める食品添加物の指定手続き簡素化も検討する。
※予防接種
毒性を弱めた病原体などのワクチンを投与して免疫をつけ、感染症を防いだり、軽減したりする方法。希望する人が費用を自ら負担して受ける任意接種と、予防接種法に基づいて市町村が実施する定期接種がある。定期接種にはジフテリアや結核、日本脳炎などの「1類疾病」と、高齢者の季節性インフルエンザを対象にした「2類疾病」がある。1類は接種を受けるよう努力義務が課されている。
慶応大教授らを停職処分 骨髄液無断採取で 12.7.4
(共同通信社 2012.7.4)
慶応大病院(東京都新宿区)の医師が無断で患者の肋骨(ろっこつ)から骨髄液を採っていた問題で、慶応大は3日、呼吸器外科の50代の教授と40代の専任講師を5月1日付で停職1カ月の懲戒処分にしたと発表した。教授と講師は6月30日付で辞職した。
調査の結果、同意なしに骨髄液を採取された患者は31人。別の研究で、採血したが同意を得たか確認できない患者が27人いた。患者やその家族には説明と謝罪をした。
慶応大は調査結果と再発防止策を厚生労働省に報告。「深く反省し、信頼回復に全力を傾注致します」とのコメントを出した。
慶応大は臨床研究の研究者に対し、倫理セミナーの受講を必須とした。また、審査・監督体制の見直しや法令順守強化などの再発防止策をホームページで公表した。
教授らは厚労省の「臨床研究に関する倫理指針」に違反し、同意を得ないまま肺がん患者や他の病気の患者から骨髄液や血液を採取。ことし1月、病院長宛てに告発の手紙が届き、発覚した。
[社会保障] 医療情報の過失による漏洩、処罰すべきか否かが大きな論点に 12.7.3
(厚生政策情報センター 2012.7.3)
社会保障分野サブワーキンググループ・医療機関等における個人情報保護のあり方に関する検討会 合同開催(第6回 6/29)《厚生労働省》
厚生労働省は6月29日に、「社会保障分野サブワーキンググループ」と「医療機関等における個人情報保護のあり方に関する検討会」の合同会合を開いた。この日は、マイナンバーに関連する医療分野特別法の学術研究分野・地方自治体への適用のあり方や、罰則について議論を行った。
このテーマに関連して、(1)自治医大の永井教授(2)山梨大大学院の山縣教授(社会医学講座)(3)後藤構成員(三鷹市企画部地域情報化担当部長)(p21~p32参照)(4)鈴木構成員(新潟大大学院法学研究科教授)(5)冨山構成員(日歯常務理事)(p44~p47参照)―の5氏から意見発表が行われている。
(1)の永井教授は、医学研究者の立場から発言。そこでは「医療と臨床研究は不可分であり、患者は自ら受けている医療が『根拠に基づくもの』であると知る権利がある」ことを強調。そのうえで、医学研究への「刑事罰」導入は、臨床研究において過度の萎縮をもたらすものであるとし、医療特別法において「医学研究は罰則の対象から除外すべき」との見解を披露している(p3~p7参照)。
(2)の山縣教授も、同じく医学研究者の立場から発言。医療共通番号を学術研究に活用することは、医療・医学にとって大きなメリットとなるが、「医療特別法によって、医療機関等が研究目的の情報提供に萎縮することのないよう、監督省庁が通知等で医療機関を保護する対策が必要である」と指摘する。さらに、完全に匿名化された情報については、定義を明確にしたうえで、学術研究利用の場合は、医療特別法の厳格な規制対象から除外すべきとも提言している(p8~p20参照)。
(4)の鈴木構成員は、法学者の立場から発言。個人情報の定義や、漏洩の定義にはさまざまあり、さらに違法性を考慮したうえで「重過失(による個人情報漏洩)を処罰すべきか否かを検討する必要がある」と、安易な罰則制定には慎重であるべきとの見解を披露している(p33~p43参照)。
また、厚労省は、医療情報は特に機微性の高い事項が含まれるため、情報漏洩に対する罰則の強化(量刑の引上げ)や、過失犯の取扱いについても検討すべきとしている。ここで、上記の鈴木構成員の発言にもあるが、「過失による情報漏洩の扱い」は極めて重要な問題となる。なぜなら、医療に限らず、情報漏洩は外部持出しや誤操作などの過失によるものが多いが、(1)情報管理を徹底するために、重過失も処罰すべき(2)過失を処罰すると、情報利活用が著しく萎縮する―という2つの相反する考え方があるためだ(p48~p52参照) 。
資料1 P1-P66(4.9M)
http://www.m3.com/tools/Document/WIC/pdf/201207_1/1811_2_1.pdf
論文捏造は172本 学会「世界最多」 元東邦大准教の論文不正 12.6.30
(毎日新聞社 12.6.30)
元東邦大准教の論文不正:172本の捏造認定 学会「世界最多」
元東邦大准教授の麻酔科医・藤井善隆医師(52)の論文に不正の疑いが持たれている問題で、日本麻酔科学会(森田潔理事長)は29日、藤井医師が執筆した論文212本のうち少なくとも172本にデータ捏造(ねつぞう)の不正があったとする調査結果を発表した。学会によると、不正が認定された論文数としては世界で過去最多という。【久野華代】
調査対象は1991~2011年に国内外41の専門誌に発表され、藤井医師が著者に名を連ねた212本。このうち93年以降の172本については、投薬記録や生データが存在しないなど、実験が実際に行われたことが証明できないことから「捏造」と判断した。「捏造なし」は3本しかなく、いずれも別の研究者が筆頭著者を務めていた。残る37本は捏造の有無を判断できる十分な情報が得られなかった。
藤井医師の論文を巡っては今年4月、国内外23の専門誌の編集長が、撤回済みの8本を含む193本に「捏造や改ざんの疑いがある」として、関係する大学や病院など7機関に調査を要請。複数機関にまたがることから、同学会が設置した調査特別委員会が調べていた。
藤井医師への調査は3月と6月の2回実施。共著者36人にも面接または書面で調査した。藤井医師は論文の根拠となるデータの提出に応じない一方、「捏造はしていない」と反論しているという。
論文の多くは、手術後に生じる吐き気を抑える薬の効果を動物や人間で調べたもの。対象者がいたはずの病院に残る過去の記録と、藤井医師の論文に登場する数を比べ、数が合わないものは「捏造」とみなした。ある論文では実際には59例しかなかった乳がん手術が700例に増えていた。
学会はこの調査結果を専門誌側に報告する。捏造が認定された論文はすべて撤回される見込み。また藤井医師は公的研究費など440万円を受けており、それらと不正との関わりについて関係機関が今後調べる。
約20年間も不正が見逃された原因について、29日記者会見した調査特別委員長の澄川耕二・長崎大教授は「周辺では(不正の)うわさがあったようだが、学会として告発を受け付けるシステムがなかった。今後は告発を受けて調査する態勢作りを進める」と述べた。藤井医師は東邦大から2月末付で諭旨退職処分を受けているが、学会内での処分は8月に決める。
◇昇進「人物より論文数」
史上空前の論文不正の背景には、昇進や研究費が論文の数や掲載誌の格で変わる、研究界独特の慣習がある。さらに今回の不祥事は、意図的な不正を見抜けない学界の限界も露呈した。
「昇進して教授を目指していたのではないか」。29日の会見で、調査特別委員長の澄川耕二・長崎大教授は捏造の動機をこう分析した。大学に勤める医師は教育・臨床に加えて研究も重要な業務で、論文はその結晶だ。
ある麻酔科医は「教授選では多くの人が、その人物より論文が載った雑誌のインパクトファクター(IF、雑誌の影響力を示す数値)を基準にする」と語る。
IFは値が高いほど「格上」とされる。藤井医師が論文を投稿していた専門誌のIFは5~3と「それなりに一流」(澄川教授)だった。だが200本以上の論文を量産しながら、藤井医師が教授になることはなかった。「一流誌に載れば周囲からほめられる。(藤井医師にとって論文投稿は)麻薬のようなものだったのでは」と語る関係者もいる。
研究倫理に詳しい愛知淑徳大の山崎茂明教授(科学コミュニケーション)は「医学論文は社会に大きな影響を及ぼすのに、専門誌は悪意を持った不正をチェックするシステムになっていない。今回の問題では共著者にチェック役がいなかったことも問題だ」と指摘する。
藤井医師の虚偽の「成果」がもたらす影響について澄川教授は「命に関わるような報告はないが、論文を信用してその通りに薬を投与する医師がいれば、副作用は起こりうる」と警告した。
◇なぜ見過ごされた? 40以上の雑誌使い分け
藤井医師は不正論文のほとんどを一人で書いたとみられるが、著者には他大学の研究者や医師の名前が連なる。計55人に上る共著者の多くは、その事実を藤井医師から知らされておらず、結果的に不正に加担したことになった。
学会は「論文で紹介している実験はとうてい一人でできるものではなく、複数の機関の複数の著者を入れることで、疑われた時に弁解ができるようにしたのだろう」と推測する。通常なら論文の表紙には著者全員の自筆サインが必要だが、藤井医師が偽造していた可能性もあるという。
共著論文の多くに名前を連ねた藤井医師の上司について調査委は「関与しなかったとはいえ責任は重大だ」と指摘。上司は毎日新聞の取材に「話すことはない」と答えた。
投稿先は、麻酔学だけでなく多分野の40以上の専門誌。投稿先を使い分け、一つの雑誌に投稿が集中し疑われることを避けたと見られる。
「あたかも小説を書くごとく研究アイデアを机上で論文として作成した」。調査報告書はこう結論づけた。会見で澄川委員長は「想像をはるかに超える。研究者としての良心がまひしている」とうめいた。
…………………………………………………………………………………
■ことば
◇論文の不正行為
文部科学省が06年に作成した対応ガイドラインは、不正行為を▽データや調査結果のでっちあげ(捏造)▽改ざん▽盗用――と定義している。論文が学術誌に掲載された場合、論文は撤回される。著者は所属先から懲戒処分を受け、公的な研究費が支給されている場合は返還を求められたり新たな申請を認められないなど制裁を受ける。文科省によると、07年以降で不正行為が認められ、研究費不交付などの処分を受けたのは5件。
人工栄養見直しの動き 胃ろうなど中止選択も 専門家がガイドライン 「医療新世紀」 12.6.26
(共同通信社 2012.6.26)
体が衰えて口からの食事ができなくなった患者の体内に、器具を使って流動食や水分を送り込む「人工栄養」の在り方を見直す動きが広がっている。回復が望めない患者を人工栄養で長期延命することが、本人や家族に苦痛を与えているのではないかという医療現場の戸惑いが背景にある。人工栄養の中止を選択肢に加えた指針の普及を目指す専門家の活動も始まった。
▽患者は幸福か
東京大死生学・応用倫理センターの会田薫子(あいた・かおるこ)特任准教授(医療倫理学)によると、人工栄養は血管から点滴で注入するタイプと、管を使って胃腸に直接入れるタイプがある。管を使う場合はさらに、鼻から入れる「経鼻栄養」と、腹部に開けた小さな穴を介して胃に直接送り込む「胃ろう」に分けるのが一般的だ。
特に1979年に米国で始まった胃ろうは、局所麻酔による10分程度の処置で、確実に栄養が送れるようになるため世界的に導入が拡大。日本でも在宅介護の増加などで需要が高まり、2000年ごろから急速に普及しだした。
ただ、胃ろうを回復が見込める患者への一時的な処置とみなしている欧米と比べ、日本では脳卒中などの病気で意思疎通ができなくなった高齢患者らの延命に用いられる場合が多い。意識がないまま何年にもわたって介護を受ける生活が続くことがあり、会田さんは「人工栄養の継続が、患者本人や家族にとって本当に幸福かどうか疑わしいケースが出てきている」と指摘する。
▽困惑する医師
会田さんが10年に日本老年医学会所属の医師を対象に実施したアンケートの結果は、人工栄養での延命に複雑な気持ちを抱える医療現場の姿を浮き彫りにした。
回答した約1600人の医師のうち、患者に人工栄養を施した経験があると答えたのは68%。その44%に当たる約460人が、いったん導入した人工栄養を中止した経験があると答えた。
中止理由を複数回答で尋ねると、最も多かったのは肺炎や下痢などで続けられなくなったとの答えだったが、患者家族が中止を強く望んだとした医師が約200人いた。また約100人は、医師として人工栄養が患者の苦痛を長引かせると判断したと答えた。
一方、人工栄養の中止は患者の死につながることから、実施経験者の約30%は法的な問題への懸念を示した。マスコミに報道されて騒ぎになることを恐れると答えた医師も多く「現場の困惑と苦しみは深刻」(会田さん)だという。
▽死生観の反映
医療現場の現状を踏まえ、日本老年医学会の専門会議は3月、人工栄養などの延命処置を高齢者の治療に用いる際のガイドラインを公表した。患者本人のためにならない恐れがあると判断された場合は、本人や家族らの意思を確認した上、延命治療を実施しなかったり中止したりすることを認めているのが特徴で、例外なく延命に全力を尽くすことを前提としてきた医療現場の常識から大きく踏み出した。
同学会はまた、ガイドラインの趣旨に賛同する弁護士や大学教授など20人を超える法律家のリストも公表。治療の中止に法律上の問題がないとの見解を強調した。
専門会議で法学者の立場からガイドラインづくりに参加した東京大の樋口範雄(ひぐち・のりお)教授(医事法学)は「例えば米国では、どこまで治療するかを決定する権利はまず患者に、患者が難しい場合は家族ら身近な人々にある」と説明。「人それぞれの価値観や死生観が反映できる終末期医療とはどういうものか、日本人はあらためて考えるべきだ」と話している。(共同)
頸がんワクチン過信は禁物 必ず検診の受診を 「医療新世紀」 12.6.26
(共同通信社 2012.6.26)
女性の間で子宮頸(けい)がんやその予防ワクチンに対する認知度が上がる一方で、半数を超える人がワクチンの予防効果を過度に高く評価していることが、子宮頸がんの啓発に取り組むティール&ホワイトリボンプロジェクトの意識調査で分かった。
プロジェクト関係者は「予防効果は100%ではない。ワクチンを接種しても、定期的な検診が不可欠なことを訴えていきたい」と話している。
調査は今年3~5月、働く女性2554人を対象にインターネットや郵便を利用して実施した。昨春にも千人余りを対象に同様の調査を行っており、結果を比較した。
まず「子宮頸がん」という言葉については99%の人が聞いたことがあると答え、昨年(99%)と同じく、ほとんどの人が病名を知っていた。
子宮頸がんが20~30代の若い女性に増えていることは85%が知っており、昨年の84%からほぼ横ばい。唯一予防が可能ながんであることを知っている人は76%(昨年71%)、ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が発症の原因であることを知っている人は59%(同52%)で、認識の高まりがうかがえた。
ワクチンの存在についても78%(同72%)が知っていると回答。同プロジェクトは「ニュースなどでたびたび取り上げられたことが影響した」と分析している。
一方、ワクチンの感染予防効果について正しく「60~70%」と答えた人は37%にとどまり、「80~90%」が48%、「100%」が7%で、過半数が効果を過信していた。
この結果に上坊敏子(じょうぼう・としこ)・社会保険相模野病院婦人科腫瘍センター長は「ワクチンさえ打てば、検診を受けなくてよいと考えられると非常に危険だ」と懸念を示した。
熊本、鹿児島で水俣病調査 過去最大、1413人 88%に特有の症状 12.6.25
(共同通信社 2012.6.25)
水俣病の被害者団体と民間医師らでつくる実行委員会は24日、熊本、鹿児島両県の八代海(不知火海)沿岸の住民ら1413人を対象とする過去最大規模の健康調査を実施した。
水俣病特別措置法に基づく未認定患者の救済策の申請期限が約1カ月後の7月末に迫る中、いまだに名乗り出ていない潜在的な被害者を掘り起こすのが狙い。
実行委によると、調査は熊本県の水俣、天草両市と鹿児島県出水市の計6会場で実施。診察に当たった医師142人を含め計836人のスタッフが全国から参加した。この日集計が終わった4会場の受診者969人のうち、88%の853人に手足の感覚障害など水俣病特有の症状が確認されたという。詳細な結果は27日に発表する予定。
実行委員長の藤野糺(ふじの・ただし)医師は「政府は水俣病問題にふたをしようとしており、許すわけにはいかない。不当な締め切りをなくすよう運動を展開したい」と話した。
一時金210万円の支給を柱とする救済策への熊本、鹿児島、新潟3県の申請者数は、2010年5月の受け付け開始から今年5月末までで当初の予想を大幅に上回る5万5692人に上る。
新潟県の泉田裕彦(いずみだ・ひろひこ)知事や一部の被害者団体は「現場を分かっていない」「潜在的な被害者はまだ多くいる」として、期限の撤回を求めている。
インプラント 歯科医6割「トラブル」 学会指針作成へ 12.6.25
(毎日新聞社 2012.6.25)
インプラント:歯科医6割「トラブル」 学会指針作成へ
あごの骨に金属製の人工歯根を埋め込んで人工の歯を取り付けるインプラント治療で、治療している歯科医の6割が何らかのトラブルを経験していたことが、日本歯科医学会の初めての全国調査で分かった。手術設備や治療前の検査にもばらつきがあった。同学会は調査結果を基に、インプラント治療のガイドライン作りを始める方針だ。
インプラント治療は、入れ歯よりも自分の歯のように強くかめる半面、治療を巡るトラブルがあとを絶たない。日本歯科医学会は3月、全国の歯科医師会を通じて歯科診療所の医師1000人に調査票を送り、423人から回答を得た。
その結果、この治療に取り組む289人のうち、60・8%が治療による何らかのトラブルを経験していた。具体的には▽人工歯の破損が67・5%▽インプラント周囲の炎症が55・4%――などだった。
また、4人に1人が「神経のまひ」や「異常出血」などの重い医療トラブルを経験していた。手術を手術室でするかや治療前の検査内容にばらつきがあることも分かった。
インプラント治療はほとんどが自由診療でこれまで治療のガイドラインがなかった。調査を担当した栗原英見広島大教授は「他の歯科診療所の取り組みを知る機会を設けるなど、ガイドラインが守られるための仕組みも作りたい」と話している。
論文不正 : 東邦大元准教授執筆、00年に米専門誌指摘 在籍の筑波大放置 12.6.25
(毎日新聞社 2012.6.25)
麻酔学に関する論文193本に不正が疑われている元東邦大准教授の藤井善隆医師(52)に対し、米国の専門誌が00年にも不正の疑いを指摘していたのに、藤井医師が97~05年に講師で在籍した筑波大は疑惑について調査していなかったことが分かった。不正の有無について当時適切な調査がなされていれば、これほど大規模な疑惑に発展しなかった可能性がある。【久野華代】
海外の専門家が、不正を疑う文章を00年4月発行の米専門誌「アネステジア&アナルジジア(麻酔学と無痛学)」に投稿した。
藤井医師が94~99年に複数の専門誌に発表した麻酔薬の効果に関する論文47本を分析し「副作用のデータが極めて均一で不自然」と指摘、不正を示唆した。
藤井医師は、同誌に「データは真実だ」と主張する反論を寄せ、掲載された。だがデータの根拠などは示されておらず、真偽は不明なままとなった。筑波大の関係者によると、この投稿がきっかけとなって藤井医師への疑惑が学内に広がったというが、大学によると、学内で調査は行われなかった。藤井医師は05年に東邦大へ移籍。東邦大で執筆した論文のうち9本に今年2月、再び不正の疑いが浮上。藤井医師は8本を撤回し大学から諭旨退職処分を受けた。
同誌は今年3月に「00年の論文不正告発に対する本誌の対応が不十分だった」との謝罪記事を、スティーブン・シェイファー編集長名で掲載。シェイファー氏は毎日新聞の取材に対し「00年当時は不正の告発の前例や対応するための指針などもなく、編集部はさらなる解明に消極的だった」と説明している。
藤井医師の論文を巡っては今年4月、国内外23の専門誌が連名で、撤回済みの8本を含む91年以降の193本に「データの捏造(ねつぞう)や改ざんなど不正の疑いがある」として、かつて在籍した7機関に調査を要請。日本麻酔科学会が調査特別委員会を設置し、6月末をめどに調査を進めている。筑波大時代の論文で今回、調査対象になっているのは99本に上る。
筑波大は取材に対し「現在、大学内で00年当時の対応を含めて調査を進めている。調査が終わったらきちんと結果を公表する」としている。
山本病院元理事長に実刑 手術ミスで患者死亡 12.6.25
(共同通信社 2012.6.25)
奈良県大和郡山市の「山本病院」(廃院)で2006年、肝臓手術後に男性患者=当時(51)=が死亡した事件で、業務上過失致死罪に問われた元理事長山本文夫(やまもと・ふみお)被告(54)に、奈良地裁は22日、禁錮2年4月(求刑禁錮3年)の実刑判決を言い渡した。
橋本一(はしもと・はじめ)裁判長は判決理由で「十分な準備もせず、手術は軽率。反省も見られない」と厳しく指摘。「被害者を思いやる発言がなされなかったことが残念」と述べた。
判決によると山本被告は、切除する必要のない良性な肝臓の腫瘍を悪性がんと誤診。危険が伴う高度な手術であるにもかかわらず、十分な態勢や人員を確保できないまま自ら手術を実施し、肝静脈を傷つけ、失血死させた。
山本被告は手術に過失はないとして無罪を主張していたが、橋本裁判長は「誤診は過失と言えないが、専門知識や経験の乏しい手術は避けるべきだった」と指摘。「死因は失血死ではない」との山本被告の主張も「心筋梗塞など他の死因をうかがわせる所見は認められない」と退けた。
山本被告は、医療費が全額公費負担となる生活保護受給者に心臓手術をしたように装い、診療報酬をだまし取った詐欺罪で、実刑判決が確定している。
(関連記事は本サイトの“事故から学ぶ”に掲載。)
“終末期の人工透析、家族意向で中止も…学会提言” 延命中止し移植 新技術、心臓除き可能 欧州10カ国導入 倫理的課題、評価分かれ 12.6.24
(毎日新聞社 20 12.6.24)
クローズアップ2012:延命中止し移植 新技術、心臓除き可能 欧州10カ国導入 倫理的課題、評価分かれ
「脳死でなければ無理」とされていた肝臓や肺の摘出が、延命治療を中止し心臓が停止した後に広く行われている――。日本の常識を根底から覆す欧米の移植事情。背景には深刻な臓器不足が横たわる。生命維持装置停止とセットの心停止移植は、市民に理解されやすい半面、倫理的課題も抱える。日本でも岡山大が指針策定に取り組むなど模索が始まっている。【斎藤広子、ブリュッセル斎藤義彦】
昨年12月16日、ベルギー東部リエージュの中央大学病院に、首つり自殺をはかった男性(28)が運び込まれた。心停止後に蘇生したが脳に大きなダメージを受けた。主治医は脳死までは至らないが、健康な状態には回復しないと診断。家族に治療中止を提案した。家族は承諾。その後、医師から臓器提供の提案を受け、受け入れた。20日午後3時50分、人工呼吸器など治療がすべて中止され、午後4時に心臓が停止。3人の医師が死亡を確認した。5分間の待機後、別の移植チームが作業を開始、肺、肝臓、腎臓などが摘出された。
「移植に関係なく、これ以上の治療は無駄で、健康な状態に回復しない、と医師が判断すれば治療中止を家族に勧めるのが通例。そのうえで移植の可能性を伝える」と、同大の救急医、レドゥ医師は話す。イスラエルの医師らのグループが欧州17カ国の集中治療室を03年に調査した結果では、患者の3割で治療が中止されていた。「無駄な延命は嫌」という市民感情と移植を結びつけたのが新しい心停止移植の手法だ。
背景には深刻な臓器不足がある。腎臓で移植数が待機数の半分に及ばないような不足状況は各国に共通する。だが、交通事故の減少などで脳死移植は伸び悩む。ベルギー中部ルーベン大学病院の救急医、フェルディナンド教授は「臓器不足のため、80歳を超える高齢者から臓器提供を受けるほか、心停止後の移植が増えている」と話す。
心停止移植は脳死とは別ルートで実施される。脳死になれば通常の脳死移植が行われる。難しい「脳死」概念が前提でなく理解されやすい面がある。ベルギーでの11年の統計では家族が提供を拒否する割合は、脳死が12%だったのに対して心停止は8・9%とやや低かった。トルコを含めた欧州地域の調査では、心停止移植は仏伊スペインを含め10カ国に広がる。
一方、課題も多い。「健康な状態に回復不可能」と言っても、意識の戻らない状態で何年も生きる可能性がある。死のはるか前に治療を中止する是非には議論が分かれる。移植の際は「脳死が人の死」と法律で定めるドイツなど7カ国は心停止後移植を認めない。さらに、治療中止は基本的に「医師の判断」(オランダ臓器移植財団)で家族は一定の同意を与えるに過ぎない。患者本人の意思は不明な場合が多く、患者の自己決定権はあいまいだ。
新手法では心臓が摘出できない。心臓移植には脳死からの提供が不可欠だが、心停止移植が普及した国では、脳死提供が減る傾向にある。
◇日本でも模索の動き 厚労省、患者意思の尊重基本
日本では心停止移植は腎臓や角膜などに限られ、肺や心臓、肝臓は「脳死体からの提供が必要」とされてきた。欧米の心停止移植の急増は、この前提を変える意味を持つ。
日本臓器移植ネットワークによると心停止移植は11年に68件あり、脳死移植の44件を上回っている。だが、これは延命治療中止とセットになった移植ではなく、病気や事故で自然に死亡した人から提供されたものだ。
10年7月に改正臓器移植法が全面施行され、15歳未満の子どもや本人の書面による意思表示がない患者からの脳死臓器提供が可能になった。だが、5月末現在、移植希望者1万3230人に対し、今年に入ってからの提供者は脳死と心停止を合わせても44人だけだ。
国内でも延命治療の中止を伴う心停止移植を模索する動きが始まっている。岡山大病院の肺移植チームは今年に入り、心停止肺移植の先進地・スペインやオーストラリアを視察。同病院の大藤剛宏准教授(呼吸器外科)によると、岡山大を含む脳死肺移植の認定7施設で作業グループを作り、国内での実施に向け指針を作成する準備を進めているという。
大藤准教授は「日本の肺移植のレベルは高く、技術的には心停止移植も可能だ。しかし、延命治療の中止を伴う移植は、法的な後ろ盾がなければできない」と指摘する。
延命治療中止をめぐっては厚生労働省が07年にガイドラインを公表し、患者の意思の尊重を基本とすることなど、国として初めて終末期医療の手続きを提示。日本救急医学会も同年、救急医療現場での終末期の患者の延命治療を中止する際の手順を指針にまとめている。また日本でも脳死移植が認められる前、人工呼吸器を停止し、腎臓を摘出した例もあったとの報告もある。
しかし、ルール作りには慎重な意見も根強く、法的な定めはない。大藤准教授は「日本でも延命治療の中止が一般に広がり、その後の臓器提供を選ぶ人が増えたときのために、ガイドラインの整備など医療側の体制を早く整えたい」と話す。
大学の臨床研修、必修化前後で満足度不変
医学部長病院長会議調査、学位取得低下の懸念も 12.6.23
(2012.6.23 m3.com)
全国医学部長病院長会議が、2004年度に必修化された卒後臨床研修を受けた医師と、必修化以前の研修を受けた医師に、それぞれ調査したところ、全体で見れば、研修に対する満足度は必修化前後で変わらないことが分かった。6月21日の定例記者会見で調査結果を公表した。
初期臨床研修について、「満足できる」と回答した医師は旧制度63.8%、新制度62.6%、「満足できない」との回答は旧制度13.3%、新制度12.9%で、新旧両制度で大差はない。
新制度の特徴は、マッチング方式とスーパーローテーション方式の採用。マッチング方式などにより、全国から研修病院を選べる制度を支持するのは、新制度75.4%で、旧制度55.7%を上回っている。ただ、スーパーローテーション方式については、多くの診療科で研修できることを評価する声がある一方、臨床研修前に精神科、産婦人科、地域保健・医療を志望していた医師では、診療科別の研修を「役に立たない」との回答が2割を超えた。
そのほか、初期研修と同じ大学病院に勤務しているのは、旧制度76.3%に対し、新制度56.5%にとどまり、初期研修に限らず、それ以降も医師の流動性が高まっていることも示されている。
調査は、全国医学部長病院長会議が、厚生労働科学特別研究事業「初期臨床研修制度の評価のあり方に関する研究」班〔研究代表者:桐野高明・国立国際医療研究センター総長(当時)〕との共同研究の形で実施。全国の80の大学病院本院と、35の大学病院分院で研修を受けた、新制度(2004年~2008年卒業の医師)と、旧制度医師(1998年~2003年卒業の医師)を対象に実施。調査期間は、2011年2月28日から3月25日、計1万788人から回答を得た(旧制度5753人、新制度5025人、無回答10人)。
調査を担当した全国医学部長病院長会議の卒後臨床研修調整委員会委員長の山下英俊・山形大学医学部長は、「研修直後に調査したのでは、自らが受けた研修の意味付けが分からない。今回の調査は、新旧両制度を問わず、臨床研修を終え、一定期間が経過した医師を対象に実施したのが特徴」と説明。その上で、「新制度での問題点は、研修する診療科を義務にしたこと。研修の満足度が一部の診療科で低下している。これは将来の専門とは関係なく研修内容を決めた弊害と言える」と指摘する。
研修で希望進路の実態把握
本調査では、大学病院以外で研修を受けた医師について調査した桐野班研究との比較も行っている(計628人。旧制度230人、新制度395人、無回答3人)。桐野班研究では、「満足できる」と回答した医師は、旧制度63.0%だったが、新制度は68.6%とやや上昇した一方、「満足できない」のは旧制度15.7%、新制度8.8%に減少している。2004年度の必修化前後で、大学病院以外の方が、大学病院よりも、満足度の上昇率は高い。
また、「臨床研修でよかった点」を複数回答で聞いたところ、旧制度では、1位「手技を豊富に経験できた」(50.7%)、2位「希望する診療科の実態を把握できた」(48.9%)、3位「研修医一人当たりの症例数が充実していた」(43.9%)。新制度では、1位「希望する診療科の実態を把握できた」(58.5%)、2位「多くの診療科をローテートできた」(46.4%)、3位「熱心な指導医がいた」(44.1%)。
一方、改善すべき点は、旧制度では、1位「多くの診療科を選択できなかった」(23.5%)、2位「研修プログラムが充実していなかった」(22.3%)、3位「診療科同士の垣根が高かった」(19.9%)。これに対し、新制度では、1位「多くの診療科をローテーションするため深く学べなかった」(27.3%)、2位「手技を豊富に経験できなかった」(21.9%)、3位「シミュレーターや図書など機器や設備が充実していなかった」(18.3%)。
適切な研修期間については、「2年以上」としたのは、旧制度50.9%、新制度49.1%。「1年以上2年未満」が旧制度28.3%、新制度35.4%、「1年未満」が旧制度9.9%、新制度9.5%と大差はないものの、「臨床研修は不要」としたのは、旧制度9.6%で、新制度5.2%よりやや多かった。
「学位取得」、3割以上低下
さらに、本調査では、臨床研修終了後の動向についても調査。
主たる診療科を見ると、増加しているのは、皮膚科、精神科、形成外科、産婦人科、放射線科、麻酔科、病理診断科、救急科、総合診療科。一方、減少しているのは、小児科、外科、脳神経外科、整形外科、耳鼻咽喉科、臨床検査科。
「学位取得」あるいは「今後学位の取得」を目指している医師の合計は、旧制度80.6%に対し、新制度では52.6%と、3割以上も低下している。なお、桐野班調査では、旧制度44.3%と以前から低い上に、新制度31.6%になっている。
医学生でも実施可能な基本的手技多い
最近、「スチューデントドクター」などという形で、医学生が臨床実習で行う医行為の幅が広がっている。調査では、「指導医のもとでも、医学生には無理と考えられる基本手技20項目」についても質問。
研修制度の新旧にかかわらず、50%以上の医師が「無理」としたのは、穿刺法(腰椎、胸腔、腹腔)、気管挿管、30%以上が「無理」としたのは、ドレーン・チューブ類の管理、除細動。それ以外の、皮膚縫合、簡単な切開・排膿、胃管の挿入と管理などは、「無理」としたのは30%未満で、大半が指導医のもとであれば医学生にも実施可能としている。
山下氏は、これらの調査結果を踏まえ、次のように語っている。「全国医学部長病院長会議では従来から、卒前の臨床実習を充実させ、マッチングは専門医取得について導入すべきだと考えてきた。今回の調査でも、基本手技の多くが卒前に実習することができるという回答になっている。今回の調査を通じて、卒前教育、国試、卒後の専門医教育と生涯教育の体系的、継続的な教育システムを、厚生労働省や文部科学省と協力し、構築していく必要性を改めて実感した」。
徳洲会が先進医療再申請 病気腎移植に保険適用を 12.6.21
(共同通信社 2012.6.21)
宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)は20日、腎臓がん患者の腎臓を利用する第三者間の「病気腎移植」を、保険が一部適用される先進医療として認めるよう、厚生労働省に再申請した。
昨年10月に申請したが、今年4月に厚労省から戻された。厚労省四国厚生支局愛媛事務所(松山市)に申請書を提出した平島浩二(ひらしま・こうじ)事務長は「事務的なミスが数点あり、対応した。今回は審議されるだろう」と話した。
病気腎移植は、がん患者から治療で摘出した腎臓の腫瘍部分を切除し、慢性腎不全の患者に移植する。同病院が臨床研究しており、医療費約700万~800万円を全額負担。認められれば、一部に保険が適用されると病院側は見込んでいる。
病気腎移植は同病院の万波誠(まんなみ・まこと)医師らが1990年ごろから実施していたことが2006年に発覚。厚労省は臨床研究としてのみ認めている。
最初の申請は昨夏に予定していたが、東京の医師らが逮捕された臓器売買事件などを受け昨年10月に延期していた。
次期10年計画案を決定 健康寿命、喫煙率に目標 12.6.21
(共同通信社 2012.6.21)
専門家でつくる厚生労働省の厚生科学審議会の部会は20日、2013~22年度の10年間にわたる国民の健康づくり計画「健康日本21」の案を了承した。介護を受けたり、病気で寝たきりになったりせず、自立して健康に生活できる期間を示す「健康寿命」を延ばすことを初めて目標として明記した。
がんや脳卒中、心臓病などの死亡率低減に向けた数値目標や、成人の喫煙率を10年の19・5%から、22年度までに12%に下げることも盛り込んだ。
審議会が近く厚労相に答申し、7月中に告示される見通し。健康日本21は、2000~12年度に第1期の計画が実施されており、来年4月から2期目に入る。
今回の計画案策定のため、厚労省は2010年の日本人の健康寿命を男性70・42歳(10年の平均寿命79・55歳)、女性73・62歳(同86・30歳)と初めて算出。22年の平均寿命を男性81・15歳(10年からの延び幅1・60歳)、女性87・87歳(同1・57歳)と推計し、10~22年の平均寿命の延び幅を、健康寿命の延び幅が上回ることを目標としている。
(神奈川)知事と医師会 全面対決 12.6.17
(読売新聞 2012.6.17)
准看護師の養成停止、県内大学への医学部新設、カルテを電子化する「マイカルテ」の実現--。新たな医療政策を次々に打ち出す黒岩知事に対し、県医師会(大久保吉修会長)がそのいずれにも反対する異例の事態となっている。医療改革を重要課題に位置づける知事と「性急な改革は地域の医療崩壊を招く」とする医師会の対立は当面、収まりそうにない。
■20年来の持論
「検討会が踏み込んでくれたことは本当にありがたい。私は20年間訴えてきたが、なかなかできない」
黒岩知事は15日夕、県庁本庁舎の応接室で、看護教育のあり方を議論してきた有識者検討会から「准看護師養成の停止」を柱とする報告書を受け取り、満足げに記者団に語った。
准看護師制度の見直しを始めとする看護問題は知事のライフワークだ。知事はフジテレビ時代にドキュメンタリーシリーズ「感動の看護婦最前線」を手がけ、1993年度と2002年度の民間放送連盟賞を受賞。99年には文芸春秋に「日本医師会の横暴を許すな-看護界は泣いている」との記事を書き、医師会を批判した。
「1ミリもひかない」
これが最近の知事の口癖になっている。県幹部は「知事に当選した時から県医師会との対立は不可避だった」と話す。
■主張は平行線
知事が准看護師養成の停止を目指すのは、「医療の高度・専門化で、看護師の補佐を務め、現場での判断ができない准看護師の意義が薄れており、むしろ看護師の増員に力を入れるべきだ」との思いが強いからだ。
これに対し、県医師会は県内が慢性的な看護師不足であることから、「看護師の充足率が改善するまでは今の制度を続けてほしい」(大久保会長)と訴えている。強硬な反対は、会員に多いとされる開業医が看護師よりも賃金の安い准看護師を雇っているケースが多いためとの見方もある。
知事が先月22日、知事室で大久保会長に准看護師養成の停止方針を伝えた際には40分以上の議論となり、2人がどなり合う場面もあったという。
■反発の連鎖も
医学部新設を巡っては、県民の意見を募集した県のパブリックコメントに対し、川崎市医師会が組織的に反対意見の投稿を会員に求めていたことが明らかになった。知事は国の特区制度を活用して医学部を新設し、国際的な医療人材を育成する構想を描いているが、県医師会は「将来的に医師が過剰になり、医師不足で悩む地方から医師が減らされることになる」と反発している。
県医師会が「マイカルテ」を巡っても、有識者の検討委に委員派遣を拒否するなど、反発しているのは、「准看護師と医学部新設問題で態度を硬化させたため」(検討委員)との指摘が出ている。
■県議会でも攻防?
三つの対立点のうち、県医師会は、知事の政策判断だけですぐに実現が可能な准看護師養成の停止を最も問題視している。
「うさんくさい」「詐欺」--。大久保会長は先月31日の記者会見で知事の政策を痛烈に批判し、対抗策として「議会に働きかける。議員さんが知事の考えに従うならしょうがない」と言い切った。
実際に県医師会は一部県議に働きかけており、知事も今月15日、「(准看護師養成停止の時期は)議会との議論も必要で、討論を通じて明らかにしたい」と警戒感を強めている。
「後期廃止」にこだわるな 改革遅れ、政治の怠慢 「高齢者医療制度見直し」 12.6.12
(共同通信社 2012.6.12)
社会保障と税の一体改革関連法案で民主、自民、公明3党の修正協議が本格化している。焦点の一つは後期高齢者医療制度をどうするかだ。
民主党はマニフェスト(政権公約)で「廃止」を訴えたが、今国会に廃止法案は未提出。同党は先月末になって後期医療に代わる新制度の法案要綱をまとめたものの、厚生労働省が内閣法制局とやりとりしている気配はなく、「公約堅持」のアリバイづくりにも映る。
要綱によると、新制度案は(1)75歳以上の約1400万人のうち約1200万人は国民健康保険(国保)、約200万人は健康保険組合など被用者保険に移行(2)国保の財政運営を市町村から都道府県に広域化-が柱。厚労省の有識者会議が2010年末に提言した内容を踏襲している。
だが有識者会議は、政権交代から4年(衆院議員の任期)以内に後期医療廃止を実現しようと、改革時期を13年3月としていたのに、今回の要綱では15年3月にずれ込んだ。マニフェストには時期を明記していないものの、これでは公約違反に近いのではないか。
改革が2年も遅れるのは政治の怠慢が原因だ。国保の広域化で都道府県は市町村国保の財政赤字を背負い込む。だから全国知事会は反対し続けたが、民主党の国会議員は誰一人として責任を持って知事会との折衝に当たろうとしなかった。
新制度案には評価すべき点もある。小さな自治体が国保を切り盛りするのは難しいから、財政運営の広域化は理にかなう。最大約5倍の地域間の保険料格差も是正できる。
高齢者医療向け拠出金の負担方法を、被用者保険ごとに加入者の頭数で割り当てるのをやめ、収入に応じた「総報酬割」へ全面的に改めるのも、現役世代の負担を平準化する意味で望ましい。
ただ国保広域化の難しさは、知事会が反対していることだけではない。広域化すれば都道府県内の保険料は統一され、結果的に75歳未満の負担が急上昇する市町村も出てくる。総報酬割の導入では、給与が低く若い加入者が多いサービス業などの健保組合は財政面で楽になるが、高給与の中高年を多く抱える大企業の健保組合は負担が増える。既に健康保険組合連合会が反対を表明し、大企業中心の経団連や連合も前向きとは言えない。
問題なのは、こうした立場の異なるステークホルダー(利害関係者)を粘り強く説得し、調整する覚悟が民主党に欠けていることだ。いたずらに「後期医療廃止」の旗を振るだけでは国民が納得する改革は実現しない。
政権交代前のことだが、自公両党のプロジェクトチームが、制度運営への都道府県の関与強化や、拠出金負担方法の見直しを盛り込んだ基本方針をまとめている。歩み寄りの余地はある。肝心なのは公的医療保険全体を見据えた制度改革であり、民主党は「廃止」へのこだわりを捨てるべきだ。
子供の多数回CT、癌リスク3倍も 12.6.11
(2012.06.11:Lancet)
文献:Pearce MS et al.Radiation exposure from CT scans in childhood and subsequent risk of leukaemia and brain tumours: a retrospective cohort study.The Lancet, Early Online Publication, 7 June 2012.
22歳未満でコンピュータ断層撮影法(CT)を受けた約18万人を対象に、放射能暴露と白血病および脳腫瘍のリスクを後ろ向きコホート研究で評価。放射線量とリスクは正の関連で、累積暴露量約50mGyで白血病リスク3倍、約60mGyで脳腫瘍リスク3倍と推定された。これらの癌は比較的まれで累積的絶対リスクは小さいと示唆された。
原文(Lancet): http://www.thelancet.com./journals/lancet/article/PIIS0140-6736(12)60815-0/abstract
がん細胞死滅の仕組み解明 愛知県がんセンター研 12.6.12
(共同通信社 2012.6.12)
がん細胞内で特定の酵素の機能を抑えると、哺乳類の細胞の増殖と休止を切り替える「スイッチ」である小さな突起物が形成されず、細胞そのものが死滅-。愛知県がんセンター研究所の研究チームは11日までに、こうしたメカニズムの詳細をヒト由来の細胞を培養して行った実験で突き止め、米科学誌に発表した。
研究所の稲垣昌樹(いながき・まさき)発がん制御研究部長は「仕組みを利用することで、増殖中のがん細胞だけを死滅させる新薬の開発につながる可能性がある」としている。
「スイッチ」は「一次線毛」と呼ばれ、一つの細胞に一つ形成される、ひげのような器官。内臓の位置を決める働きがあることが分かっていたが、細胞増殖に重要な役割を果たしていると裏付けられた。
研究チームは、特定のタンパク質を細胞内から意図的に消失させる実験を行ったところ、一次線毛が形成されて細胞増殖が休止した。このタンパク質が、哺乳類のがん細胞分裂に必須の酵素である「オーロラAキナーゼ」を活性化させていることも判明した。
実験結果を踏まえ、この酵素の機能を抑える試薬を正常な細胞とがん細胞の両方に注入して観察した。この結果、正常な細胞では一次線毛が形成されて細胞増殖が休止。ところが、がん細胞では一次線毛が形成されず、細胞分裂が途中で止まってしまうなどの分裂障害を起こし、細胞自体が死滅することが確認された。
※米科学誌は「ジャーナル・オブ・セルバイオロジー」
慢性化の原因タンパク特定 アトピー性皮膚炎、佐賀大 12.6.12
(共同通信社 2012.6.12)
アトピー性皮膚炎を慢性化させる原因となるタンパク質を、佐賀大や九州大、岐阜薬科大などのチームがマウスの実験で特定したと、11日付の米医学誌で発表した。新たな治療薬開発につながる可能性があるという。
チームによると、アトピー性皮膚炎は一度発症すると何年も症状が続くことが多いが、慢性化の仕組みはよく分かっていなかった。
チームは、アレルギーの元になる物質(抗原)が体内に入ると、「ペリオスチン」というタンパク質が大量に作られることに着目。ペリオスチンは皮膚の組織にくっついて炎症を引き起こす別のタンパク質を作り出すことで、抗原がなくても炎症を継続させていた。
チームはアトピー性皮膚炎の患者の皮膚で、ペリオスチンが強く働いていることを確認。遺伝子操作でペリオスチンを働かないようにしたマウスにハウスダストの成分となるダニの抽出物を塗っても、アトピー性皮膚炎に似た症状は現れなかった。
佐賀大の出原賢治(いずはら・けんじ)教授(生化学)は「ペリオスチンの作用を抑えることができれば、副作用の少ないアトピー性皮膚炎の新薬を開発できるかもしれない」と話した。
※米医学誌はジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション電子版
ピオグリタゾン、膀胱癌と関連 12.6.5
(2012.6.5:BMJ )
文献:Azoulay L et al.The use of pioglitazone and the risk of bladder cancer in people with type 2 diabetes: nested case-control study.BMJ 2012;344:e3645.
血糖降下薬使用中の2型糖尿病患者11万5727人を対象に、ピオグリタゾンと膀胱癌の関連をコホート内症例対照研究で検討。ピオグリタゾン使用患者ではその他の薬剤に比べ、膀胱癌リスク増加が見られた(発症率比1.83)。使用期間が24カ月超および累積使用量が28000mg超の患者で発症率が最も高かった(同1.99、2.54)。
原文(BMJ):http://www.bmj.com/content/344/bmj.e3645
「CKD診療ガイド2012」を発表 3年ぶりの改訂、重症度分類と血圧管理法に新機軸 12.6.4
(2012年6月4日 日本腎臓学会)
日本腎臓学会は「CKD診療ガイド2012」を6月1日に発表した。学会は2007年に初めて「CKD診療ガイド」を作成し、2009年に改訂。今回は3年ぶりの改訂となった。国際腎臓病予後改善委員会(KDIGO)が今年10年ぶりにCKDの重症度分類を改訂したことを受けて、新たな重症度分類を導入。原疾患を踏まえ、末期腎不全や心血管イベントのリスクを評価し、治療目標を明確にできるようにした。血圧管理法も変更し、新たな推算糸球体濾過量(eGFR)の計算法も加えた。
新しい重症度分類「CGA分類」
今後、CKDの重症度は、「原因(Cause)」「腎機能(GFR)」「たんぱく尿(Albuminuria)」の3点を用いた「CGA分類」で評価する。
これまではGFRと腎障害の程度のみでCKDのステージを決めていた。今回の改訂では、原疾患を踏まえた上で末期腎不全や心血管イベントのリスクを評価し、重症度を決める。これにより、治療の目標を明確にしようという狙いだ。
では、新しい重症度分類はどのように決めるのか。「CKD診療ガイド2012」では、「GFR区分」と「たんぱく尿区分」の2つの指標を用いることになる。
「GFR区分」は今までと同様に、GFR値の高低により決める。今回変わった点は、区分がより細分化されたところ。以前はステージ1-5の5段階だったが、ステージ3(GFR 30-59)をG3a(GFR 45-59)、G3b(GFR 30-44)に分け6段階とした。ステージ3の中でも、GFR 45以下の群ではより末期腎不全や心血管イベントのリスクが高いことが、KDIGOのメタ解析により分かったからだ。
一方、「たんぱく尿区分」は新たな概念となる。原疾患を「糖尿病」か「高血圧、腎炎、多発性嚢胞腎、移植腎、不明、その他」のどちらかに分ける。その上で、糖尿病ではアルブミン尿を、高血圧などではたんぱく尿の程度を見て、A1-3の3区分のいずれかに振り分ける。
新たなCKDの重症度は、このGFR区分とたんぱく尿区分とをクロスで掛け合わせることで評価する。例えば、GFR区分ではG2、たんぱく尿区分ではA3の場合、CKD病期は「ステージG2 A3」と表記することになる。ただし、G1A1、G2A1の2群は「ハイリスク群」という扱いだ。「CKD診療ガイド2012」では、病期に応じて、治療方針、血圧、血糖、脂質、貧血の管理、骨ミネラル、カリウムやアシドーシス、尿毒素の対策、食事指導などを定めている。
血圧は「130/80mmHg以下」に統一
CKD患者の血圧管理法も変わる。これまでは「尿たんぱく1g/日以上の場合、降圧目標は125/75mmHg未満」としていたが、この基準はなくなり、すべてのCKD患者で130/80mmHg以下が目標となった。また、降圧薬の第一選択はアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシン受容体阻害薬(ARB)だけとなっていたが、今回は患者の状態に合わせて薬を選べるように修正した。
具体的には、糖尿病および0.15g/gCr以上のたんぱく尿を有する患者では、ACE阻害薬、ARBを第一選択とする。一方、たんぱく尿が0.15g/gCr未満で、糖尿病でない人の場合、降圧薬の種類は問わないこととした。高度たんぱく尿(0.50g/gCr以上)を呈する若年や中年患者では、レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の使用を勧めている。
なお、高齢者の場合は慎重な降圧が求められる。まず、140/90mmHgを目標に降圧し、腎機能悪化や虚血症状がないことを確認してから、130/80mmHg以下への降圧を行うことを求めている。また、収縮期血圧が110 mmHg未満にならないよう注意している。
新たな推算法「eGFRcys」
今回の改訂ではeGFRの計算法にも追加があった。今まで、eGFRの推算に利用する臨床検査はクレアチニンのみだったが、血清シスタチンCも加わった。シスタチンCを用いると、るいそうや下肢切断者など、筋肉量が極端に少ない患者でも、より適切にGFRを推定できると考えられている。なお、クレアチニンによる推算式は「eGFRcreat」、シスタチンCの場合は「eGFRcys」と呼ぶことになる。
「CKD診療ガイド2012」は、腎臓専門医のみならず、広く一般に使用されることを想定している。患者に下記のいずれかがあれば、腎臓専門医への相談を推奨している。(1)尿たんぱく0.50g/gCr以上、または検尿試験紙で尿たんぱく2+以上。(2)たんぱく尿と血尿がともに陽性(1+以上)。(3)GFRの値が、40歳未満では60未満、40歳以上70歳未満では50、70歳以上では40未満。
呼吸器取り外しも可能に 議連の尊厳死法案 12.6.1
(共同通信社 2012.6.1)
超党派の「尊厳死法制化を考える議員連盟」(会長・増子輝彦民主党参院議員)は31日、議員立法での国会提出を準備している尊厳死に関する法案の原案を修正し、免責対象となる医師の行為を、人工呼吸器の取り外しなど「現に行っている延命治療の中止」に拡大する方針を決めた。
これまでは「新たな延命治療の不開始」に限っていた。がんなどで終末期にある患者本人が尊厳死を望む意思を表示している場合で、2人以上の医師の判断を条件とする点は変わらない。
議連は6月6日に総会を開き、修正案を公表する予定。障害者団体や医療関係者、弁護士らの意見を聞いてさらに検討を続け、今国会か次期臨時国会での法案提出を目指す。ただ生命倫理にかかわるため、各党には反対の議員も多く、提出や成立の見通しは不透明だ。
修正案には、障害や重い病気で意思表示が難しい人を対象外とするため「障害者の尊厳を害することのないように留意しなければならない」との文言も追加。いったん示した意思を撤回することも可能にした。
議連は3月、法案の原案を公表。患者本人が健康で正常な判断ができる間に延命を望まない意思を書面にしていることなどを条件に、新たな延命措置を開始しないことを容認。医師は刑事、民事、行政上のいずれの責任も問われないとしていた。
修正の理由について議連関係者は「延命中止が除外されれば法制化の意味がないとの意見を参考にした」と説明。「『障害者らの命の切り捨てになる』との懸念にも配慮した」としている。
男70・42歳、女73・62歳 健康寿命、厚労省が初算出 「延ばす」目標に 12.6.1
(共同通信社 2012.6.1)
介護を受けたり病気で寝たきりになったりせず、自立して健康に生活できる期間を示す「健康寿命」を厚生労働省が初めて算出、2010年は男性70・42歳(10年の平均寿命79・55歳)、女性73・62歳(同86・30歳)になったとする結果を1日、専門家でつくる厚生科学審議会の部会で示した。
健康寿命は世界保健機関(WHO)が00年に打ち出した概念。社会の高齢化が加速する中、厚労省は「健康に長生きすること」を重視し、13~22年度の国民の健康づくり計画案に「健康寿命を延ばす」とする目標を盛り込む。計画は6月中旬にも部会で正式決定される見通し。
都道府県別で健康寿命が最も長いのは、男性が愛知県で71・74歳、女性が静岡県で75・32歳。最も短いのは男性が青森県で68・95歳、女性が滋賀県で72・37歳。格差は男性2・79歳、女性2・95歳で、計画では都道府県間の格差縮小も目指す。
健康寿命を具体的にどれだけ延ばすかは計画に明記しないが、10~22年の平均寿命の延び幅を、健康寿命の延び幅が上回ることを目標にする。厚労省は22年の平均寿命を男性81・15歳(延び幅1・6歳)、女性87・87歳(同1・57歳)と推計している。
健康寿命の目標実現のため、がんや脳卒中、心臓病など生活習慣病の死亡率低減に向けた数値目標や、成人の喫煙率を10年の19・5%から、22年度までに12%に下げることも盛り込む。
国民の健康増進が進めば、医療・介護関連の予算の抑制につながる。厚労省は00年に国民の健康づくり計画「健康日本21」を策定。今回策定するのは、これに次ぐ計画となる。
※健康寿命
一生のうち、介護が必要だったり、日常生活に支障が出るほどの病気にかかったりする期間を除き、健康に日常生活を送れる期間を示す。単に寿命を延ばすのではなく、生活の質を重視する考え方に基づき、世界保健機関(WHO)が2000年に提唱した。厚生労働省は今回、世帯ごとの所得、家族の健康状況などを調べる「国民生活基礎調査」や、日本人の平均寿命のデータなどを基に算出した。
インプラント治療で障害421件、神経まひ4割 12.6.1
(読売新聞 2012.6.1)
歯科医院などで受けた人工歯根(インプラント)を埋め込む治療が元で、顎や唇のしびれやまひなどの障害が生じ、のちに歯科大病院などで治療が行われた例が2009-11年の3年間に421件あったことが日本顎(がく)顔面インプラント学会の調査でわかった。
インプラントに関する健康被害の全国調査は初めて。
同学会は大学など公的病院の口腔(こうくう)外科医らが中心になり運営。調査は、同学会認定の研修施設79か所にアンケートし、74施設(回答率94%)から回答を得た。
顎の骨に埋め込んだインプラントのため生じた神経まひが158件と4割近くを占めた。上あごの骨を突き抜けた例も63件あった。細菌感染や内出血など重い症状を伴うケースも少数みられた。
呼吸器取り外しも可能に 議連の尊厳死法案 12.6.1
(共同通信社 2012.6.1)
超党派の「尊厳死法制化を考える議員連盟」(会長・増子輝彦民主党参院議員)は31日、議員立法での国会提出を準備している尊厳死に関する法案の原案を修正し、免責対象となる医師の行為を、人工呼吸器の取り外しなど「現に行っている延命治療の中止」に拡大する方針を決めた。
これまでは「新たな延命治療の不開始」に限っていた。がんなどで終末期にある患者本人が尊厳死を望む意思を表示している場合で、2人以上の医師の判断を条件とする点は変わらない。
議連は6月6日に総会を開き、修正案を公表する予定。障害者団体や医療関係者、弁護士らの意見を聞いてさらに検討を続け、今国会か次期臨時国会での法案提出を目指す。ただ生命倫理にかかわるため、各党には反対の議員も多く、提出や成立の見通しは不透明だ。
修正案には、障害や重い病気で意思表示が難しい人を対象外とするため「障害者の尊厳を害することのないように留意しなければならない」との文言も追加。いったん示した意思を撤回することも可能にした。
議連は3月、法案の原案を公表。患者本人が健康で正常な判断ができる間に延命を望まない意思を書面にしていることなどを条件に、新たな延命措置を開始しないことを容認。医師は刑事、民事、行政上のいずれの責任も問われないとしていた。
修正の理由について議連関係者は「延命中止が除外されれば法制化の意味がないとの意見を参考にした」と説明。「『障害者らの命の切り捨てになる』との懸念にも配慮した」としている。
薬の皮膚障害131人死亡 2年半で、厚労省に報告 12.5.29
(共同通信社 2012.5.29)
薬の副作用で起きる皮膚障害のうち、症状の重いスティーブンス・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死(えし)症の死亡報告が、今年1月までの2年半で131人に上ったことが、厚生労働省のまとめで28日までに分かった。
スティーブンス・ジョンソン症候群は唇や目の結膜などに、中毒性表皮壊死症は全身の皮膚の広範囲に、それぞれ発疹などができ、重症化すると多臓器に障害が生じる。厚労省安全対策課によると、これらの皮膚障害は発症の仕組みが不明で、原因とみられる薬の種類も、解熱剤から抗生物質、風邪薬などと幅広い。発生頻度は年間で100万人当たり数人と極めて小さいため、皮膚科の医師でも診断が難しく、治療が遅れて重症化しやすいという。
同課は「初期症状は高熱を伴う発疹。疑ったらすぐに受診して治療してほしい」としている。
09年8月から12年1月の製薬企業からの報告をまとめた。発症は1505人で、このうち約57%は回復、軽快した。死亡の131人には、専門家が因果関係は薄いと評価した事例も含む。
発症の原因と疑われる薬は抗てんかん薬と解熱鎮痛消炎薬、抗生物質がそれぞれ200例を超えた。薬局などで処方箋なしに買える一般用医薬品の風邪薬も54例あった。
09年7月までの3年10カ月の死亡報告は239人。1年当たりでは最近2年半よりも多い。
アルツハイマー病改善に運動療法が効果 京都大教授ら研究グループ、米科学誌に論文 12.5.20
(毎日新聞社 2012.5.20)
◇「臨床にも応用できる」
アルツハイマー病発症に伴う記憶障害の改善には、運動療法が効果的――。京都大医学研究科の木下彩栄教授(神経内科学)の研究グループがマウスを使った実験でこのほど確認、米科学誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー」電子版に論文を掲載した。木下教授は「運動療法の効果は疫学的には知られていたが、そのメカニズムの一端が解明できた。臨床にも応用できる成果」としている。
アルツハイマー病には先天性と後天性があり、後天性では糖尿病や高脂血症など生活習慣病との関連が指摘される。これまでの研究では、脂肪分の多い食事を続けると、脳内にアミロイドというタンパク質が多く蓄積され、認知機能が悪化することが知られていた。
木下教授のグループは、遺伝子組み換えでアルツハイマー病にしたマウスに脂肪分の多い餌を与え、認知機能を低下させた上で(1)餌の脂肪分を減らす食事療法(2)回し車を走らせるなどの運動療法(3)食事療法と運動療法の組み合わせ――による治療を行った。
その後、水を張った水槽の中の迷路をマウスに何度も歩かせ、ゴールにたどり着く時間を計測。その結果、運動療法のマウスの平均到達時間が食事療法のマウスよりも短かった。また、運動療法と食事療法を組み合わせたマウスでも、運動療法だけの場合と変わらない結果となった。
メカニズムの解明のため、運動療法後、脳内のアミロイドを調べると、減っていたことから、運動によって分解酵素が活性化し、アミロイドの蓄積が抑えられたと推測できるという。木下教授は「生活習慣病そのものの治療には食事療法の方が効果があるが、記憶障害の治療に特化する場合は食事療法より、運動療法を優先すべきではないか」と話している。
死因究明法案を委員会可決 衆院、議員立法で提出 12.5.18
(共同通信社 2012.5.18)
犯罪による死亡の見逃しを防ぐため、遺族の承諾がなくても遺体を解剖できるなどとする死因究明関連2法案が18日、衆院内閣委員会に提出され、採決の結果、賛成多数で可決された。週明け以降、衆院本会議で可決、参院に送られる見通し。超党派の議員立法で、各党は今国会での成立を目指している。
現状では警察が取り扱う犯罪死かどうか分からない遺体は、遺族の承諾を得なければ解剖できないが、警察が法医学者らの意見を聞き、必要と判断すれば承諾なしで解剖できるようにするのが法案の柱。解剖しない場合も、医師や警察官が遺体から血液や尿を採取して薬毒物検査することを認める。
2007年に愛知県犬山市で起きた大相撲時津風部屋の力士暴行死事件や、今年4月、さいたま地裁で木嶋佳苗(きじま・かなえ)被告(37)が死刑判決を受けた首都圏の連続不審死事件など、遺体が解剖されないまま当初は事件性がないと判断された事例が相次いで発覚。解剖率の著しい低さなどが問題となり、法案づくりが進められていた。
HbA1c」値の国際標準化で通知--厚労省 12.5.17
(薬事ニュース 2012.5.17)
日本糖尿病学会がこのほど、ヘモグロビンA1c(HbA1c)の測定値を、これまで国内で用いられてきたJapan Diabetes Society(JDS)値から、海外で広く用いられているNational Glycohemoglobin Standardization Program(NGSP)値に移行する新たな方針(日常臨床及び特定健診・保健指導におけるHbA1c 国際標準化の基本方針及びHbA1c 表記の運用指針)を発表したことを受け、厚生労働省は4月27日、都道府県宛に事務連絡「ヘモグロビンA1c測定値の国際標準化に係る対応について」を発出した。同指針では今年度から当面の間、日常の臨床の場におけるHbA1c測定値の表記にはNGSP値とJDS値を併記することとしているため、これらの誤認による現場の混乱を回避することが目的。通知では、体外診断用薬の製造販売業者に対して、添付文書の記載にNGSP値を使用することを求めているほか、日本製薬団体連合会等の会員企業に対しても、添付文書等にHbA1c測定値に関する記載がある場合は、JDS値かNGSP値かを明記する等の対応を求めている。
薬ネット販売、国上告へ 規制緩和は並行検討 12.5.9
(共同通信社 2012.5.9)
一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売を原則禁じた厚生労働省令を違法とし、ネット販売を認めた東京高裁判決を不服として、厚労省は9日までに、上告する方針を決めた。
4月26日の判決は「ネット販売の一律禁止は、改正薬事法に明記されていない」と指摘。「国民の権利を制限した省令は違法で無効」として、ネット販売業者2社が敗訴した一審判決を取り消し、国側が逆転敗訴した。
政府は安全性の確保を条件とする規制緩和方針を昨年7月に閣議決定しており、訴訟と並行して、厚労省は緩和策の検討を進める方針。
改正薬事法は、大衆薬を副作用のリスクに応じて三つに分類。省令ではビタミン剤などリスクの低い第3類を除き、毛髪剤など第1類と風邪薬や解熱鎮痛薬など第2類について、ネットなどでの通信販売を原則禁じている。
入院患者11人が院内感染か…日本医科大病院 12.5.9
(読売新聞 2012.5.9)
日本医科大病院(東京都文京区)の集中治療室で、複数の抗菌薬(抗生物質)が効かない多剤耐性菌アシネトバクターが11人の入院患者から検出されたことが9日わかった。
同病院は院内感染とみて、対策委員会を設置して拡大防止に努めている。
同病院によると、今年2月、入院患者1人のたんからこの菌が見つかり、検査範囲を広げたところ今月7日までに11人から検出した。このうち6人が死亡したが、もともとの病気が原因とみられ、感染とは関係ないという。残る5人のうち3人は入院中で、1人はまだ保菌状態だが病態は安定しているという。
集中治療室は、外科や循環器内科などの患者が使用していた。
増える胃食道逆流症 胸焼け、粘膜に傷 食生活や肥満が原因 「医療新世紀」 12.5.8
(共同通信社 2012.5.8)
胃酸が食道に逆流し、食道の粘膜が傷つけられたり、胸焼けなどの不快な症状が起きたりする「胃食道逆流症(GERD)」が増えている。食生活の欧米化や、胃の中にすむピロリ菌への感染率低下などで胃酸の分泌量が増す一方、肥満や高齢化の影響で逆流が起きやすくなっていることが原因だ。GERDは患者のQOL(生活の質)を著しく損なう。また、たかが胸焼けと軽く見ると、より重い病気が隠れていることもある。
▽多様な症状
「胃潰瘍や胃がんは減っているのに、GERDだけが急速に増えている」。慶応大医学部消化器内科の鈴木秀和(すずき・ひでかず)准教授は、消化器疾患における近年の変化を指摘する。
鈴木さんによると、GERDは最近よく耳にする「逆流性食道炎」と、「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」とに分類される。逆流性食道炎は、内視鏡で食道の粘膜にただれや潰瘍が認められるもの。これに対し、ただれや潰瘍は無いが、自覚症状はあるものがNERDと呼ばれる。
患者が訴える症状は、胸焼けのほかにも胃もたれ、胃痛、酸が込み上げてくる感じ、吐き気、げっぷ、のどの違和感、食欲不振、長引くせき、胸痛など、実に多様だ。
胃液に含まれる胃酸は強酸性。食物を消化するとともに、一緒に取り込まれた細菌などを退治する役割を担っている。胃の内側は粘液層で覆われているため、胃自体が傷つけられることは通常ないが、食道粘膜は胃酸に弱く、逆流によってダメージを受けやすい。
▽ピロリ菌除菌
GERD急増の背景は何か。まず、食生活の変化で動物性タンパク質や脂肪の摂取が増え、胃酸の分泌量が増えたことがある。衛生状態の改善や除菌治療の広がりで、ピロリ菌の感染率が低下したことも大きい。胃の粘膜を荒らすピロリ菌がいなくなると、胃酸の分泌が活発化するためだ。高齢者を中心に広く使われている非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)などの薬剤も胃酸の分泌量を増加させる。
胃酸の量は変わらないのに逆流が起きることもある。年を取ると、背中が曲がって前かがみになったり、食道と胃のつなぎ目部分にある下部食道括約筋の機能が低下したりして逆流が起きやすくなる。肥満の人も、腹の脂肪で胃が押し上げられて逆流を招きやすい。
「いろいろな要因が複合的に働いている。GERDの罹患(りかん)率はこれまで欧米で高かったが、日本も高いグループに入ってきた」と鈴木さんは解説する。
▽がんの発生も
診断では、GERDと似た症状が現れる、より重い病気との鑑別が重要になる。例えば胸痛は、心筋梗塞や肺塞栓(そくせん)、大動脈解離、緊張性気胸など、命にかかわる病気の症状でもある。詳細な問診や触診、聴診、必要な場合は精密検査をして、これらの病気の可能性を取り除く。同様に、のどの違和感は食道がんや咽頭がんについて、長引くせきは肺がんや肺結核、肺炎、心不全、胸膜炎などについて確認しなければならないという。
最終的にGERDと診断が確定したら、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬を第1選択薬として治療が行われる。
「未治療のGERDは狭心症や十二指腸潰瘍よりQOLを損なうとされる。また、胃酸の逆流が繰り返されて炎症が続くと、食道の粘膜が変化した『バレット食道』という状態になり、そこからがんが発生することがある。思い当たる症状があれば、早めに医療機関を受診してほしい」と鈴木さんは呼び掛けている。
がん認定医1万人超え 12.4.28
(毎日新聞社 2012.4.28)
「がん治療認定医制度」を運営する「日本がん治療認定医機構」(今井浩三理事長)は27日、制度開始の07年度から11年度までの5年間に認定医が1万1267人に達したことを発表した。都道府県別では東京(1704人)、大阪(1016人)が多く、少ないのは高知の60人など。同機構は「人口比をほぼ反映しており、今後も同程度の比率で増えていくだろう」としている。認定医はホームページ(http://www.jbct.jp/)で公表している。
新型インフルエンザ特措法案成立 発生時、集会制限可能に 12.4.27
(毎日新聞社 2012.4.27)
新型インフルエンザ特措法案:成立 発生時、集会制限可能に
新型インフルエンザの感染防止を目的に、発生時に集会の制限などを可能にした特別措置法が27日午前の参院本会議で民主、公明などの賛成多数で可決、成立した。共産、社民は反対し、自民は2大臣問責後の審議拒否中に、法案が内閣委員会で採決されたことを理由に欠席した。内閣委では、人権が過度に制約されないよう求める付帯決議がされていた。
特措法は、危機管理法制である災害対策基本法や国民保護法がモデル。
新型などが発生し、首相が国民生活に大きな影響があると判断した場合には、緊急事態(最長3年)を宣言。都道府県知事は▽多数の人が利用する施設使用・催し物の制限の指示▽医師への医療の指示▽臨時医療施設開設のための土地等の強制使用▽医薬品や食品を確保するための保管命令――が可能になる。保管命令に業者などが従わなかった場合には、罰則を設けている。
また、知事は交通機関やNHKを含む指定公共機関に対し、緊急事態宣言の発令時に「総合調整」という権限に基づく「必要な指示」ができることになっている。
私権制限の規定があることから、日本弁護士連合会や日本ペンクラブが特措法に反対を表明。医療関係者からも効果を疑問視する声が上がっていた。
水俣病 公式確認56年迎え慰霊式 12.5.12
(毎日新聞社 2012.5.2日)
水俣病:公式確認56年迎え慰霊式
水俣病は1日、公式確認から56年を迎え、熊本県水俣市の水俣病慰霊碑前で犠牲者慰霊式(同市など主催)が営まれた。国の認定基準で水俣病と認められない被害者の救済措置の申請期限は7月末。患者団体などが「問題の幕引き」と強く反発する中、参列した細野豪志環境相は「(制度の)周知広報に努力していく」と述べ、期限を延長せずに申請呼びかけに力を入れる考えを改めて示した。
式典には患者や遺族、市民のほか、国、県、松本龍元環境相、原因企業チッソの関係者ら約750人が出席。
胎児性患者で患者・遺族代表の永本賢二さん(52)は「祈りの言葉」で、チッソから事業部門を切り離してチッソ清算への道筋を盛り込む水俣病被害者救済特別措置法を念頭に「まだまだ水俣病は終わっていない。チッソや国、県はどうするのか。患者の気持ちを分かってほしい」と述べ、補償継続への不安を訴えた。
細野氏は「水俣病問題への取り組みはこれからが正念場だ」として認定患者への補償や医療福祉の向上などに重点的に取り組む考えを強調。チッソの森田美智男社長は「補償責任をこれまでといささかも変わることなく完遂していく」と述べた。
フルオロキノロンで網膜剥離増加 12.4.6
(JAMA 2012.4.6)
眼科受診者約99万人のコホートから網膜剥離患者4384人を対象 に、経口フルオロキノロン系薬と網膜剥離発症の関連をコホート内症例対照研究で調査。網膜剥離患者群の方が、対照群と比べて、フルオロキノロン系薬現行使 用者の割合が高かった(3.3%対0.6%;調整後オッズ比4.50)。最近使用群と過去使用群では網膜剥離との関連は見られなかった。
要旨:「フルオロキノロンの現行使用が網膜剥離のリスクと関連していた」
原文(JAMA)
http://jama.ama-assn.org/content/307/13/1414.abstract
東大が不正疑惑を調査 論文取り下げ、教授は辞職 12.4.6
(共同通信社 2012.4.6)
東京大分子細胞生物学研究所の加藤茂明(かとう・しげあき)教授が発表した複数の論文に、捏造(ねつぞう)や改ざんなどの不正を疑う指摘があり、東大が専門委員会で事実関係を調べていることが5日分かった。
加藤教授は3月末、米医学誌セルに2003年に掲載された遺伝子疾患の仕組みに関する論文に、不適切なデータの処理があったとして論文を取り下げ、大学を辞職した。東大によると、辞職の理由は「一身上の都合」という。
東大には1月、この論文を含む計24本に不正の疑いがあるとの指摘が外部から寄せられた。加藤教授の辞職後も調査は継続しており、不正があると認められた場合は処分を検討する。
加藤教授は分子生物学研究の第一人者で、セルやネイチャーなど一流の科学誌に成果を多数発表。学会が科学的不正問題を討論したシンポジウムにパネリストとして参加したこともある。
メタボ健診、見直し 厚労省検討会「非肥満でも指導」 腹囲で判断、根拠薄く 12.3.29
(毎日新聞社 2012.3.29)
◇脳卒中や心筋梗塞、発症率に関係なし
メタボリックシンドロームに注目した特定健診(メタボ健診)の健診項目見直しについて、厚生労働省の検討会は28日、13年度以降の健診について、肥満ではなくても血圧などが高めの人への指導を確実に実施することを求める中間とりまとめに合意した。腹囲が必須の現行基準は科学的根拠が薄いと批判が多く、「肥満と血圧、血糖値、血中脂質を同列に扱い、肥満の有無で指導内容を変える方法もある」との提案も出された。現行制度の中で、どこまで非肥満者対策を充実できるかが新たな課題になりそうだ。
08年度に始まった特定健診は、腹部肥満が生活習慣病につながり、脳卒中や脳梗塞(こうそく)などの脳血管疾患、心筋梗塞などの心血管疾患を発症させるとの考えに基づき、肥満対策を柱に据える。
だが、肥満と脳血管・心血管疾患の関連が薄いとの報告が相次いで公表され、肥満ではなくても、血圧や血糖値などが基準を超えると脳血管・心血管疾患が増えることが明らかになっている。
昨年12月、大橋靖雄・東京大教授らがまとめた論文では、全国の男女計約2万人を約7年にわたり追跡したところ、脳血管疾患の発症に血圧や血糖値は深く関与したが、肥満の有無は関係なかった。厚生労働省研究班(研究代表者=門脇孝・東京大教授)が男女約2万8000人を約9年追跡した結果でも、血圧などが基準を超えると、腹囲と関係なく脳血管・心血管疾患の発症率が高まった。
メタボ対策は高齢者医療確保法に盛り込まれ、腹囲計測は制度の根幹をなす。検討会の中間とりまとめでは、「腹囲(計測)の是非を検討するためデータ集積を進める」との記述にとどまり、制度の抜本見直しにつながる法改正には踏み込まなかった。一方、検討会では「腹囲を他の項目と横並びにし、指導内容を工夫すれば、腹囲が突出している印象が薄まる」との提案もあり、賛同する意見が多かった。
◇受診率低迷も深刻
特定健診の受診率低迷も深刻だ。10年度の全国の受診率は43・3%と、政府が掲げる全国目標(70%)には、ほど遠い。中間とりまとめでは、慢性腎臓病の検査を追加することも盛り込んだが、「そもそも肥満ではない人は、『自分は大丈夫』と受診しようとしない」(和歌山県白浜町)など、見直しの効果は未知数だ。
特定健診では、禁煙指導が徹底されていないという課題もある。07年の日本人の死亡原因を解析した東京大などのチームの論文によると、肥満が原因の死者が約2万人に対し、喫煙は約13万人とトップだった。中間とりまとめに禁煙対策の強化も盛り込まれたが、中村正和・大阪府立健康科学センター健康生活推進部長は「そもそも肥満第1ではなく禁煙第1こそ、日本人に必要な対策」と訴える。
新型インフルエンザ等対策特別措置法案に反対する会長声明 12.3.22
政府は、2012年3月9日、新型インフルエンザ等対策特別措置法案(以下、「本法案」という。)を国会に提出した。
本法案には、検疫のための病院・宿泊施設等の強制使用(29条5項)、臨時医療施設開設のための土地の強制使用(49条2項)、特定物資の収用・保管命令 (55条2項及び3項)、医療関係者に対する医療等を行うべきことの指示(31条3項)、指定公共機関に対する総合調整に基づく措置の実施の指示(33条 1項)、多数の者が利用する施設の使用制限等の指示(45条3項)、緊急物資等の運送・配送の指示(54条3項)という強制力や強い拘束力を伴う広汎な人 権制限が定められている。
このような人権制限は、その目的達成のために必要な最小限度にとどめられなければならないことはいうまでもないが、本法案においては、その必要性の科学的根拠に疑問がある上、人権制限を適用する要件も、極めて曖昧である。
すなわち、本法案の多くの人権制限の前提となる「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」の要件は、「新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大 な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る。以下この章において同じ。)が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延に より国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態」とされ、具体的要件は政令に委任し、法 律上は抽象的な定めがなされるにとどまっている。政府の新型インフルエンザ対策行動計画(2011年9月20日)によれば、新型インフルエンザの被害想定 の上限値は、受診患者数2500万人、入院患者数200万人、死亡患者数64万人という極めて大規模なものとされ、このような被害想定が、『万が一に備え る』との考え方により安易に用いられれば、本法案の上記要件を充足するものとたやすく判断されてしまうおそれがある。そもそも、この被害想定は、1918 年(大正7年)に発生したスペインインフルエンザからの推計であるが、当時と現在の我が国の国民の健康状態、衛生状況及び医療環境の違いは歴然としてお り、こうした推計に基づく被害想定が科学的根拠を有するものといえるのか疑問である。
また、新型インフルエンザ等緊急事態宣言に当たり定められる緊急事態措置の実施期間の上限を2年(32条2項)とし、更に1年の延長が可能としている(同 条3項)ことは、その人権制限の内容に照らして、長きに過ぎる。宣言後に緊急事態措置を実施する必要がなくなったときには速やかに解除宣言をするとされて いるが(同条5項)、これらの判断を政府に委ねるのみでは全く不十分である。新型インフルエンザ等緊急事態宣言には国会の事後承認を要するものとするとと もに、期間の上限はより短いものとし、国会の事前承認を延長の要件とすべきである。
さらに、個別の人権制限規定にも、多くの問題がある。
特に、多数の者が利用する施設の使用制限等(45条)は、集会の自由(憲法21条1項)を制限し得る規定であるが、その要件は、「新型インフルエンザ等の まん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるとき」(45条2項)という抽象的かつ 曖昧なものであり、その対象も、「政令で定める多数の者が利用する施設」とされているのみで、極めて広範な施設に適用可能な規定となっている。
他方で、一時的な集会などを制限することが感染拡大の防止にどの程度効果があるのかについては十分な科学的根拠が示されておらず、効果が乏しいとの意見も あるところであり、制限の必要性にも疑問がある。そのため、感染拡大の防止という目的達成に必要な最小限度を超えて集会の自由が制限される危険性が高い。
また、指定公共機関に対する総合調整に基づく措置の実施の指示(33条1項)は、日本放送協会(NHK)が指定公共機関とされ(2条6号)、民間放送事業 者も政令により指定公共機関とされ得る(同号)ことから、これら放送事業者の報道の自由(憲法21条1項)を制限し得る規定であるが、その要件である「第 20条第1項の総合調整に基づく所要の措置が実施されない場合」にいう総合調整の内容は全く不明確であり、また、なし得る指示の内容についても、「必要な 指示をすることができる」とされ、具体的な限定は全くなされていない。表現の自由に対する規制が可能な条文としては、曖昧に過ぎるといわざるを得ない。む しろ、本法案の適用により国民の人権が広範囲に制約されることに鑑みれば、法適用の根拠及び各措置の結果等については随時全面的に情報開示を行い、専門家 らを含む第三者が広く検証できるようにすべきである。
当連合会は、去る3月2日の会長声明で、本法案に先立って公表された「新型インフルエンザ対策のための法制のたたき台」に対し、2009年に発生したA型 H1N1型インフルエンザに対し、その危険性が不明な時点で「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」上の「新型インフルエンザ等感染 症」に該当するとし、その危険性が季節性インフルエンザと同程度であることが判明した後も適用を続けられたという経緯にも鑑み、新型インフルエンザ特措法 についても、その拡大適用が懸念されることを指摘して、慎重な検討を求め、性急な立法を目指すことに反対を表明した。しかるに、本法案は、上記のとおり、 科学的根拠に疑問がある上、人権制限を適用する要件も極めて曖昧なまま、各種人権に対する過剰な制限がなされるおそれを含むものである。
よって、当連合会は、本法案に反対の意を表明する。
2012年(平成24年)3月22日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児
新型インフルエンザ等対策特別措置法案に対する緊急声明 薬害オンブズパースン会議 12.3.19
2012年3月19日、「新型インフルエンザ等対策特別措置法案に対する緊急声明」を発表しました。
法案が前提とする被害想定は著しく過大であり、個々の対策も、その必要性及び効果は乏しい一方、法案の定める措置による人権の制限や、社会生活及び経済活動に与える影響、対策に要する人的・経済的負担は大きく、法案は、新型インフルエンザ対策としてバランスを著しく欠いていると言わざるをえません。
医療現場の混乱や輸入ワクチンの大量余剰など、多くの問題を残した2009年のA型H1N1亜型インフルエンザ対策に対する十分な検証と反省がなされないまま、それをさらに拡大強化するような権限を政府に与える新法を制定することなど、断じて許されてはなりません。
よって、当会議は、新型インフルエンザ等対策特別措置法の制定に強く反対します。
緊急声明原文
http://www.yakugai.gr.jp/topics/file/singatainflkinkyuuseimei20120319.pdf
精神医療のセカンドオピニオン どんな場合に検討すべきでしょうか。 12.3.18
(毎日新聞社 2012.3.18)
◇治療の疑問、不安解消を
がんや脳卒中、急性心筋梗塞(こうそく)、糖尿病の「4疾病」に加え、「5疾病」として新たに重点的に対策に取り組むことになった精神疾患。患者数は約323万人(08年)にも上るが、治療への疑問や不満も少なくないという。専門家は「場合によっては精神科でもセカンドオピニオンを求めた方がいい」と指摘する。
◇服薬1回20錠
東京都内の女性(17)は07年春、地元の中学校に入学。人付き合いが不得意で、拒食症状が出始めるなどし、徐々に登校できなくなった。自治体の相談室の臨床心理士に教えてもらった心療内科診療所を受診。医師に勧められ、その年の7月、総合病院の精神科に入院した。
面会謝絶で1週間ぶりに娘と顔を合わせた母親(51)は驚いた。目はうつろで、看護師に脇を支えられないとふらついて歩けなくなっていた。適応障害で3カ月の入院と診断された。
しかし、3カ月たっても症状はよくならない。不安を訴えると向精神薬の量が増えた。08年の冬、1回の服薬量は8種類で計20錠に。母親は「普通じゃない」と感じ、ネットを通じてたどり着いた別の診療所の医師にセカンドオピニオンを求めた。
「薬を減らせば症状はよくなる」と助言され、娘を退院させた。医師の指導に従い、時間をかけて減らしていくと「食べたくない」「不安になる」といった症状が一つずつなくなっていった。服用していた向精神薬がゼロになったのは昨年8月。入院前の表情が戻った女性は今、高校に通っている。
◇客観的指標なく
なぜ患者は診断や処方に疑問を持つのか。日本精神神経学会の薬事委員を務める北里大精神科の宮岡等教授は「私個人の見解だが、精神科の診断では客観的な指標がなく、患者さんの話から症状を判断する。性格や環境によっても差が出やすい」と指摘。患者ごとに治療方針を変えざるを得ない部分が大きいため、一般的な治療指針を作るのが難しいという。また、国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦・診断治療開発研究室長は「診療時間が短く患者が医師を信頼せず、薬をもらうだけの関係になりやすい」と言う。
宮岡教授は、患者が主治医以外の意見を求めた方がいいいくつかのケースを紹介している。
◇初めての治療で同系統の薬剤が2種類以上処方された
向精神薬は、抗うつ薬▽気分調整薬▽抗精神病薬▽抗不安薬▽睡眠薬――などに分けられる。宮岡教授は「通常、最初から同じ系統の薬を2種類以上処方することはない」と話す。
◇精神療法しかない、薬物療法しかないなど治療方法が一つしかないかのように説明された
精神疾患の治療では、いくつかの治療法が示され、医師と相談しながら方針を決めていく。薬物療法が中心でも、職場環境の調整やストレスへの対処、家族の対応の仕方などに助言が必要なことが多いためだ。
◇夜間や休日は一切対応できないと言われた
病院など日直や当直の精神科医がいる医療機関は、電話などで対応してくれる場合が多い。院長から携帯電話の番号を伝えられ、具合が悪いときに助言してくれたり、提携の医療機関に時間外診療を依頼してくれる場合もある。
◇治療を続けている段階で「症状が悪くなった」と言うと薬がどんどん増えた
症状の悪化や薬の副作用、薬を減らしたことによる離脱症状は区別しにくい場合があり、薬を増やしたり減らしたりすることで対応すべきか、環境を調整するなど他の方法で対応した方がいいのか慎重な判断が求められる。
ただし、こうした指標に当てはまっても適切な治療がなされていることもあり、必ずしも主治医の治療方法が好ましくないということではない。宮岡教授は「すぐに主治医を代えたり自分で薬を減らしたりせず、複数の医師の意見を聞いてみてほしい」と話す。【奥山智己】
………………………………………………………………………………………………………
■北里大の宮岡等教授が指摘する主治医以外にも相談した方がいい主なケース
◇初めてかかった時
□記述式アンケートだけで診断しているようにみえる
□うつ病の症状だけ質問され「抗うつ薬を飲み休めば治る」と説明された
□薬の副作用の説明がない、または副作用なしと説明された
◇治療を続けている時
□同系統の薬剤が3種類以上処方されている
□長期間の精神療法やカウンセリングでも改善しない
□医師が説明を拒んだり、質問しにくいような雰囲気になる
[規制改革] 米国による医療保険廃止要求の懸念あり、TPP参加は反対 日医 12.3.15
(厚生政策情報センター 2012.3.15)
TPP交渉参加についての日本医師会の見解―最近の情勢を踏まえて―(3/14)《日本医師会》
日本医師会は3月14日の定例記者会見で、最近の情勢を踏まえたうえでのTPP交渉参加に対する見解を発表した。
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)とは、「協定を結んだ各国の間で貿易の自由化をはかる」協定のこと。関税の撤廃などに加えて、医療サービスについても国家間の障壁をなくす動きがあり、日医はこれまでにも「国民皆保険を守ることをはっきりと表明し、国民の医療の安全と安心を約束しない限り、TPP交渉への参加を認めることはできない」との立場を明確にしてきた。
ところで、米国側は「米国から公的医療保険廃止の要求はしない」ことを日本政府に伝えており、医療サイドによるTPP反対の動きは鎮静化すると見られていた。
しかし、この日の会見で日医は、「株式会社の(医療機関経営)参入を要求したり、中医協での薬価決定プロセスに干渉したりすることを通じて、公的医療保険制度を揺るがすことが問題である」(p6参照)と主張。さらに、米国がこれまでに「医療への市場原理導入」や「医療サービス市場の外国企業への開放」を要望してきたことや、この要望を受けた規制・制度改革の動きが日本国内に少なからずあることを示し、「公的医療保険の廃止要求」の懸念が払拭できないと断じている(p7-p8参照)。
こうした背景に鑑み、日医は「改めてTPP交渉参加に反対する」ことを強調している(p2参照)。
資料1 P1~P15(0.1M)
http://www.m3.com/tools/Document/WIC/pdf/201203_3/1737_1_1.pdf
大流行対策に重要 鳥インフル論文で河岡氏 12.3.15
(共同通信社 2012.3.15)
米政府が生物テロ悪用への懸念を示した鳥インフルエンザ論文問題で、著者の東京大医科学研究所の河岡義裕(かわおか・よしひろ)教授が14日、都内で開かれた日本学術会議の会合に出席し、「パンデミック(世界的大流行)対策を決める上で重要な情報だ」と、研究成果を公開する意義を強調した。
河岡教授は「自然界で流行中の鳥インフルエンザウイルスが(人でも)大流行を起こす可能性が分かった。生物テロに使われるかもしれないというリスクとどちらが高いかを、誰が判断するかが問題だ」と訴えた。
また「米国では、研究の内容など詳細を知らない人が議論していることが、大きな混乱を招いている」と指摘した。
河岡教授は、鳥インフルエンザウイルスが、わずかな遺伝子変異で哺乳類間でも感染する可能性を発見。米政府は論文の一部削除を求めたが、世界保健機関(WHO)は2月、論文を全文掲載すべきだとの勧告を決めた。
安楽死で初の司法判断へ 英裁判所が審理認める 12.3.13
(共同通信社 2012.3.13)
【ロンドン共同】首から下がまひした英国の男性が医師による安楽死処置を求めた訴訟について、英国の裁判所は12日、男性の申し立てに基づき審理開始を認めた。AP通信によれば、安楽死が禁止されている英国で、同問題に対する初の審理となり司法判断が注目される。
男性は2005年に病気で首から下が不自由となり、まばたきで意思の疎通をしている状態。1月、高等法院に対し「プライバシーも尊厳も失われており、このまま生き続けることはできない」として、安楽死用の注射をする医師の免責保証を求める訴訟手続きに入った。
英国では、親族などによる自殺ほう助については、司法当局が刑事訴追を見送る方針を示しているが、医師による安楽死処置は明確に禁じられている。APによると、欧州で安楽死が認められているのはベルギー、オランダ、ルクセンブルクとスイス。
一般患者も「延命治療しないで」の「事前要望書」島根大医学部付属病院 12.3.13
(読売新聞 2012.3.13)
万一の時「延命治療しないで」
島根大医学部付属病院(出雲市)は、自分にしてほしくない延命治療を、意思表示できなくなる前に患者本人が病院に文書で伝えておく「事前要望書」の提出制度を一般患者や外来患者に拡大し、12日、発表した。
事前要望書の制度は、終末期医療を行う各地の病院が取り入れているが、対象を一般患者らにまで広げたのは全国で初めてという。
延命治療をすることで、かえって患者の尊厳を傷つけてしまう場合もあることから、同病院は2008年6月、終末期患者を対象に同制度をスタート。今回、万一の場合に備えて拡大を決めた。
専用の用紙に、回復の見込みがなくなった場合、▽人工呼吸器装着▽気管切開▽胃ろうによる栄養補給▽輸血・血液製剤使用--など10項目について拒否するかどうか記入。患者本人、家族らが署名し、同病院に提出して登録しておく。
同病院で受診したことのない人も診察券の作成料(105円)を払えば要望書を作成、登録できる。登録者が別の医療機関にかかり、意思が確認できない状態になった場合も、照会があれば登録内容を知らせる。
小林祥泰院長は「尊厳をもって終末期を迎えるために元気な時から意思を表明してもらいたい」としている。問い合わせは同病院医療サービス課(0853・20・2193)へ。
新型インフル法案閣議決定 危機管理で行動制限要請 12.3.9
(共同通信社 2012.3.9)
政府は9日、毒性や感染力の強い新型インフルエンザに対する危機管理の取り組みを定めた「新型インフルエンザ対策特別措置法案」を閣議決定した。緊急事態の宣言時には、外出の自粛や休校、人の集まる施設を使わないなど住民の行動の制限を要請できるとしている。
法案によると、政府は発生した新型インフルエンザにより国民の生命、社会に深刻な被害の恐れがあるとき、期間や区域を定めて緊急事態を宣言。流行の特性に合わせて優先順位を決め、全国民に公費で予防接種をする。国民に接種を強制しないが、努力義務を課す。
病院が足りずどうしても臨時施設が必要な場合、土地や建物の所有者に同意を得られなくても強制的に使えるとした。所有者が土地の立ち入り検査を拒否したり、業者が医薬品や食品などの保管命令に反したりした場合に、罰金30万円以下などの罰則を設けた。
糖尿病の指標変更に注意を HbA1c、4月から 日本独自から国際標準へ 「医療新世紀」 12.3.6
(共同通信社 2012.3.6)
健康診断の結果を見ると「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」という項目がある。糖尿病の診断や血糖のコントロール状態の把握に使われる指標で、血液検査で得られる。その数値の表記方法を4月から変更すると日本糖尿病学会が発表した。従来、国内の医療現場では日本独自の「JDS」という値を使ってきたが、国際標準の「NGSP」を正式な値とする。両者の間には0・4ポイントの差があるため、病状の誤解など混乱も起きかねない。患者と医療側双方に注意が必要だ。
▽グローバル化
HbA1cは、赤血球の中にあって全身に酸素を運んでいるヘモグロビンの特定部位に、血液中の余分なブドウ糖が結合したもの。全ヘモグロビンに占める割合(%)で示される。
血糖値は食事や運動によって短時間に変動するが、HbA1cは過去1~2カ月の平均的な血糖値を反映する。数値が高いと慢性的な高血糖を意味するため、血糖値と並んで糖尿病の有力な指標となっている。
海外では1990年代に米国で使われ始めたNGSPが広がったが、国内では別の測定条件に基づくJDSが普及した。ただ、測定精度の違いから、JDSの方が数値が小さくなるずれが生じた。昨年、両者の間の換算式が確定。JDSに原則0・4ポイントを加えた値をNGSPとすることが決まった。
日本糖尿病学会理事長の門脇孝(かどわき・たかし)・東京大教授は「ほとんどの国がNGSPを使っている。グローバル化に対応するためNGSPにそろえることにした」と説明する。
▽0・4ポイント上乗せ
糖尿病の治療法や医薬品の研究開発は国際的な連携や競争が進む。学会は、日本だけ独自のHbA1cを使い続けると、海外からの不信や無視を招いたり、海外の情報を国内で誤って解釈したりしかねないと判断。既に論文や学会発表などの学術分野では事実上、NGSPを使ってきた。
今回はさらに、病院や診療所など日常の診療でもNGSPを基本とすることを決めた。4月1日からHbA1cによる糖尿病の診断基準は、JDSで「6・1%以上」とされていたものが「6・5%以上」に変わる。また、優、良、可(不十分、不良)、不可の区分で設定されている血糖コントロールの評価指標も、それぞれ0・4ポイント上乗せした値に変更される。
ただし実際の表記については当面、NGSPに加えてJDSも併記し、「HbA1c(NGSP)」「HbA1c(JDS)」のように、どちらの数値かを明示する。
▽混乱の種
患者や医療関係者などで構成する日本糖尿病協会理事長の清野裕(せいの・ゆたか)・関西電力病院長は「患者が自分のHbA1cが悪くなったと勘違いしたり、血糖コントロールの指標が上がることで治療目標が甘くなったと誤解したりしては困る」と話す。
医療側についても「患者の血糖コントロールが悪化したと間違えると薬の増量につながりかねない」(門脇さん)との懸念がある。
さらに混乱の種になりそうなのが、中高年を対象とした国の特定健診・特定保健指導、いわゆるメタボ健診では、来年3月31日までJDSだけが使われることだ。情報処理システムに大掛かりな変更が必要なため、今年4月の同時改定が見送られた。
学会はホームページで市民に対し「一番大切なのは、自分が見ているHbA1cがJDSかNGSPか確認すること」と訴えている。また、ポスターやパンフレットを配布して周知に努めるという。
薬局のずさんな法令遵守状況に不満と失望 12.3.7
(薬局新聞 2012.3.7)
薬局のずさんな遵守状況に不満と失望 厚労省医薬食品局・山本薬事企画官、法令順守徹底に強い意識改革求め
これほど酷い結果について、どういうことですかと尋ねたい。厚生労働省医薬食品局総務課の山本史薬事企画官は、2月18日に開催された日薬の「一般用医薬品担当者全国会議」の中で、先に公表されたいわゆる覆面調査結果に対してこのように言及し、法令順守状況がずさんだった“町の薬局”に対して強い改革意識を持つよう訴えた。同時に覆面調査に関しては来年度も予算請求する方向であることを明らかにした。
山本企画官は、第1類を購入した際の説明や第1類薬の相談への対応、名札の着用状況など、多くの項目で前回調査から悪化していることを問題視。「覆面調査があるから法令順守をするのではなく、当たり前のこととして取組んでほしい。前回調査の後も今回と同じような講演を行ったが、今回は確実な行動で示して欲しい」と現状への強い不満を提示し、さらに「30%の薬剤師会と言われないよう指導を徹底して欲しい」と団体と現場の双方に苦言を呈した。
今回の調査結果を踏まえて都道府県に対しては、昨年より厳しい内容の通知を出したことを明らかにするとともに、今年度も覆面調査の予算請求を行う計画にあることを明言。一過性の対応ではなく、薬剤師らしいOTC薬販売を確立するとともに、スイッチOTC薬が登場すること視野に入れ、「研鑽は常に行って欲しい」とコメント。最後まで薬剤師に対する期待と2回にわたる調査結果に対する失望感を滲ませた。
全国民に予防接種 13年度にワクチン確保 医薬品隠しに罰則 新型インフル法案 12.3.7
(共同通信社 2012.3.7)
政府は6日、毒性と感染力が強い新型インフルエンザへの国の対策を定めた「新型インフルエンザ対策特別措置法案」をまとめた。法律で規定する行動計画に、2013年度中のワクチン生産体制確立を掲げ、予防接種は原則、全国民を対象とした。行政は接種を奨励し、費用を負担。国民に接種の強制はしないが、努力義務を課す。
法案では、必要な医薬品や食品などを保管するよう、都道府県知事などが業者に命令できると規定。従わずに物資を隠したり運び出したりした場合は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科すとした。
既存の行動計画は法的な裏付けに乏しく、実効性を高めるには法制化が必要との声が09年の新型インフルエンザ流行後に自治体から上がっていた。近く閣議決定して今国会に提出する方針。
法案によると、世界保健機関(WHO)が新型インフルエンザの流行を確認した場合、政府は対策本部を設置。国民の健康、生活に甚大な影響を及ぼす恐れがあるときは、首相が緊急事態を宣言。期間は2年以内で区域と概要を公表する。
予防接種は全国民を対象にするが、政府が流行の特性などに応じて年齢層などの優先順位を決める。費用は国が7~8割を負担、残りを都道府県と市町村が折半する。 国民への予防接種に先立ち、医療従事者や公務員などには先行的な予防接種をする。医療関係者が業務で病気になったり死亡したりしたときは賠償する。
都道府県や市町村にも対策本部を設置する。病院が足りない場合、都道府県知事は土地や建物を借りて臨時の医療施設を設置できるが、所有者が正当な理由なく同意しないときは、強制的に使えるとした。
緊急事態では、感染拡大を抑え、社会混乱を避けるため、都道府県知事が区域を定めて住民に不要不急の外出の自粛を要請する。期間は10日~2週間を想定。学校や人が集まる施設の使用制限を要請でき、正当な理由がないのに応じないときは制限を指示できる。具体的な対象施設は政令で定めるとしている。
※新型インフルエンザ対策
毎年流行を繰り返す季節性インフルエンザとは異なる新型インフルエンザが発生した場合、人々に免疫がないため大流行する可能性がある。病原性が高いと大きな健康被害や社会の混乱が生じる恐れがあり、政府は水際対策や患者の隔離など対応の手順をまとめた新型インフルエンザ対策行動計画を策定している。だが、行動計画は法的な裏付けに乏しく、実効性を高めるには法制化が必要との声が上がっていた。
強毒性新型インフル予測時、全国民に予防接種へ 12.3.6
(読売新聞 2012.3.6)
政府は、強い毒性と感染力を持つ新型インフルエンザの国内流行が予想される場合、国民の安全確保のため、原則として全国民に予防接種を行う方針を固めた。
国内の医薬品メーカーなどと連携し、2013年度に1億3000万人分のワクチン供給体制の確立を目指す。9日の閣議で特別措置法案を決定し、今国会に提出する予定だ。
政府は、強毒性の新型インフルが流行すれば、国内で最大64万人が死亡すると推計している。
特措法案では、新型インフルの流行時に、首相が本部長を務める政府対策本部を設置すると明記。予防接種は、対策本部が「新型インフルエンザが国民の生命・健康に著しく重大な被害を与え、国民生活・経済の安定が損なわれないようにするため緊急の必要がある」と判断した場合に実施する。接種対象者や期間は対策本部がその都度検討するが、深刻な流行が予想される場合、持病が悪化する恐れがある患者などを除き、全国民への接種を想定している。
リピーター医師に戒告処分、被害者「軽すぎる」 12.3.6
(読売新聞 2012.3.6)
厚生労働省が5日、医療ミスを繰り返す、いわゆる「リピーター医師」として初めて、三重県の塩井澄夫医師(71)の戒告処分を発表したが、被害者側からは「軽すぎる」と批判の声が上がった。
塩井医師については、産婦人科医院で1998年から2001年に医療ミスを4件繰り返したとして、被害者らが免許取り消しを求めていた。厚労省は昨年9月、麻酔薬の投与ミスにより出産後の女性を死亡させたとして戒告処分にしている。今回は、残りの3件のうち、3時間にわたり妊婦を放置し死産となった事故と、必要な治療を怠り新生児が脳性まひになった事故を医療ミスとして認定。残りの1件は、「明らかな不正が確認できない」として処分の対象とはしなかった。
医師の行政処分を巡って、厚労省は02年12月、刑事罰には問われない医療ミスでも明らかな過失があれば処分する方針を示した。今回の処分はこの方針に沿ったもので、同省は「医療ミスを繰り返したことを重く見て処分を決めた。今後も厳正に対応していく」とする。
糖尿病の指標変更に注意を HbA1c、4月から 日本独自から国際標準へ 「医療新世紀」 12.3.6
(共同通信社 2012.3.6)
健康診断の結果を見ると「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」という項目がある。糖尿病の診断や血糖のコントロール状態の把握に使われる指標で、血液検査で得られる。その数値の表記方法を4月から変更すると日本糖尿病学会が発表した。従来、国内の医療現場では日本独自の「JDS」という値を使ってきたが、国際標準の「NGSP」を正式な値とする。両者の間には0・4ポイントの差があるため、病状の誤解など混乱も起きかねない。患者と医療側双方に注意が必要だ。
▽グローバル化
HbA1cは、赤血球の中にあって全身に酸素を運んでいるヘモグロビンの特定部位に、血液中の余分なブドウ糖が結合したもの。全ヘモグロビンに占める割合(%)で示される。
血糖値は食事や運動によって短時間に変動するが、HbA1cは過去1~2カ月の平均的な血糖値を反映する。数値が高いと慢性的な高血糖を意味するため、血糖値と並んで糖尿病の有力な指標となっている。
海外では1990年代に米国で使われ始めたNGSPが広がったが、国内では別の測定条件に基づくJDSが普及した。ただ、測定精度の違いから、JDSの方が数値が小さくなるずれが生じた。昨年、両者の間の換算式が確定。JDSに原則0・4ポイントを加えた値をNGSPとすることが決まった。
日本糖尿病学会理事長の門脇孝(かどわき・たかし)・東京大教授は「ほとんどの国がNGSPを使っている。グローバル化に対応するためNGSPにそろえることにした」と説明する。
▽0・4ポイント上乗せ
糖尿病の治療法や医薬品の研究開発は国際的な連携や競争が進む。学会は、日本だけ独自のHbA1cを使い続けると、海外からの不信や無視を招いたり、海外の情報を国内で誤って解釈したりしかねないと判断。既に論文や学会発表などの学術分野では事実上、NGSPを使ってきた。
今回はさらに、病院や診療所など日常の診療でもNGSPを基本とすることを決めた。4月1日からHbA1cによる糖尿病の診断基準は、JDSで「6・1%以上」とされていたものが「6・5%以上」に変わる。また、優、良、可(不十分、不良)、不可の区分で設定されている血糖コントロールの評価指標も、それぞれ0・4ポイント上乗せした値に変更される。
ただし実際の表記については当面、NGSPに加えてJDSも併記し、「HbA1c(NGSP)」「HbA1c(JDS)」のように、どちらの数値かを明示する。
▽混乱の種
患者や医療関係者などで構成する日本糖尿病協会理事長の清野裕(せいの・ゆたか)・関西電力病院長は「患者が自分のHbA1cが悪くなったと勘違いしたり、血糖コントロールの指標が上がることで治療目標が甘くなったと誤解したりしては困る」と話す。
医療側についても「患者の血糖コントロールが悪化したと間違えると薬の増量につながりかねない」(門脇さん)との懸念がある。
さらに混乱の種になりそうなのが、中高年を対象とした国の特定健診・特定保健指導、いわゆるメタボ健診では、来年3月31日までJDSだけが使われることだ。情報処理システムに大掛かりな変更が必要なため、今年4月の同時改定が見送られた。
学会はホームページで市民に対し「一番大切なのは、自分が見ているHbA1cがJDSかNGSPか確認すること」と訴えている。また、ポスターやパンフレットを配布して周知に努めるという。
日本弁護士連合会:新型インフルエンザ対策のための法制に関する会長声明 12.3.2
(日本弁護士連合会HP 2012.3.2)
内閣官房新型インフルエンザ等対策室は、本年1月、「新型インフルエンザ対策のための法制のたたき台」と題する資料(以下「たたき台」という。)を公表し、政府は今国会に「新型インフルエンザ対策特別措置法案(仮称)」(以下「新型インフルエンザ特措法」という。)の提出を予定している。
「たたき台」によれば、国は、発生した新型インフルエンザが国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあり、かつ、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるときに「新型インフルエンザ緊急事態」を宣言できるとされ、その緊急事態における措置として、集会等の制限の要請や指示を始め、土地の収用、政策金融、国民の予防接種など、国民生活や企業活動に広範な影響を及ぼす措置を実施するとされ、罰則規定にも言及されている。
しかし、これらの人権制限については慎重な配慮と十分な国民的議論が必要であり、とりわけ、集会の制限については、集会が民主主義の基礎となる市民に身近な表現活動であり、それゆえに集会の自由が憲法21条によって保障されている重要な人権であることに鑑みれば、より一層の慎重さが要求される。
また、「新型インフルエンザ」の危険性の程度や流行の可能性については、科学的にも意見が分かれているところである。衛生状態や環境の異なる海外での事例を我が国にそのまま当てはめることもできない。さらに、「たたき台」では、「新型インフルエンザと同様の影響を持つ未知の新感染症にも適用する」とされているが、「同様の影響をもつ未知の新感染症」の範囲も不明確である。 新型インフルエンザ等について、科学的な根拠が十分でないまま、予防接種が強制されたり、集会の自由を始めとする各種人権が制限される懸念を払拭できない。
新型インフルエンザについては、現行の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(1998年10月2日法律第114号)においてその対策が定められている。同法においては、「新型インフルエンザ等感染症」は「新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの」と定義され(6条7項)、「国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれ」が要件とされているが、2009年に発生したA型H1N1亜型インフルエンザ(以下「09年インフルエンザ」という。)は、その危険性がなお不明な時点で「新型インフルエンザ等感染症」に該当するものとして同法が適用され、その後、09年インフルエンザの危険性が概ね季節性インフルエンザと同程度であることが判明した後も、適用が続けられた。政府が、09年インフルエンザについて、同法6条7項の「新型インフルエンザ等感染症」と認められなくなった旨を公表したのは、2011年3月31日である。
このような09年インフルエンザの経験に照らすと、新型インフルエンザ特措法についても、その拡大適用が懸念されるところであり、仮に新たな新型インフルエンザ対策が必要であるとしても、その適用の要件及び手続、制限される人権の範囲及び程度等について、具体的内容を定めた法案に基づく十分な検討が必要であるが、今なお、政府が示しているのは極めて抽象的な「たたき台」のみであり、具体的な検討は全くなされていない。にもかかわらず、政府が3月中の法案提出を予定しているのは、あまりにも性急に過ぎる。
当連合会は、新型インフルエンザ対策のための法制が、科学的な根拠が不十分なまま、各種人権に対する過剰な制約を伴うものとならないよう政府に求めるとともに、上記問題点を十分に検討することなく性急な立法を目指すことには反対する。
2012年(平成24年)3月2日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児
被爆でがんリスク42%増加 放影研、50年余の追跡調査 12.3.1
(共同通信社 2012.3.1)
広島、長崎の被爆者のうち、30歳で1シーベルト被爆した人が70歳になった時に固形がんで死亡するリスクは、被爆していない人に比べて42%増加することが、日米共同の研究機関「放射線影響研究所」(放影研、広島市・長崎市)の研究で分かった。1日付の米放射線影響学会の学術誌に発表した。
放影研によると、1950年から2003年まで被爆者約12万人を追跡した調査に基づく研究で、個人線量が推定できる約8万7千人を解析の対象とした。約5万1千人が死亡し、このうち約1万1千人が、肺がんや胃がんなどのさまざまな固形がんで亡くなった。
研究によると、被爆時の年齢が20歳の場合、リスクは54%増加。被爆者の死亡率と被爆していない人の死亡率の比較でも、被爆者の方が固形がんで亡くなる人が1万人当たり26人多かった。
がん以外の死因では、胃潰瘍や肝硬変などの消化器疾患のほか、呼吸器疾患などの死亡リスクも被爆者の方が被爆していない人より増加したが、放射線との因果関係は明らかになっていない。
放影研疫学部(広島)の小笹晃太郎(おざさ・こうたろう)部長は「放射線とがん以外の疾患との関係や、低線量と残留放射能の影響の研究が今後の課題だ」と話している。
※学術誌はRADIATION RESEARCH
抗インフル薬3成分に改めて注意喚起--厚労省 12.3.1
(薬事ニュース 2012.3.1)
厚生労働省医薬食品局安全対策課は、インフルエンザ感染の拡大により抗インフルエンザウイルス薬の処方機会が増えることを見据え、関係企業9社に対し2月14日付けで、医療関係者への注意喚起の徹底を図るよう求める課長通知を発出した。
今回の通知は、今月に入り抗インフルエンザウイルス薬「ラニナミビルオクタン酸エステル水和物」(第一三共「イナビル」)を使用した10歳代の患者1名の転落死が報告されたことを受けての対応(因果関係等は不明)。通知が発出されたのは、「ラニナミビルオクタン酸エステル水和物」のほか、「アマンタジン塩酸塩」(ノバルティスファーマ「シンメトレル」、他6社)、「ペラミビル水和物」(塩野義製薬「ラピアクタ」)の3成分9社。
インフルエンザ集団感染、90代の女性が死亡 愛媛県内今季初 12.2.29
(毎日新聞社 2012.2.29)
県健康増進課は27日、今治保健所管内の高齢者介護施設でインフルエンザの集団感染があり、90代の女性1人が死亡した、と発表した。今シーズンのインフルエンザによる死者は県内で初めて。同課は「流行はピークを過ぎているが、体力の落ちた高齢者では重篤化の恐れが高い」として注意を呼びかけている。
同課によると、女性は23日に発症、26日にインフルエンザ肺炎で亡くなった。同施設では入所者53人全員が予防接種をしていたが、18日以降26人がA型のインフルエンザに感染した。
めちゃくちゃにされた人生(1) 抗うつ薬と衝動性 12.2.29
(読売新聞 2012.2.29 )
朝刊連載・医療ルネサンス「シリーズこころ 統合失調症」の最終回では、2012年1月に精神科病院で謎の重傷を負った33歳の男性Cさん(以後、仮名ケイジさん)を取り上げた。姉が言うように、ケイジさんの人生は「精神科医療でめちゃくちゃにされた」。より詳しく検証してみよう。
ケイジさんは「発病」時、記者になることを目指して東京の大学の社会学部に通っていた。テニスサークルに所属し、楽しい大学生活を送っていたはずだったが、3年になると1人暮らしの部屋に引きこもった。
何も食べず、ガリガリにやせて布団に横たわる状態。驚いた両親は、千葉県の実家に連れ戻した。ケイジさんは「僕、今のままでいいんだよね、今のままでいいんだよね」と何度も繰り返し、嘔吐した。引きこもりの詳しい原因は分からないが、当時もケイジさんと度々電話で話していた姉は「交友関係で悩みがあったようだ」と話す。
ケイジさんは、実家で次第に元気を取り戻した。運動をしたり、図書館に通ったり、飲食店でバイトをしたりした。まもなく通学も再開した。だが、実家から大学までは片道4時間以上かかった。この遠距離通学が再び精神的疲労につながったのか、3年の夏、家族に相談もなしに退学届けを出した。その直後から、うつ状態が顕著になった。「魂の抜け殻のようだった」と両親は振り返る。
近くの精神科病院を受診し、抗うつ薬パキシルが処方された。飲み始めて2か月、向かいの家で引越し作業をしていた見ず知らずの人を、いきなり殴りつけて軽傷を負わせた。ケイジさんは自分で通報し、警察に行った。調べを終えて実家に戻る途中、両親に「寂しかったんだ」と漏らした。
ケイジさんが飲んでいたパキシルは、衝動性を亢進する副作用が報告されている。特に、若い人に使用する場合は要注意とされる。添付文書の一部(「重要な基本的注意」の一部)を抜き出してみよう。
不安、焦燥、興奮、パニック発作、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、アカシジア/精神運動不穏、軽躁、躁病等があらわれることが報告されている。また、因果関係は明らかではないが、これらの症状・行動を来した症例において、基礎疾患の悪化又は自殺念慮、自殺企図、他害行為が報告されている。
ケイジさんの他害行為がこの副作用にあたるのかどうか、専門家でも意見が分かれるだろうが、それまでの穏和な性格から考えると、あまりにも唐突で自滅的な行動だった。
◆
統合失調症の誤診やうつ病の過剰診断、尋常ではない多剤大量投薬、セカンドオピニオンを求めると怒り出す医師、患者の突然死や自殺の多発……。様々な問題が噴出する精神医療に、社会の厳しい目が向けられている。このコラムでは、紙面で取り上げ切れなかった話題により深く切り込み、精神医療の改善の道を探る。
東京医科歯科大の助教、論文データ捏造など不正 12.2.24
(読売新聞 2012.2.24)
東京医科歯科大学は24日、同大医学部付属病院に所属する川上明夫助教(43)が書いた論文の一部データに捏造(ねつぞう)などの不正行為があったと発表した。
同大では、川上助教に対して論文の取り下げを求めるとともに、処分を検討している。
同大によると、不正が見つかったのは、川上助教が2008-10年にかけて米心臓協会誌で発表した論文3本。
このうちの1本について昨年3月10日、同大の相談窓口に、論文のデータに疑いがあるとする匿名の通報があったため、学内の調査委員会が関係者のヒアリングや実験記録の確認などを進めた。その結果、2本の論文については、川上助教と技術補佐員の実験ノートのデータが一致しなかったり、川上助教の実験ノートから確認できないデータが論文に記載されたりしていた。また、別のもう1本の論文は、実験ノートに根拠となるデータが見当たらなかった。
鳥フル致死率は過大評価 H5N1、米研究者が指摘 12.2.24
(共同通信社 2012.2.24)
【ワシントン共同】H5N1型の鳥インフルエンザウイルスが人に感染した場合の致死率は約60%と極めて高いとされているが、過大評価の可能性があるとの研究結果を、米マウントシナイ医大の研究チームが23日付の米科学誌サイエンス(電子版)に発表した。
ただ、実際の感染者数は報告を上回る可能性があるといい、チームは「ウイルスの本当の感染率や致死率を確かめるために大規模な調査が必要だ」としている。
チームは、鳥インフルエンザが小規模な流行を起こしたインドネシアを含む東南アジアで過去に実施された、住民の血清を調べた20の研究論文を精査した。
対象となった約1万2700人のうち、1~2%の血清中にH5N1型ウイルスの抗体が見つかった。この抗体を持った人たちは主に、過去に感染はしたが、症状が軽かったか、発症しなかったことを意味する。
世界保健機関(WHO)は2003年以降、今月22日現在までに、586人が発症し、うち346人が死亡したと発表しているが、無症状や症状が軽い例は患者の数に加えていない。こうした感染者を加えれば、H5N1型の致死率は今より低くなるという。
検査の混乱「隠蔽」 国立がんセンター東病院 12.2.21
(共同通信社 2012.2.21)
国立がん研究センター(東京都中央区)は20日、同センター東病院(千葉県柏市)で、がんの疑いがあるかどうかを判断する一部の検査の「基準値」が頻繁に変更される混乱があったのに、担当部署が隠蔽(いんぺい)していたと発表した。
記者会見した嘉山孝正(かやま・たかまさ)・同センター理事長は「病院内で報告されるべきことが、されていなかった。隠蔽と取られても仕方ない」と謝罪。調査を続け、関係者の処分を検討する意向を示した。健康被害は確認されていないが、患者1人が追加の検査を受けたという。
内部告発を受け、同センターが調査委員会を設置していた。嘉山理事長らによると、東病院臨床検査部では2005~09年に基準値を5回にわたり変更。複数の技師が検査内容を十分理解していなかったことが原因といい、医師らにも相談していなかった。基準値は医療機関によって異なることもあり、変更はあり得るが、東病院のケースは問題があったと調査委は判断した。
内部告発した臨床検査部元主任の黒沼俊光(くろぬま・としみつ)さん(49)=休職中=は「告発後に病院から配置転換などの不当な扱いを受けた」と主張。嘉山理事長はこの点も調べる意向を示した。黒沼さんは「がん検査用試薬の誤使用があった」などと複数の問題を告発。調査委は一部について認めたが、試薬誤使用の指摘は当たらないと結論付けた。
理解乏しい放射線治療 選択肢として認識せず? 「医療新世紀」 12.2.21
(共同通信社 2012.2.21)
がん治療経験者の半数近くが、自分のかかったがんが放射線治療の対象なのかどうか知らないことが、放射線治療機器メーカー「日本アキュレイ」(東京)の意識調査で分かった。
放射線は、手術や抗がん剤と並んでがん治療の3本柱の一つだが、国内での利用は欧米に比べて少なく、がん患者の4人に1人程度とみられている。今回の結果は多くの患者が治療の選択肢として認識していない可能性を示した。
調査は昨年8月、全国のがん治療経験者618人にインターネットを通じて質問した。
これまでに受けたことがある治療法を複数回答で尋ねると、手術の88・0%、抗がん剤の39・5%に対し放射線は19・9%にとどまり、米国の約70%、英国の約56%などに比べて格段に低いことがあらためて示された。
全体のうち放射線治療の存在を知っている595人に「自分がかかったがんに放射線治療を使えるかどうか知っているか」と聞くと、45・4%は「知らない」と答えた。
放射線の治療対象となる部位のがん患者348人に限っても「知らない」は35・3%に上り、治療の際に選択肢として検討すらされていなかったことがうかがえた。
一方、放射線治療を受けた人の83・7%は治療に満足しており、効果や体の負担の少なさ、治療日数の少なさなどを高く評価していた。
結果について土器屋卓志(どきや・たくし)・埼玉医大客員教授は「放射線治療自体の認知は進んでいるが、特徴やメリットなど具体的な内容まで理解が進んでいない。高精度な放射線治療を浸透させ、患者さんの選択肢を広げることが大事」と分析している。
4割に診療記録の記載漏れ …産科医療補償制度 12.2.21
(読売新聞 2012.2.21)
出産事故で脳性まひとなった子どもに総額3000万円を補償し、原因分析や再発防止策の検討を行う「産科医療補償制度」で、補償対象事例を検証したところ、カルテなど診療記録に記載漏れのあるものが4割に上ることが20日わかった。原因分析などに支障が出ることから、制度を運営する日本医療機能評価機構は全国の医療関係者に記載徹底を提言することにした。
同機構によると、これまでに原因分析がまとまり、結果を公表した79件のうち、カルテなどに記録すべき事項が漏れている事例が31件あった。具体的には、胎児の心拍に異常が現れた時の医師の評価や、吸引分娩など様々な処置を行った際の記録や所見といった重要な診療記録がないものがあり、記載不足で事実関係の確認ができず、原因分析が困難になったものもあった。
受診遅れで67人死亡 困窮で「無保険」など 12.2.21
(共同通信社 2012.2.21)
全日本民主医療機関連合会(民医連)は20日、経済的事情で国民健康保険料を滞納して「無保険」状態になるなどの理由で受診が遅れ、死亡した人が2011年、22都道府県の加盟病院・診療所で67人いたと発表した。
調査は6回目で、最多の71人だった10年に次ぐ人数。民医連は「調査対象が限定されているので全体から見れば氷山の一角。早急な対策が求められる」としている。
11年は計663施設を対象に調査。受診遅れで死亡した67人のうち無保険は25人、滞納で有効期間が短くなる「短期保険証」が10人、さらに滞納が続き保険証を返して医療費全額をいったん払わなければならない「資格証明書」が7人いた。残る25人は、保険証はあっても医療費が払えなかったりした人。死因の半数余りはがんだった。
67人の約7割は50~60代の中高年男性。職業別では無職が32人、非正規労働者が14人いた。
都道府県別では福岡の11人が最多で、東京、山梨が各6人、北海道、埼玉、長野が各5人と続いた。
鳥インフル論文は全文掲載 管理懸念払拭が前提 WHO、国際会議で勧告 12.2.20
(共同通信社 2012.2.20)
【ジュネーブ、ワシントン共同】米政府が生物テロへの懸念を理由に日欧の科学者による鳥インフルエンザ研究論文の一部削除を求めた問題で、世界保健機関(WHO)は17日、ジュネーブで開かれた国際会議で、論文を全文掲載すべきだとの勧告を全会一致で決めた。ただし、ウイルス管理への懸念の払拭(ふっしょく)や統一的な安全基準ができるまでは当面公表を見合わせ、研究自粛も続けるべきだとしている。
WHOは管理強化について早急に各加盟国に伝える見通し。また、研究とテロ対策の兼ね合いについて話し合うため、加盟国代表なども含めた国際会議を6月にも開く予定。
論文の掲載を見合わせていた米科学誌サイエンスと英科学誌ネイチャーは同日、勧告に従い論文を全文掲載する考えを示したが、実際に論文を掲載する時期は、安全基準などの問題が解決された後になるとみられる。
論文を科学誌に投稿した東京大医科学研究所の河岡義裕教授は会議後、「妥当な結論だ」と評価した。河岡教授を含む世界のウイルス研究者が自主的に行っている研究停止については「管理体制の確立など条件が整えば研究を再開する」と述べた。
河岡教授は「問題になっている研究結果の意義は、強毒のH5N1型鳥インフルエンザウイルスで世界的大流行(パンデミック)が起こり得ることが示されたということだ」と強調。会議では論文の一部を削除すれば研究の進行が阻害されるとの意見が相次いだ。
米政府は2001年の中枢同時テロ直後に国内で起きた炭疽(たんそ)菌事件を背景に、生物テロ対策を重視し、論文の一部削除を求めていた。しかし今後は、勧告を再検討することになるという。
会議は16日から2日間の日程で行われた。
[医療安全情報] 院内で画像診断報告書確認体制を設け、治療遅れ防止を 12.2.17
(厚生政策情報センター 2012.2.17)
医療事故情報収集等事業 医療安全情報No.63(2/15)《日本医療機能評価機構》
日本医療機能評価機構は2月15日に、医療安全情報No.63を公表した。今回は、「画像診断報告書の確認不足」により治療の遅れなどが生じた可能性のある事例が報告されている。
2008年1月~2011年12月にかけて、画像診断確認の不足によって、(1)肺腺癌の疑い(カテーテル・アブレーション目的の画像精査時)(2)原発性肺腫瘍の疑い(人工血管置換術後のフォローアップ時)(3)肺癌の疑い(内腸骨動脈瘤のフォローアップ時)―という3件について、「治療遅れの可能性」があったという(p1参照)。
このうち、(2)は、「弓部大動脈瘤人工血管置換術の後、外来でフォローアップのためにCT検査を行ったが、画像診断報告書にあった『原発性肺腫瘍が疑われる』とのコメントを見落とした」というもの。約1年後の検査で原発性肺癌と診断されており、治療の遅れが生じていた可能性がある(p2参照)。
当該医療機関では、放射線科専門医に対し、「主目的以外の重大な所見を発見した場合には、担当医に注意喚起する」よう求めるなどの対策をとっているという。
医療機能評価機構の総合評価部会では、「入院(特に退院直前)、外来を問わず、画像診断報告書が確認できる仕組みを医療機関内で構築する」よう提言している(p2参照)。
資料1 P1~P3(0.2M)
http://www.m3.com/tools/Document/WIC/pdf/201202_4/1718_3_1.pdf
分子標的薬、思わぬ副作用—新たながん誘発も 12.2.17
(日経産業新聞 2012/02/17から抜粋)
がんの治療では抗体医薬と並び、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの「分子標的薬」だが、予想外の副作用が現れた。患者によっては新たながんの発生を誘導してしまうのだ。
分子標的薬の特徴は優れたがん抑制効果だけでない。
いつしか分子標的薬は重篤な副作用はないという神話が形作られていった。
こうした安全神話を揺るがせたのが、昨年8月に米ジェネンテック社が米国で販売認可を獲得した「ゼルボラフ」(一般名ベムラフェニブ)だ。
世界で初めて悪性黒色腫の患者の寿命延長を示した特効薬である。
実は臨床試験(治験)でゼルボラフを投薬した患者のうち、約25%で皮膚に新たな扁平(へんぺい)上皮がんが発生した。
明確となったのは、がんの分子標的薬の作用は従来から信じられていたより複雑であるということだ。今まではピンポイントに効果があると考えてきたが、分子標的薬は実際にはがんの増殖をつかさどる刺激伝達システム全体に影響を与える。
神話が崩れた今、分子標的薬は刺激伝達システム全体の制御薬として、見直しが迫られている。
「時代遅れ」新知見に対応 社会全体の流行拡大防止 12.2.17
(共同通信社 2012年2月17日)
学校保健安全法の施行規則(省令)は1958年に定められた。この規則に含まれる現行の季節性インフルエンザの出席停止基準も相当古いとみられ、専門家の間で「時代遅れ」との指摘があった。
2000年代に入ってタミフルやリレンザなどの治療薬が普及し、ウイルスの排出は続いていても熱だけは早期に下げられるようになった一方、感染者は発症直前から発症後3~7日ほどの間はウイルスを排出するとの新知見が出され、解熱後2日の出席停止では足りないケースがあることが問題視されてきた。
長時間、集団で生活をする学校でまん延すれば、ウイルスが家庭に持ち込まれ感染をさらに拡大する危険性も増す。感染症の専門家は「学校での拡大防止策は、社会全体での流行を抑えるために一番重要だ」と強調している。
インフル論文検閲に波紋 大流行とテロどちら優先 「大型サイド」 12.2.17
(共同通信社 2012年2月17日)
「ウイルスのつくり方の成果は公表すべきではない」。米政府の科学諮問委員会が鳥インフルエンザ研究に出した"検閲"ともとれる勧告について、一線の研究者らがジュネーブに集まり、世界保健機関(WHO)の会議で議論を始めた。大流行に備えたウイルス対策と、生物テロ防止のバランスをどう取るのか。研究の在り方をめぐり波紋が広がっている。
▽高い感染力
「科学誌に検閲を要請」「論文の部分削除を勧告」。米メディアは昨年12月、河岡義裕(かわおか・よしひろ)・東京大医科学研究所教授らとオランダの2チームが米サイエンス誌や英ネイチャー誌に投稿した研究論文に対して、諮問委が一部削除などを求めたことを大きく報じた。
諮問委は、2001年の炭疽(たんそ)菌テロを機につくられた専門家組織。基礎研究の内容に踏み込む勧告は初めてだ。
2チームは、新型インフルエンザへの変異が懸念されているH5N1型の鳥インフルエンザウイルスについて、どの遺伝子が変異すれば哺乳類で感染しやすくなるかを発見。中でもオランダのチームが遺伝子操作でつくったウイルスは、毒性が強いまま、高い感染力を獲得した。
▽大統領選
H5N1型ウイルスは1997年以降、アジアを中心に感染者が発生。ここ10年に発症した600人近くのうち6割が死亡した。ほとんどは鳥から人への感染で、人同士の感染は非常にまれなため、研究者の中には「ヒト型にならない」「ヒト型になると毒性が弱まる」との見方もあった。
しかし今回の成果で、楽観的な見方は否定された。国立感染症研究所(東京)の田代真人(たしろ・まさと)センター長は「将来の新型インフルエンザに備え、流行を回避するための努力を迫るものだ」と指摘。ワクチンや治療薬が妥当かどうかを調べるためにも必要な研究と強調する。
一方で、テロに悪用される恐怖も広がる。WHO関係者は「人間の手でパンデミック(世界的大流行)ウイルスをつくれることを示した。米政府に与えたインパクトは大きい」と解説。諮問委の委員のマイケル・オスターホーム米ミネソタ大教授は「ウイルスの悪用や、漏出を防ぐことが最優先課題だ」と言い切る。
米政府の強硬な対応に、大統領選が影響している可能性を指摘する声も。共和党内からは研究を禁止する法案を提出する動きもあったという。
▽研究停止
河岡教授は「自然界のウイルスが人への感染力を獲得しつつある。研究者が成果を共有し、対策を検討すべきだ」と反論。河岡教授を含む世界のウイルス研究者39人が、外部に漏れない厳重な措置を取っていることを説明するため、自主的に60日間の研究停止を決めるなど、研究者の危機感は強い。
遺伝子操作技術をめぐっては、70年代も安全性や悪用への懸念が広がったため、科学者が自主的に集まり、研究指針を設けた歴史がある。
科学の倫理問題に詳しい池内了(いけうち・さとる)・総合研究大学院大理事は「研究をやめることは許されないが、科学者には社会の不安に対する説明責任がある。悪用を許さずに研究を進める枠組みをつくるべきだ」と話している。(ワシントン、東京共同)
インフル対策に悪影響 WHO、米の対応を懸念 研究論文の削除勧告 12.2.16
【共同通信社 2012年2月16日)
【ワシントン共同】生物テロへの懸念から、米政府が日欧の科学者によるインフルエンザ研究論文の一部削除を勧告した問題で、世界保健機関(WHO)が、勧告は新型インフルエンザに対する国際的な協力態勢に悪影響を及ぼすと、懸念を表明していることが15日、分かった。
勧告などについて話し合う16日からのジュネーブの国際会議でも取り上げられる見込み。
国際的な取り決めでは、ワクチン製造のため発展途上国がウイルス株を提供する一方、先進国の研究成果は共有するとしており、論文の一部削除や、閲覧できる人の制限を求めた米政府の対応は取り決めに反する恐れがある。
途上国の反発を招けば、流行への備えに支障が出かねず、WHOは「長年の交渉の末、合意したばかりの協力態勢が弱体化されてはならない」と訴えている。
致死率が高く、世界的流行が懸念されるH5N1型の鳥インフルエンザは、アジアの途上国を中心に発生。研究機関や製薬会社は発生国からウイルス株を入手、ワクチン開発を進めている。
しかし途上国から「ウイルス株を提供しても、ワクチンが高額で手が届かない」と不満が高まったことから、2011年のWHO総会で協力態勢を決議。途上国はウイルス株の見返りに、ワクチンの一部を優先的に提供され、インフルエンザの研究成果も広く共有することになった。
この協力態勢は、生物が持つ有用な遺伝情報を資源とみて利益の配分ルールを定めた「名古屋議定書」にのっとり、ウイルスも遺伝資源ととらえて構築された。
「医療事故調」の議論再開 3年ぶり、厚労省が検討会 12.2.15
(共同通信社 2012年2月15日)
医療事故の原因究明や再発防止の仕組みに関する厚生労働省の検討部会が15日、初会合を開き、「医療版事故調査委員会」をめぐる議論が約3年ぶりに再開した。
検討部会のメンバーは弁護士や医師、医療事故被害者の遺族ら16人。事故原因を調べる組織の位置付けや目的、対象範囲を話し合い、警察の捜査との関係も議題とする。
厚労省は自公政権下の2008年6月、第三者機関を設置する法案の大綱案をまとめたが、医療界の抵抗や政権交代の影響で宙に浮いていた。
会合では、厚労省の大綱案のほか、当時野党だった民主党が出した対案や、学会などの意見も踏まえ、新たな制度を話し合うことで合意した。
厚労省は昨年8月、過失の有無にかかわらず医療事故被害者を救済する「無過失補償制度」の創設を目指し検討会を設置。議論の中で「まず事故原因の調査の在り方を話し合う必要がある」として部会を設置した。
15年にも個人カード配布 共通番号制 12.2.15
(共同通信社 2012年2月15日)
政府は14日、国民一人一人に番号を割り振って納税実績や年金などの情報を管理する共通番号制度を導入する「個人識別番号法案」を国会に提出した。導入されれば、市町村が2014年10月ごろに住民に番号を通知し、15年1月からカードを配布する予定だ。
ただ「ねじれ国会」の中、自民党や公明党は衆院解散・総選挙を求めて対決姿勢を強めており、法案成立の見通しは立っていない。
カードは従来の住基カードを改良して安全性を高めたICカードとし、顔写真や氏名、住所、生年月日、番号を明記する方向だ。
政府は、上場株式の配当金や譲渡益を含む個人所得の情報を把握することで、適切な徴税と所得に応じた社会保障給付の実現を図る。国民には、年金を受給する際の手続きが簡略化できるなどの利点がある。
法人には国税庁が番号を通知する。納税時の提出書類に番号を記載してもらうことで、雇用保険料の支払い漏れなどを防ぎたい考えだ。
政府は、災害時に特例として医療機関が番号を使って被災者の投薬情報や持病を確認して効果的な支援につなげることも想定。厚生労働省が医療情報の取り扱いを定める別の法案をつくり、13年の通常国会に提出する見通しだ。
国民に「マイナンバー」 納税、年金を管理 共通番号法案を閣議決定 情報漏えいに罰則 12.2.14
(共同通信社 2012年2月14日)
政府は14日、国民一人一人に番号を割り振って納税実績や年金などの情報を管理する共通番号制度を導入する「個人識別番号法案」を閣議決定した。番号に「マイナンバー」という名前を付け、2015年1月の利用開始を想定している。個人情報の保護に向け、行政組織などを監視する第三者機関の設置や情報漏えいに対する罰則を盛り込んだ。
政府は社会保障と税の一体改革に関連し、共通番号制を消費税増税に伴う低所得者対策に活用することも検討。番号制を使い、所得をより正確に把握することで、低所得者に所得税を払い戻したり、給付金を支給したりする「給付付き税額控除」の導入につなげたい考えだ。
古川元久経済財政担当相は14日の閣議後の記者会見で「社会保障の仕組みを大きく変え、真に必要な社会保障給付を行うためのインフラだ」と意義を強調。情報漏えいへの懸念には「法案化でより具体的な説明もできるので、国民のさまざまな不安の解消につながっていくと思う」と述べた。
番号制は、所得や社会保障の受給実態を把握し、個人や世帯の状況に応じた社会保障給付を実現することが目的。年金の受給手続きの簡略化や、災害時の金融機関による被災者への保険金支払いなどにも活用できるようにする。
個人情報の漏えいを防ぐため、法案では第三者機関に国や自治体などへの立ち入り検査を認めるなどの強い権限を与えた。情報漏えいに関わった行政職員らに最高で4年以下の懲役、または200万円以下の罰金を科すとした。
ただ、内閣府が実施した世論調査では、8割以上が制度の内容を「知らない」と答え、周知の低さが浮き彫りになっている。
※共通番号制度
国民一人一人に番号を割り振り、納税実績や年金などの情報を政府が一体的に管理できるようにする仕組み。社会保障の負担と給付の公平性を保つため、正確な情報を把握するのが狙い。スウェーデンや米国に似た仕組みがあり、日本でも自民党政権時代から導入を検討してきた。民主党政権は、年金保険料と税金を一体的に徴収する「歳入庁」の創設も視野に入れている。
養子関係の腎臓移植5例、問題なかったと学会 12.2.15
(読売新聞 2012年 2月15日)
生体腎移植をめぐる臓器売買事件を受け、日本移植学会(高原史郎理事長)は14日、過去5年間に腎臓移植を行った全施設を対象にした実態調査の結果を公表した。
臓器売買事件で問題になった養子関係にある親子での移植が新たに5例見つかったが、臓器移植法や学会の倫理指針には抵触しなかった。
調査は、腎移植の経験のある全国221施設のうち回答のあった140施設で実施された生体腎移植4698例、心停止後の献腎移植809例の計5507例を分析。5年間に全国で移植された件数の約9割を占める。養子縁組以外にも、結婚1年以内の配偶者間移植(8例)、年齢差20歳以上の配偶者間移植(4例)、非血縁者間移植(11例)などがあったが、いずれも問題なかったという。
予告★★講座★★「抗生物質」の基礎知識 ~知っておきたい命に関わる薬の害作用~ 2012年2月25日
<「泣かない患者学」を学ぶ/シリーズ33>
「念のため…」と気軽に処方されている抗生物質、医師任せから自分で情報を把握し健康を守りましょう。
小さなお子さんから高齢者まで幅広い年齢層で、またさまざまな症状に気軽に処方されている薬に「抗生物質」があります。
治療といえばその大半が”薬”です。処方されたその薬が、「抗生物質」だと分からないで私たちは服用していることもよくあります。
「抗生物質」って名前はよく耳にするけど、一体どんなときに使われているのでしょうか。「抗生物質」甘く見ると取り返しのつかない結果にもなりかねません。
害作用を避け、耐性菌との闘いを終わらせ、感染症予防を目指しましょう。
これからは医師任せではなく、薬の基礎知識を得て患者本人や親御さん自身がいのちや健康を守る時代です。
■講師/小沢木理(薬害オンブズパースンOB)
□日時: 2/25(土)2012年
13:30〜15:30 pm
□場所: 国際交流センター(パスポートセンター)2F小会議室
TEL055-228-5419
□参加費: 500円(資料代含む)
□申込〆切: 2月20日
(〆切後は直接下記に問合せを)
主催:患者なっとくの会INCA (インカ) 連絡先050−1280−6728
8割が「内容知らない」 共通番号制、周知進まず 一体改革議論に影響 個人情報漏えい懸念も 12.1.31
(共同通信社 2012年1月30日)
国民一人一人に番号を割り振って納税実績や医療などの情報を一元的に管理する「共通番号制度」について、政府が実施した世論調査で、8割以上が制度の内容を「知らない」と答えたことが28日、分かった。政府は2015年1月からの利用開始を目指し、ことし2月に法案を国会に提出する方針だが、国民に周知されていないことが浮き彫りになった。
番号制は、消費税増税時に所得の少ない人の負担軽減策を導入する際に必要とされる。政府は社会保障と税の一体改革とセットで番号制の導入を検討しており、周知の低さが一体改革論議に影響を与える可能性がある。個人情報漏えいの恐れも指摘されている。
調査では、制度について「内容は知らないが、言葉は聞いたことがある」が41・8%、「知らない」が41・5%で、計83・3%が内容を知らなかった。「内容まで知っている」と回答した人は16・7%だった。
内容を知っているかどうかにかかわらず、個人情報に関して最も不安に思うことを聞いたところ、40・5%が個人情報漏えいによるプライバシー侵害、32・2%が番号や個人情報の不正使用による被害を挙げた。
制度の必要性については「必要だと思う」との回答が57・4%、「必要だと思わない」が27・3%だった。制度の内容を知っていると答えた人の75・3%が「必要」と回答したことから、政府関係者は「全国で開くシンポジウムなどを通じ、丁寧に説明したい」としている。
調査は11年11月に全国の成人男女3千人を対象に実施。有効回答率は63・0%だった。
※共通番号制度
国民一人一人に番号を付与し、納税実績、年金、医療などの情報を政府が一元的に管理する仕組み。社会保障の負担と給付の公平性を保つため、正確な情報を把握するのが狙い。スウェーデンや米国などに似た仕組みがあり、日本でも自民党政権時代から導入を検討。民主党政権は、年金保険料と税金を一体的に徴収する「歳入庁」の創設も視野に入れている。
タミフル、効果に疑問…国際研究グループ報告書 12.1.18
(読売新聞 2012年1月18日)
医学研究の信頼性を検証する国際研究グループ「コクラン共同計画」(本部・英国)は17日、インフルエンザ治療薬タミフルが重症化を防ぐ効果を疑問視する報告書を発表した。
タミフルは世界で広く使われ、特に日本は世界の約7割を消費している。
各国が将来の新型インフルエンザの大流行を防ぐため備蓄を進めており、その有効性を巡り議論を呼びそうだ。
報告書は、製薬会社に有利な結果に偏る傾向がある学術論文ではなく、日米欧の規制当局が公開した臨床試験結果など1万6000ページの資料を分析。タミフルの使用で、インフルエンザの症状が21時間ほど早く収まる効果は確認されたものの、合併症や入院を防ぐというデータは見つからなかった。
報告書は「当初の症状を軽減する以外、タミフルの効果は依然として不明確」と結論、「副作用も過小報告されている可能性がある」と指摘した。
体外受精培養液に化学物質 妊婦血液の最大100倍 厚労省研究班調査 12.1.4
(共同通信社 2012年1月4日)
プラスチックを加工しやすくする化学物質「フタル酸エステル類」が人の体外受精で必要となる培養液に高い濃度で含まれていることが、厚生労働省研究班の調査で28日までに分かった。
妊婦の血液から検出される濃度の最大で約100倍に相当する。動物の胎児の生殖機能に影響を与える濃度の千分の1ほどだが、マウスの細胞の遺伝子には異常が起きるレベルで、受精卵や胎児への影響が懸念される。
日本では体外受精で毎年2万人以上の赤ちゃんが生まれており、主任研究者で有隣厚生会東部病院(静岡県御殿場市)の牧野恒久(まきの・つねひさ)院長は「生命発生の重要な時期にこのような培養液を使って大丈夫なのか、詳しく調べる必要がある」と説明、培養液に高濃度の化学物質が含まれるとの研究結果は世界初という。
フタル酸エステル類は身近な工業製品に幅広く使われ、人の血液や尿からも検出されている。空気や食品などを通じて取り込んでいるらしい。培養液は人の血清などを含んでおり、それを通じて混入したとみられる。
研究班が調べたのは、精子を選別したり、受精卵を数日間育てたりするための培養液24製品と、培養液に栄養源として添加する人の血清6製品。国内の臨床現場で使われているほとんどの製品を分析対象にしたという。
培養液からは、フタル酸エステル類のDEHPが1ミリリットル当たり約10~110ナノグラム(ナノは10億分の1)、DEHPが体内で代謝されてできるMEHPは約2~250ナノグラム検出された。いずれも、人の血清が含まれる製品で濃度が高い傾向にあった。一方、妊婦の血液からはDEHPは約10ナノグラム、MEHPは約2ナノグラム検出された。
培養液への添加用の血清では、DEHPが最大約980ナノグラム、MEHPが1840ナノグラムとさらに高濃度で、海外などで提供された血液が汚染されていた可能性があるという。
※フタル酸エステル類
プラスチックを軟らかくしたり、加工しやすくしたりするための可塑剤として、樹脂や塗料、化粧品などに幅広く使われている。子どもが口にすると成分が溶け出す恐れがあり、健康に有害だとして、欧米ではフタル酸エステル類を使ったおもちゃを使用禁止にした。日本でも2002年、一部の種類でおもちゃや食品用のラップ、手袋などへの使用禁止を決めた。内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)の疑いも指摘されているが、結論は出ていない。
タミフル:副作用、専門家が分析 重篤化誘因の恐れ11.12.30
(毎日新聞社 2011年12月30日)
インフルエンザ治療薬のタミフルが、患者25万人に1人程度の割合で、服用後12時間以内に重い呼吸困難など容体の重篤化を引き起こしている可能性があるとの分析結果を、NPO法人・医薬ビジランスセンター(大阪市天王寺区)理事長の浜六郎医師らがまとめ、オランダの医学専門誌「薬のリスクと安全の国際誌」に発表した。
浜医師らは厚生労働省の公表データに基づき、09年発生の新型インフルエンザで死亡した患者のうち、医師にかかった時点では重篤でなかった161人について分析した。
タミフルを投与された患者は119人で、うち38人が12時間以内に重篤な状態に陥るか死亡した。別のインフルエンザ治療薬のリレンザを投与された患者は15人で、12時間以内に重篤化や死亡した人はいなかった。
浜医師らは一方、製薬各社が同省に報告したデータなどから、同時期のタミフル使用者を約1000万人、リレンザ使用者を約700万人と推定。年齢などを考慮して統計的に分析すると、タミフル使用者はリレンザ使用者より死亡率が約1・9倍高く、使用後12時間以内に重篤化か死亡する率は約5・9倍との結果が出たという。
厚労省医薬食品局安全対策課は「慎重に確認したい」と説明。タミフル輸入販売元の中外製薬は「精査している途中だ」と話している。